02. 知識の壁と新しい環境での適応
治田:ちょっと話が脱線しましたが、そういった背景がある中で電通デジタルに入社されたわけですが「総合系」から「デジタル系」への転職という意味で何か苦労ってありましたか?
田上:もちろんありました(笑)。思った以上にあったな、っていう感覚ですね。
治田:なるほど(笑)。どんなところで苦労されたか伺ってもいいですか?
田上:大きく二つあって、一つ目が単純に自分の知識が足りなくてついていけない状況だったんですよね。もちろん前職の営業の時もデジタル広告の提案をして運用とかPDCAの話もしていたので、ある程度話せると思っていたんです。ところが実際に電通デジタルに入社して、クライアントと相対してみると、全然知識が足りてなくて。もう勉強の毎日でした。
社内の打ち合わせについても仕事を通して得られた知見を共有する会なんかでも、もう話していることがわからない(笑)。なのでわからない単語を調べて、年下のメンバーなんかにもいろいろ聞いて、Excelで辞書みたいなものを作ってました。ついていけるようになるまでかなり時間はかかったな、という印象はあります。
もう一つが単純に電通デジタルのメンバーのレベルが高い、っていうところでしたね。私も営業でバリバリ頑張ってきたつもりだったんで、通用するつもりで入社したんですけど、年下のメンバーであってもみんな優秀なんですよね。
さっき話した自分がついていくのに必死だった社内の打ち合わせでも、メンバーはプロフェッショナルとしてちゃんとした改善策を持ってきて、会議の中で確認しないといけないこともテキパキと片付けて、進行もうまいし、っていうので、ほんと自信を失うくらいでした(笑)
治田:(笑)。そもそもの自分の力不足も痛感しながら、周りのメンバーが優秀っていう、そのギャップはなかなか大きいですよね。
田上:当時の上長との面談の時に「2割ぐらいしかわからなかった」と吐露したことを覚えてます(笑)
治田:いや、ただこの田上さんの苦労話を軽んずるわけではないのですが、デジタルの世界に限らず、新しい環境に飛び込んだ時に「知識の壁」って絶対あると思うんですよ。かつ電通デジタルの人が優秀っていうのは、実は私も研修をする中ですごく感じるところではあるんです。シンプルに電通デジタルって「層が厚い」って思われません?
田上:そう思います。本当年齢関係なくて、みんな優秀ですね。
治田:さっきの「広告代理店は人間が働くことの価値が高い」っていう話につながるんですが、やっぱり広告代理店の付加価値ってテクニカルとかソリューションとか様々な側面がある中で、やっぱり「人の力」ってその中でも最重要だなって思うんですよ。
そしてその最初の一年あたりで「自信喪失」ぐらいの勢いでガツンとやられた、というところから、それをどう克服されたかを伺わせてください。
田上:そうですね。さっきの話での上長との面談の時に「自信を持てない、クライアントと向き合ったときに自信をもって提案できない」という話をしたんですが、その時勧められたのがそれこそ治田さんの、sembearさんのOne on One研修だったんです。
実はあの研修を受ける前にオリエンテーションみたいなものを受けるんですが「めちゃくちゃ厳しい先生」とか「ついてこれる人も限られます」みたいな説明を受けるんですよね(笑)。
なのでもうすでに自信を失ってるのに、どんな研修を受けさせられんねん、って思ってました。
治田:そんなブリーフィングがされるんですね。初めて知りました(笑)。
田上:ただ、結果的にはホントにそんなことなくて、一人ひとりの課題感に対して、適切なテーマや宿題を設定していただいたと思います。あの時ってとりあえずアドテクの基本を理解して話せるようになりましょう、というところの課題設定だったと思うんですが、ほんとに最初はわからなくて。
でも出された宿題をもとに社内の研修動画とか、ネットで調べてみたりとか、YouTubeで解説動画を見たりとかすると、だんだんと「あ、そういうことか」って腑に落ちる瞬間があるんですよね。それをもとに課題としてまとめて提出をするっていうのを隔週で繰り返してました。そういうなかで少しずつ苦手意識が薄れていったな、というのを感じています。
ただ、それだけでもまだ足りてなかったところがあって、自分の自信を取り戻すまでには至ってなかったんですけど、そのあと社内の知見共有会の選定委員に上長からアサインされたんです。社内にどういうナレッジを共有していくかっていうのを絞り込んでいくチームがあるんですが、その中でも知らないこと、わからないことがたくさん出てきて、それを調べて社内に共有するっていうことを続けてました。
