トップ営業からマーケターへ!顧客理解と事業理解で成果を上げる!秘訣は『憑依力?!』|【世界への扉を開け!デジタル×人間力】vol.2 嶋さん

デジタルマーケティング業界で活躍し続ける先駆者達は、「デジタル」を活用するための「人間力」をどう伸ばし、どう考えているのか?本企画では、第一線で活躍し続けるリーダー達の生の声から仕事の流儀を紐解いていきます。 

第二弾では、ITコンサルの営業やSaaS製品の事業開発から、BtoBマーケティング/セールスマーケ全体統括・経営企画という「営業からマーケティング」へのキャリアを持つ嶋氏に「デジタルマーケティングで成果の上がる仕事術」と題してお話を伺いました。 

1000人以上もの代表と商談をしてきた嶋氏が語る「顧客理解の秘訣」から、事業計画から逆算した目標設定による「本質的な事業理解」について、若手マーケターの皆さんの羅針盤となる視点をお話してもらいました。 

嶋勇輝さん

嶋 勇輝 氏

YUKI SHIMA

ITコンサルの営業として多くの商談を成功させ活躍後、現在は株式会社PR Table にてBtoBマーケティング/セールスマーケ全体の統括・経営企画・事業開発など幅広い活躍を重ねる。

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『この記事はこんな人におすすめ!』 
・営業職に所属していてキャリアパスを模索している方
・マーケティング業界で働いている若手の方
・事業会社のマーケティングに興味がある方・従事されている方

目次

―――まずは嶋さんの経歴を教えてください。 

僕は今年36歳で、社会人歴は14年になります。 

もともと新卒で入った会社は、ゴリゴリの営業系ベンチャーで、BtoBに特化したITコンサルの営業から始まって、自社で開発したSaaS製品の事業開発なんかもしていました。 

そこで5年弱キャリアを積み、次に法人特化で光回線を提供している大手ITインフラソリューション企業に転職いたしました。

大手グループならではのホワイトな働き方を体感しながら、ITインフラのコンサルティング営業として、光回線やセキュリティ機器の営業活動、そして途中でクラウド事業部の立ち上げに携わりました。 

―――なかなかガッツのあるキャリアから始まってますね。その後はどうしたんですか?

その後スタートアップの会社に転職し、まずBtoBの法人営業の立ち上げを行いました。アライアンス系の業務も担当していて、どうシナジーを生んで事業を伸ばしていくかみたいなことにも関わっていましたね。

―――実はその時、お仕事ご一緒しましたよね。

そうなんです。一緒にBtoCのマーケティングのチームの立ち上げをしましたよね。マーケティングにはそこで初めて触れました。

その後に今のPR Tableという会社に2020年に入社し、今5年目になります。当初はBtoBのカスタマーサクセス所属で、営業活動や既存顧客のアップセル・クロスセル、チャーン(解約)抑止をしていました。

その後、PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)という役割で、プロダクトがどうあるべきかを考えるプロダクト開発、そしてセールスとマーケティング全体の統括を経て、今は経営企画・事業開発という形で業務を遂行しています。 

―――嶋さんのキャリアっておもしろいですよね。今の会社でも営業にマーケ。そして、経営企画、事業開発と職種が変わっていますが、そのあたりってどう捉えているんでしょうか?

そうですね、職種は特にこだわりなく、シンプルに面白そうなことをやってみたいというのが原動力にあります。いろいろなことができる環境はとても面白く感じていますね。

―――嶋さんの今までの経験から「営業」「マーケティング」「事業開発」の違いってなんだと思いますか? 

そうですね、営業もマーケティングも事業開発も、会社の成長とか会社の売り上げを作っていく上でのいち役割だと思っています。 

マーケティングそのものは概念的な話だと思っていて、会社の売り上げを拡大するための仕組みを作っていくことがマーケティングの役割だと思います。 

その構造化された中で、商談を進めていって、クライアントへのヒアリング、課題解決のご提案など、各取引先に合わせて活動をするのが営業。 

事業開発は事業そのものを作っていく事になるので、仕組みを作るマーケティング的な観点も、いち取引先に向き合って課題解決を提案する営業観点も必要。

特に事業開発では、この今作り上げようとしているこの事業で、『誰のどのような課題を解決するのか、どう提供していくのか』という考え方を常に持つ必要があるんですよね。

そう思うと全ての活動はやっぱり『マーケティング』ってことになるんじゃないかって思いますよね。 

――― なるほど。マーケティングの範囲って狭くも広くも使われますもんね。ここでは、マーケティングを仕組み化と捉えると、一番最初に営業からマーケティングの仕事をした時に、何か思ったことってありましたか? 

