AIが若手の成長を止めている?リモートワーク時代に加速する『自己認知のゆがみ』の正体

AIが若手の成長を止めている?と題された画面前の男性。ホログラフィック画面とロボット、デスク周りの小物が映る。

「なんでこんな提案資料を出した?」という事例、増えてませんか?実はそれ「個人」の問題ではなく「発生させる構造」があるかもしれません。

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弊社が提供している広告代理店向けのOne on One研修ですが、実はこれ、会社の法人化の前、つまり2020年よりも前の2013年から提供している研修プログラムです。当初は創業者の治田(私)の個人事業でもあり、途中何回かの内容のアップデートを繰り返し、2026年現在でもお声がけをいただき継続して提供をしている、いわゆる「老舗」コンテンツとなっております。

そしてこのOne on One研修を継続して様々な代理店さんに提供し、受講者は200名以上となった今、実は「大きな過渡期」を迎えている気がしてなりません。それはOne on One研修の過渡期というよりも、広告代理店の人材育成課題、ひょっとすると日本や世界を含めた「若手の育成」における課題が大きく変質している、と言い換えてもよいのかもしれません。

それは「リモートワーク」と「AI」による弊害です。

私自身フルリモートの会社を経営しているので他人ごとではないのですが、まずリモートワークのメリットから述べていきましょう。

特にデジタル業界においては、リモートワークできるか否かは採用の応募に直結します。弊社も採用する際に「リモートワークだから」という理由で応募をする人は決して珍しくありません。そういう意味で人材不足傾向が極めて強い現在の人材市場、さらに言えば慢性的に人手不足であるデジタル広告業界においてリモートワークは人員をそろえ、サービスを提供する上では必要不可欠な要素です。

さらに言えば、リモートワークのメリットは従業員側だけのものではありません。企業側として言えば固定費である「家賃」の削減にもつながり、経営的な体力の向上という意味でもメリットがあります。

ただ、それによってもたらされた「罪」の部分も考えるべきフェーズに入ったといえるでしょう。それは「若手の成長速度の劣化」です。「若手」と書いていますが、これは実際の年齢というよりは「リモートワークで働き始めた年数が短い人」と捉えておいてください。

つまりリモートワーク環境で働き始めることで、その会社のやり方やノウハウ、そして代理店においては「提案能力」や「巻き込み力」などが従来の速度ほど順調に成長しない、という問題があるように思っています。

もう少し踏み込んで考えてみましょう。

リモートワークがもたらした自己認知問題

上記は弊社の最近の提案資料の抜粋なのですが、リモートワーク環境においてもっとも育ちにくいのは「提案力」や「数値解釈」などの「ハードスキル」でも、「コミュニケーション力」や「積極性」などの「ソフトスキル」でもありません。もっとも育ちにくいのはそれらの根幹にある「自分は今どれくらいできているのか」を客観視するために必要な「自己認知」です。

弊社のOne on One研修では、受講者が実際にクライアントさん向けに提出している提案書や定例報告の資料をすべて頂戴し、どのような提案を行っているかも事前にチェックし、その上で受講者にヒアリングを行うことで、その提案についてどのように考えて制作したかも把握します。

コロナ禍直後は実はそこまで大きな問題ではありませんでした。これはコロナ禍以前のフルタイム出社時代に培われたスキルが、リモートワークという制限がある中でも一定レベルで発揮できていたからでしょう。もっと言えば「スキル」はあれども「リモート」という制約の中で発揮しづらい、という非常に局所的な問題にすぎませんでした。

しかし、コロナ禍も終わり、リモートワークが定着した2023年の後半から2024年入社、つまり「リモートワークが前提となった時代に社会人を迎えた層」については、「スキルが発揮しづらい」というよりも「スキルの発揮の仕方が分からない」という層が増えています。

もう少し具体的に説明をすると、2023年の後半以降、弊社のOne on One研修に「リモートワークを前提にした組織」の経験しかない方が受講するようになりました。つまり2020年のコロナ禍から「三年」経過した方です。それまでの私の経験で「三年目ならこれくらいできるだろう」という見立てで研修を行ったときに「タスクベース」は従来と遜色がないものの「提案業務」について伸び悩んでいる人が確実に増えています。

ここから先は私の仮説にすぎませんが、リモートワークは確かにタスクベース、財務ベースでの生産性向上には貢献したものの、従業員の成長速度については「偏り」を産むものだ、と見ています。例えば「入稿作業」や「管理画面の操作」というタスクベースの業務についてはリモートワークで生産性が下がる事例はあまり見ていません。

