デジタルトランスフォーメーション

デジタルトランスフォーメーションの本質とは?

DXとは「デジタルに置き換える」ではダメ

NTT東日本:Digital X 北斎より

先日NTT東日本株式会社が主催している「Digital × 北斎展」に行ってきました。本当に素晴らしい展示であると同時に、DXの本質を考える上では非常に示唆に富んだ展示会でもありました。

上の動画、ちょっと伝わりにくいかもしれませんが、葛飾北斎の富嶽三十六景の有名な一枚、神奈川沖浪裏を20億画素もの高精細でデジタル化し、3Dでの体験ができる展示の撮影です。

神奈川沖浪裏は富嶽三十六景でおそらくもっとも有名な一枚です。静止画でも手前から奥までの波のレイヤー感が良くわかります。そしてその波のレイヤーを3Dで表現し、あたかも自分が神奈川沖浪裏の船の上にいるかのような錯覚に陥るこの展示、本当に素晴らしいものでした。

デジタルコピーは劣化版じゃない

こちらの浮世絵、実はデジタルコピーを自分のiPhoneで撮影したものです。紙の質感なんかもよーく見るとわかると思います。

じつは今回の展示されていた浮世絵、単純に20億画素のスキャニングではありません。3Dで浮世絵の原板を取り込み、オリジナルにしか存在しない微妙な凹凸や陰影なども含めてデジタルマスターが作られているんです。実は浮世絵というのは(当然ではあるのだけれど)紫外線や二酸化炭素に非常に弱い絵画になります。したがって明るい光を当てることも近づいてみることも本来できません。つまり「オリジナルをみる」のは遠く離れたガラスの箱に入ったものを見ること以外は原則できないのです。

ところがこのデジタルコピーは違います。触ることすらできるんです。目に見える和紙の凹凸はあくまで印刷の結果そう見えるだけで、実際はつるつるしています。

これも富嶽三十六景の一枚ですが、奥に見える富士山のグラデーションが素晴らしいですよね。でもこれも遠くから見ていたのではここまでの透明感や藍色の質感も分からないはずです。

つまりこのDigital×北斎展、デジタルマスターという「オリジナルからのコピー」を使いながら、視聴体験としては「完全にオリジナルを超えている」ということになっているんです。

デジタルトランスフォーメーションの本質とは?

この「デジタル×北斎」で我々が考えるべきこととは、デジタルトランスフォーメーションは既存のビジネスを単純にデジタルに置き換えることではない、ということではないでしょうか?

絵画は本物を見てナンボ、という気持ちは非常によくわかりますし、それ自体は否定をするつもりもありません。ただそれは「デジタル化の否定」する言い訳にはできないということです。

「うちのビジネスはface to faceが大事だからデジタル化は無理」「弊社の価値は直接顔を合わせることでしか発揮できない」というのは、つまりいいわけです。アートという感性の世界ですら、デジタル技術を取り込むことで新しい顧客体験を実現し、ファンを増やすことを可能にしている現実の前に、ビジネスのデジタル化ができない、というのは現実から目を背けているだけ、と考えるべきでしょう。

今回の展示で解説をしてくれていた方は「和紙の質感や絵師、彫師、摺師の技術を分かってもらうために3Dでのスキャニングと20億画素での取り込み、そして展示の方法を考えた」とおっしゃっていました。もし「浮世絵」をよく知らない素人が取り組んだとしたら、結果はどうなっていたでしょう?せいぜいが高精細のスキャンで終わっていた話ですし、今回のような圧倒的な顧客体験などは実現しなかったでしょう。

つまり「デジタル化が難しい」というのは言い換えれば「現状のビジネスに対する理解が足りてない」のです。今回でいえば「浮世絵」というデジタル化する対象についての深い知識と理解があればこそ、デジタルならではの顧客体験を実現する「デジタルトランスフォーメーション」を達成できたのです。

そしてもし今回の「デジタル×北斎」が「既存のビジネスをデジタルで置き換える」というDXだったとしたら、おそらく展示方法も高精細にスキャンしたデジタルマスターの印刷を壁に貼るだけで終わっていたはずです。「デジタルならではの見せ方は何か?」という探求がなければ、デジタルトランスフォーメーションで実現するはずの「デジタルならではの顧客体験」はやはり存在しえないのです。

この「デジタル×北斎展」は東京都渋谷区初台のオペラシティ内にあるICCにて開催中です。是非行ってみて「アートのDX」を体感されてみてはいかがでしょうか?以下のリンクからご予約の上、密を避けてどうぞ。

Digital × 北斎【破章】 北斎VS廣重 美と技術の継承と革新 | NTT東日本

2 thoughts on “デジタルトランスフォーメーションの本質とは?

  1. 開発、制作、展示企画を行なったアルステクネの久保田と申します。本質を捉えて下さった素晴らしい記事をありがとうございます。記事に感動いたしました。

    1. 久保田様、コメントいただきありがとうございました!「デジタルx北斎」本当に素晴らしかったです!オルセーのセザンヌやゴッホも素晴らしかったですし、絵画を見て感動する理由を納得できる展示会でした。

久保田 巖 へ返信する コメントをキャンセル

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