営業活動そのものを定量化できるんだな、という発見はマーケティングを通して気づけたポイントだと思っています。 

1、2社目は体育会系な会社で、売っている商材が良かったりするので、売れて当然なところはあって、『気合いと根性』に少し知識を添えて、わずかばかり運もあれば売れてしまう感じでした。 

ですが実際に営業活動を何十社、何百社、何千社と商談を重ねていくうちに、受注した企業のセグメンテーションがなんとなく自分の中で出来てきて、実際にどういう営業プロセスを踏んで受注に繋がったのか?どういう情報をどのタイミングで提供できたからうまくクロージングができたか?など、実はもっと色々因数分解できるのでは?と、うっすら思っていたんですよね。

――― いわゆる『営業のカン』てやつだと思うんですけど、それをもっとロジックにできるなってイメージですかね?

そうですね。それをマーケティング部で活動を始めた際に、ターゲットが自社を知ってから購入に至るまでを、態度変容フローで表してその各フェーズにKPIを設定して言語化した時に、ピーンときたんですよね。

営業活動もターゲットごとにそれぞれのフェーズで定量化すれば良かったのか!って。

もっと早くにマーケティングに触れていたら、早い段階からトップ営業として走り出せたのかなとか。そんな気づきはありましたね。 

―――嶋さんの思う、マーケティングの面白みはどんなところですか? 

白黒しっかりと付け、仮説検証を繰り返しできることは面白いなと思います。

大きな仮説検証みたいなのをやろうと思うと中途半端に終わってしまい、継続できないということもあり得ますが、中間のKPIをしっかり設ければ短期的に仮説検証をしていけるのは醍醐味ですよね。

中間KPIがあることで、チーム全体でも、共通認識を持って検証を進めていけるっていう、面白味がありますよね。 

―――マーケティングを推進する中で、身に付いたことはありますか? 

やっぱり、言語化能力自体は上がると思います。

さっきお伝えしたように営業を受注できたかどうかって、担当者の機嫌が良かったから受注できたとか、決算前で予算消化のタイミングでアプローチができたから良かったとか、色んな要因が出てきて、なんか総じて「・・運」みたいな。

言葉に出来ないままニュアンスで進めてしまいがちなのが、大体営業かなと。 

―――言語化能力が上がるのは、本当にそうですよね。なぜだと思いますか? 

マーケティング活動をし始めてから態度変容とか、ペルソナとか、ターゲットとかセグメンテーションとかいろいろ考えるようになって。

これを例えば、経営陣とかメンバーに伝えるときに、イメージが一致するか?を考えて必ず言語化して、認識の齟齬なくイメージを共有しないといけないので、何となくニュアンスでやっていた営業活動が言語化されていく。

それを繰り返していくうちに、言語化能力自体はすごく上がっていたなって感じます。 

―――なるほど。他には何かありますか?

とても細かいところまで考えますよね。細かいのは、本当はすごく嫌いなんですけど楽しいんですよね。(笑)

それってどういうことだ?って言語化をしていく中で、自分自身も整理されるところがあります。 

それこそ当社のtalentbookが提供するサービスで、企業の社員(タレント)にインタビュー取材をしていくと、『取材を通して社歴の整理ができました』や『自分の魅力ポイント、自社の魅力を再認識できました』などのお声をいただくことがあります。 

第三者に伝える必要が出てくると、言語化能力と解像度が上がっていくのかなと思います。 

―――ここまで面白い部分を聞いてきましたけど、逆にマーケティングの難しいなって思うところありますか? 