そういうのを続けて2年ぐらいですかね、ようやくクライアントに対して自信をもって提案できるようになってきたなっていう実感が生まれました。
治田:弊社のOne on One研修って、先ほど田上さんがおっしゃった通り、隔週で毎回宿題が出るじゃないですか。あの宿題って基本的にはクライアントと向き合って話をした時に「あれ、これわかってないな」っていうところにつながるような題材を準備してるんですよね。
自分が思う「デジタルマーケティング業界」の学習の難しさって「自分で考えたことに確信が持てない」っていうことだと思ってるんです。どこかに模範解答があるようで、実は自分で答えを作らなきゃいけないことが多い世界だと思うので。
それこそ学校であれば先生から宿題が出されて、それについて答え合わせができますけど、デジタルの世界の「答え合わせ」って実はすごく難しいというか、機会があまりないんですよね。
そういう意味で宿題を出すときの難易度設定だったり、宿題を発表してもらうときに「どう考えたか」っていう思考のプロセスをしっかり追いかけるっていうのをちゃんと確認しないと研修効果が高まらないと思ってるんです。「答え」が偶然合ってるだけじゃだめで「どう考えて」その「自分なりの答えに行きついたか」っていうところまで見ないと再現性もありませんし。
しかし、弊社の研修だけではなく、上長の方も本当にいいアサインをされましたよね。
田上:いや、やっぱりすごいですよね。自分が自信を失ってるっていうのはぽろっといったと思うんだすけど、そこをちゃんと掘り下げられるんです。具体的にどんな風に失ってるのか、どこに不安を感じているのか、どういうシーンでうまくしゃべれないのか、っていうところを言語化されて。教会で牧師さんに白状するみたいな(笑)
治田:教会の懺悔室的な(笑)
田上:そうです(笑)。で、ちょうどギリギリ背伸びして届く課題を設定されるな、っていう感覚を思ってますね。
治田:その課題設定ってホント大事ですよね。簡単にこなせる課題だと成長しないし、とはいえ背伸びして手を伸ばしてもこなせない課題じゃ頑張れないし。
そういう意味で、ちょっとストレートすぎる質問かもしれませんが「電通デジタル」っていう会社、その環境って田上さんの成長においては大きかったと思うんですが、その違いってどこらへんだと思われますか?
田上:そうですね、実際にOne on Oneでの面談や研修があって、最初「何を話せばいいんだろう」っていうのはあったんですよね。でも話していく中で、自分で牧師さんに懺悔しながら自分の足りないところに気づく、っていうのを繰り返す中で、自分の理想像と現状のギャップが意識できるようになって、何を努力すればいいか、っていうのがちゃんとわかったっていうのは本当に大きな違いだったと思います。
もちろん今までの仕事でも努力はしてきましたが、ただがむしゃらに頑張っていただけ、っていうのも否定はできないのかなと思うんです。今は行きたいところが明確に意識できて、そこに向けて正しい努力ができる環境、っていう感じはしますね。
治田:すごく分かります。まあ身も蓋もないことを言えば、社会人ってみんな何かしら努力してると思うんですよ。ただその努力には「質」と「量」っていうものがちゃんとあって、特に努力の「質」って環境に依存すると思うんですよね。
努力の「量」という意味でとにかくがむしゃらに必死に頑張る時期、ってある程度必要ではあると思うんですけど、その努力の「素地」ができた後ってある程度計算した努力、自分の方向性を見据えた努力が必要になるフェーズっていうのがあると思うんです。
そういう意味で先ほどの上長の方の支援やアサイン、弊社の研修の導入という意味でも、電通デジタルという会社って「努力を支援する環境」がほんとに整ってるな、と思うんですよね。
これってある意味で、電通デジタルという会社が「努力を支援する」とか「チャレンジを支える」っていう社風がある、っていう感じなんでしょうか?
田上:そうですね、まあそういう会社は他にもあるとは思いますが、電通デジタルにそういう素地があることは事実だと思います。ただ、さっきの知見共有会のアサインだったり、研修受けてみようとか、自分のやりたいことを相談しながら進めたりとか、そういうことを止められたことは本当になくて。基本的にはアドバイスをもらいながら背中を押してもらえる環境ではありましたね。
