自動最適化時代における「アート」の大切さ

自動最適化時代だからこそクリエイティブが大切である理由

目次

改めてクリエイティブの重要性を考える

改めて言うまでもないことではありますが、運用型広告においてクリエイティブは非常に重要な要素です。生活者に対してアプローチをする最初の接点である「広告のインプレッション」から始まり、興味を持たれて「クリック」させ、LPとの関連性次第では「CV」まで影響を与える、運用型広告の成果を出す上で重要な複数の変数が「クリエイティブ」には内包されています。

これは運用型広告の黎明期から「ABテスト」という言葉が「複数本のクリエイティブを同時並行で掲載して、結果の優劣を判断する」という意味で使われていたことからも、今になって重要になった、というものではなく、そもそも運用型広告における非常に重要なピースであった、ともいえるでしょう。(まあLPのABテストも昔からありましたけどね)

それがここ数年「媒体の自動最適化」が洗練され、活用が進んでいる状況の中で「良いクリエイティブ」が「媒体から評価されているもの」という言葉に置き換わっているようにも思います。もちろん最適化の結果、最も効果改善が期待されるクリエイティブに配信が偏ることは一般論として間違いではありませんが、ただ、それだけで「運用」が終わるわけではありません。むしろそこから先が広告代理店としての差別化、そしてクライアントの効果改善につながっていく重要なポイントである、と言ったほうが良いでしょう。

クリエイティブが良かった理由を考える力=広告代理店の付加価値

ある種の極論であり暴論でもありますが、配信の結果を見て「クリエイティブAが媒体評価が高く、最も多く配信されました」というのは分析でも考察でもありません。それはあくまで結果の報告でしかありません。もっと言えば配信の結果を見て「クリエイティブAが最もインプレッションされているので媒体の評価が良く、これがいいクリエイティブです」というのでは「広告代理店」としての付加価値につながらないのです。

媒体の評価が重要な変数であることは否定しません。しかしながら、そこを深堀したうえで「なぜよかったのか」を考察し、仮説を作るプロセスが抜け落ちてしまうとどうなるのでしょうか?

広告運用は原則としてはチームプレーになります。広告代理店の中でも数値解釈からの報告業務を中心とする「コンサル」もいれば、クライアントとの定常的なコミュニケーションを担う「フロント」、そして実際にバナー作成などを担う「クリエイティブ(デザイン)」を担当する人もいるでしょう。

配信されたクリエイティブにはどのような訴求(コピー)が書かれていたのでしょうか?使われている画像はターゲットとしているユーザーにどのような見え方になっていたのでしょうか?コピーに使われたフォントはクライアントの商材を伝える上で最適なものだったのでしょうか?そして今回効果が良かったと判定されたクリエイティブは他のクリエイティブと比べて、どの要素がどのように作用していたのでしょうか?

それらの要素は「コンサル」にとってはCTRやCVR、CPC/CPAなどの各指標について、それぞれのバナーの要素がどのように作用したかを思考し、そして次の打ち手を考えるために必要な変数になります。「フロント」にとっては現状の報告ではもちろん、クライアントの商材の打ち出し方・見せ方について一歩踏み込んだ提案ができる要素になります。そして「クリエイティブ(デザイン)」チームについてはバナー制作についての経験値・ノウハウ化が推進され、再現性の高い制作が可能になるわけです。

つまり、クリエイティブ(バナー)の効果を掘り下げて考えられる代理店は、媒体のアルゴリズムの結果の報告だけしかできない代理店と比べれば、中長期的に競争力の高い提案、そして成果を出すことが出来る組織を作ることが出来るわけです。

研修での伝え方

まあこれは、実はOne on One研修を実施しているとかなりの確率で遭遇する問題なんですね。確かに媒体の最適化が洗練された現代においては「媒体のアルゴリズムの結果」が「正解」に見えることもあるでしょう。しかし、はっきり言えばそこで思考が停止するのであれば極論広告代理店は必要なくなるんです。

もはやCanvaFigmaといった、誰でも使えるバナー作成ツールがありふれた現在において、制作だけなら誰でもできます。それこそ学生時代を通して「絵」については最低評価をもらい続けた自分だってバナーを作ること自体はできてしまうんです。そしていくつかパターンを作って、タグ設置さえ間違えなければ、なぜか最適化がかかり、これまたそこそこの結果が出るわけです。

繰り返しますが「媒体の最適化」を否定するつもりはまるでありません。しかしながら、その最適化は「与えられた条件」の中における一つの結果でしかありません。ましてや「正解」だと断言などできません。「与えられた条件」にはキーワードの選定、アカウントの設計、ランディングページの設計なども様々含まれますが「クリエイティブ」も媒体の自動最適化に与えられた「条件」の一つなんです。

弊社が提供しているOne on One研修では「クリエイティブ」の評価を宿題に出すことがあります。CPAやCTRなど様々な指標が存在しますが、クライアントの商材、その課題、そして訴求の在り方などを含めた、ある種アートの領域も含めて、自身の言葉で「評価」を説明できることが、実は非常に重要な能力になっているんですね。

アルゴリズムに使われるな!

ということを踏まえてTapClicksのYDA画像表示機能を搭載したことは実は結構事実です。もちろん他にもいろいろ理由はありますが。

ただ、弊社のモットーでもある「Humanity & Technology」ということから考えると、媒体のアルゴリズムの結果の前に思考停止になることは、やはりマーケティングとは言いたくないですし、それが仕事ではないと思うわけです。ChatGPTの話などにも言える話ですが「テクノロジー」は手段でしかありません。「テクノロジー」は万人に公平なツールです。そのツールを最大限利用し、果実を得るためには「Humanity」が重要です。

それはバナー一つとってもその画像がどういった意味があったのか、をしっかり考え、言語化し、そして説明できる力があってこそ、実際に「Technology」を活用できる「Humanity」につながると思うのです。広告運用にせよ、デジタルマーケティングにせよ、アルゴリズムに使われるのではなく、アルゴリズムに適切に付き合いつつ、人間のイマジネーション、つまり「アート」を大切にしたいと思って本日も研修をご提供している弊社なのでした!