やっぱりずっと正解がないところだと思います。ユーザーの心理とか行動みたいなところも常に変化しますし、政府の動きとか経済の動きによってもがらっと変わっちゃうことも多いですし。

ずっとリサーチをしながら戦略を立てていくっていうのはすごく難しいんですけど。

でも、それもマーケティングの面白みでもあるなと思いますね。 

顧客理解:顧客を4象限で見抜き勝てる商談へ繋げる 

―――変化していくユーザー心理をつかみ顧客理解をしていくために、嶋さんが意識されていることはありますか?

そうですね、これまでの営業経験から、もはや無意識的なところがあるんですが、人をソーシャルスタイル*の4象限で分ける癖がついています。

*ソーシャルスタイル:人の傾向を4つに類型化し、その違いを認識することによってコミュニケーションの向上を企図するもの(引用

僕は営業時代、CRMのセールスフォース内にある担当者情報を細かくずーっと観察し続けていました。商談先の代表と面談した時に、この人はエクスプレッシブタイプ、この人はドライビングタイプみたいなのをどんどんラベル付けしていってたんです。

今思えばマーケティング活動も一緒なのかもとは思うのですが、それを徹底してきたのでビジネス上付き合いがある方々には、分類を無意識的にしている気がします。

社内でもコミュニケーションを取る中でラベル付けがされているので、『この人とはこう』みたいに、結構戦略的にコミュニケーションを取ってるかもしれません。

―――なるほど、このお話ってマーケティング活動の中でもターゲットを理解するのにすごく役立ちそうな感じがしますね。 

僕はこれまでの経歴上、営業経験が長く、場数も多いんです。実際、1000人以上の代表、責任者の方と商談してきているので、その辺が染みついているかもしれません。

逆にマーケティング活動する時のターゲット、ペルソナ作りとか含めてこの人だったらどう考え行動するか、憑依して考えていくというところは、何をやっていても考えてしまうかもしれません。 

―――憑依・・・?それはどういうことでしょうか? 

その人に憑依するぐらい相手のことを考えられるかどうかっていうことですね。

例えば、あるクリエイティブが完成したシーンを考えてみてください。そのクリエイティブは、

  • 対象が誰で、訴求内容、使用媒体も含んだロジックによって作られたクリエイティブなのか。
  • 『これカッコいいので!』っていうその人のインスピレーションに助けられたクリエイティブなのか。

結局どっちがいいかは、ユーザーが決める話ではあるんですけど、ロジカルに憑依して考えられる方は僕はすごく一緒に仕事しやすいなと思っているんですよね。そのロジックの仮説検証ができるじゃないですか。だから、この憑依力って大事だよなって営業時代からもずっと思っているところです。 

―――それで、『憑依力』なんですね。

この憑依力は僕はすごい大事な部分だなと思っていて、マーケティング職の採用活動をする際も、『憑依力』があるかどうかみたいなところはスキルポイントとして考えていて、面接でもよく見ようと思っている部分ですね。 

事業理解:事業計画から逆算した目標設定

―――マーケティング部って経営陣とも現場で動いてくれる営業とも繋ぐ役割もあると思いますが、円滑に推進するために大切にしていることはありますか?

大前提、会社としての経営方針とか事業計画は、理解しておかないといけないと思っています。 

経営方針や事業計画からマーケティング方針に落とし込む際に、会社の方向性とぶれちゃったりとか、そこを無視して自分のやりたいマーケティング施策に振り切っちゃうと、何も積み上がらないので、やはり会社の状況とか今後の動きとかを認識した上での戦略立てだと思ってます。 

―――会社の目標からちゃんと逆算するのは、営業時代からそうなんですか? 

営業時代もそうですね。効率化を考えていた時に自分自身に求められる数字・役割は何かは追求していましたね。しかも、それが評価に関わってくるところだと思うので。

営業目標自体は事業計画から決められるわけじゃないですか。ただ、ぽーんと目の前に降りてくるのではなく。

では、その目標を達成するために最短で何をしたら一番楽できるか?と考えると、事業計画に沿って展開した方が効率がいいんですよね。 

―――嶋さんはコスト、利益も含めてそのバランスの良い視点をお持ちだなと思うのですが、その視点ってどうすると得られると思いますか?  