ただ、実際のクライアント提案となると話は大きく変わります。これは生産性の議論以前に「どういうことを言えば相手が納得してこの提案にGoサインが出るか」という説得能力という側面で大きな問題として発露します。そしてその主たる要因の一つに「自分が説明している内容が相手にどう見えているか」がわかっていない方が増えている。つまり「自己認知」がうまく育っていない若手が増えている、といってもよいでしょう。

もっとストレートな言い方をするのであれば「自己認知が育ちにくい」というよりも「自己認知がゆがみやすい」といってもいいかもしれません。必要以上に自分を過小評価・過大評価をする傾向があり「結果として」クライアント提案も含む日々の業務に影響を与えている、というのが現実です。

そして昨今の生成AIがこの「ゆがんだ認知」を「保護」するという皮肉な現状を産んでいるように思います。

弊社のOne on One研修では全8回の研修セッションの中で宿題を出しており、その宿題に対する取り組みについてAIを使うことは禁止していません。

しかし、AIを使って「相手(例えば講師である私)」が納得できる資料を作れるかどうかは、本人の「認知」の持ち方に大きく依存します。例えばAIが出力した答えをそのままパワポにコピペしたとしましょう。

当然講師である私は「この宿題をAIに丸投げしたな」と秒で気づきます。その上で「AIが出してきた答えについてどの程度まで理解しているか」を研修中に問いただすわけですが、そういった想定される「質疑」に対する準備がほぼできないまま研修を迎える人が多くなります。

当初は私もこれを「やる気」の問題だと捉えていました。しかし現在はちょっと違います。もちろんマインドの問題であることを否定はしませんが、この問題の根幹は「求められた提出物について、どういったアウトプットを出すべきか」という課題に対する認識のずれが根本的な問題です。

AIに問いかけた結果もたらされた「答え」でその場を収めることができる、というのはある程度正しいかもしれませんが、当然準備としては不十分です。リモートワークが普及する前の提案では、準備段階で先輩や上司などが「壁打ち相手」となり、現在のAIの役割をこなしていたはずです。

つまり人間が「壁打ち相手」であることで「自分がどれくらいわかっているのか」「自分は何を提供するべきなのか」というそもそもの「認識」がアップデートされ、提案であれ報告会であれ「先読み」をした資料、そしてその準備が整います。

しかし、そもそもリモートワークで「他者」との比較が困難になり「ここまでできてればOK」の基準が自分本位になり、その結果ずれてしまった自己認知をAIは補正してくれません。その結果として「知識はあるもの提案力は皆無」という人材が育ってしまいます。

弊社の営業トークのように見えて恐縮ですが、必ずしも結論は営業トークではありません。

この「認知のずれ」の補正は自然に解決しません。むしろほっておくと悪化し続ける可能性が極めて高く、根源治療が必要な領域です。

これがもし「管理画面の操作がわかってない」という問題であればある程度かかるとは言え時間が解決します。慣れてくれれば終わりですから。

だからこそ、受講者(対象者)の心理的安全性が担保された状態で、先輩社員や上長がきめ細やかにOne on One形式で対話し、本人のずれを少しずつ補正する、という業務が、おそらく現状においての最適解の一つです。

そんなめんどくさいことやってられるか、という声もあるかもしれません。しかしこれは、Z世代だから、とかAI世代だから、という世代間論争的な決めつけではなく、はたまた「あいつはマインドが未熟だ」という精神論ではなく、時代とともに変化する「環境」による問題として捉えるべき問題です。

実際に弊社のOne on One研修では研修受講後の「行動変容率」が90%を超えており、「積極性」や「視野の広さ」というソフトスキル面だけではなく、「提案する施策の広さ」や「深掘りした提案」などの実務面でも変化が明確に表れています。

つまり、この「認知のずれ」を解消することが、今後の広告代理店の提案能力を高め、そして離職率低下や仕事のやりがい向上など、経営観点から見ても非常に大事なのではないか、というのが弊社の現状の結論です。

弊社が提供する「広告代理店向けOne on One研修プログラム」について、まだ若干の提供枠がございます。興味のある方は以下のフォームよりお問い合わせください!

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sembear
sembear合同会社の代表・CEO。Overture、Yahoo! Japan、NTTレゾナント、Kenshoo、SIGNALなど、アドテクノロジー・マーケティングテクノロジー業界で要職を歴任。現在は広告代理店の人材育成事業をメインに担当。研修受講者の行動変容率が九割に迫るOne on One研修がライフワーク

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