実際に、僕が事業計画みたいなものに触れたのは、一社前のスタートアップ企業で、商品をいくつ積んだら、いつ黒転するんだ?という計画を立ててからかもしれないですね。

その時にこうやって各施策・各部門の目標値って決めるんだなと実感しました。決める側を経験したのが、大きな転換点であり原点かもしれないですね。 

嶋さん流 社内コミュニケーション術

―――マーケティングを推進する上で、経営陣の考えとマーケ担当者のコミュニケーションのすれ違いってよく課題として挙げられると思いますが、それについてどう思いますか?

まず、経営側とコミュニケーションを取ることは絶対的に必要だと思っています。

会社の方向性や、何をやっていきたいかというWILLをやっぱり経営側は持ってますし、それを叶えていくための経営方針であり、事業計画です。

そのWILLを理解した上で、事業計画から逆算してマーケティング側で何をしなきゃいけないのかとか、セールス側でどんなKPIを負うべきなのかっていうのは、事業計画に結びついて考え込まないと歯車が合わない状態になってしまいます。

なので、経営側とすり合わせした上でマーケティング戦略方針、予算、チーム構成まで落とし込み、コミュニケーションをとって進めていくことが必要だと思います。 

―――チームでマーケティングを進めていく時に、仮説やKPIが共通認識になっていることは大事ですか?

大事ですね。ここがバラバラになっちゃうと何でも許される。軸がぶれ始めると、最短距離で仮説検証したいのに、無駄な検証を挟んじゃうみたいなことが起こりますよね。

デジタルマーケティング活動には色んな施策手段がありますが、仮説を立てることで施策の検証をしていけます。仮説とKPIをチームで共通認識として持つことで、仮説検証をスムーズに効率的に推進していけると思います。 

―――よくマーケティング成功事例とかもあるじゃないですか。それってそのまま使えると思います? 

そこは僕は否定派。あくまでもその会社の、そのサービスであるから成功したものであって、うちに100%当てはめられるかっていうと、そんなことはないなと思っていますね。 

ただ、考え方とか、そこに用いられたフレームワークとか情報整理の仕方はすごく参考になるので、そういうところは勉強させていただきながら、うちだったらどういう風にすべきか?を見出すようにしています。 

特にマーケティングのフレームワークは、すごく役に立つなと思います。マーケティングファネルから考える、とか市場を見る上で3Cとか4Pとか基本的なものを始め、いろんなフレームワークがあると思うんですけど。

分からないなりにでも考えてみるのが大事だと思いますね。もちろん最初からは上手くいかないんですけどね。でも、考えていって、いくつか材料が揃った時にピッタリとピースが合う、歯車が合うような瞬間って凄くて。

―――あはは。それわかる気がします。フレームワークを使って何を導き出すのか?が大事ですよね。

そうですね。マーケティングチームを作る時に、マーケティングって何だろう?っていうのを凄くいっぱい調べてたんですよ。その時に、フレームワークをいろいろ知りました。

3Cって何でやるの?市場理解とかコンペティター(競合)を理解したところで何か分かるの?と正直思ってました。

でも、一つだけだと成立しなくても3つ4つ整理していくと、戦略を立てる上ですごく役に立つんだなと思いました。何をすべきか見えてくるんですよね。

マーケティングのフレームワークを『使いこなす』ことは大事なスキルの一つだと思いますね。 

―――最後に、嶋さんのようなキャリアを目指す若手へのアドバイスはありますか?

そうですね。やっぱり「憑依力」が大切だと伝えたいです。

その人に憑依するぐらい考える。

お友達でも同僚でも取引先でも、その人になって考えられると納得度の高いコミュニケーションを取ることが出来ます。

営業でもマーケティングでも事業開発でも経営企画でも、その他どの部署にいたとしても、結局は、誰に対して何を提供するか?というのは変わらないですよね。 

何を提供すべきか?は、憑依すればするほど見えてくるのかなと思いますし、その結果なんでうまいくいったのか?もしくは、なんで失敗したのか?と振り返ることも大切だと思います。

―――本日は、たくさんお話聞かせていただき、ありがとうございました!

本シリーズは【世界への扉を開け!デジタル×人間力】をテーマに”世界に通用するデジタルマーケティング人材”を目指し奮闘する若手マーケターの皆さんの、羅針盤となる視点を様々なキャリアを持ったゲストの方から紐解いていきます。

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