
「動画作ったのに、観光客が増えない」「SNSで毎日投稿してるのに、イベントに人が来ない」「説明資料まで作ったのに、誰も申し込んでくれない」
こんなふうに、“がっかりした空気”が現場に漂うことってありますよね。
わかります。ものすごくわかります。こっちは本気で取り組んでいるし、時間もお金も使っている。反応がなければ、落ち込むし、焦るし、ちょっと腹も立つ。
でも、その「来ない側」にモヤっとする感情って──もしかすると、ちょっとだけ“失礼”かもしれないんです。
1.あれだけ発信したのに、なんで来ないの?
というのも、そのモヤモヤって、たいてい「ちゃんと伝えたのに」「こっちはがんばったのに」という“自分たちの正しさ”を前提にしています。
つまり、届いていないのは相手が見ていないから、申し込まないのは相手が動かないから、という“相手のせい”っぽい前提がある。
でも本当に、そうなんでしょうか?
もしかしたら、発信のタイミングが悪かったのかもしれない。もしかしたら、伝え方がずれていたのかもしれない。もしかしたら、そもそも「その人にとって重要じゃなかった」だけかもしれない。
その可能性を全部すっ飛ばして、「来ないってなんで?」と相手に問いを投げるのは、ちょっとだけ“傲慢な問い”かもしれないと、自戒も込めて思います。
2.人の行動って、そんなに単純じゃない
2-1.見たからといって、動くとは限らない
そもそも、人の行動って、めちゃくちゃ複雑です。何かを「見た」からといって、即「動く」なんて、そんな単純じゃありません。
たとえばあなたが仕事の合間にイベントの告知を見たとします。気にはなるけど、いまは忙しい。とりあえずスルー。そのまま忘れて、二度と戻ってこない──なんて、よくある話です。
タイミング、体調、気分、家庭の事情、気温、曜日……。人が動かない理由って、ほんとにいくらでもあります。
2-2.「動かない」には、ちゃんと理由がある
それなのに、「出したのに来ない」「伝えたのに動かない」と思ってしまうのは、やっぱり発信する側が“自分中心”になってしまっている証拠かもしれません。
人は、自分のペースと文脈で動きます。それを無視して「行動してくれよ」は、ちょっと乱暴なんですよね。
だから大切なのは、「動かなかった理由」を、発信側がちゃんと考えること。想像する力があるかないかで、次の発信の精度が大きく変わってきます。
3.行動してもらうって、そんなに簡単?
3-1.ゴールだけ見て、「なんで来ないの?」って言ってない?
「行動につながる発信をしましょう」
「背中を押すコピーを考えましょう」
これ、よく聞きます。まったく正論です。でも、それって本当にそんなに簡単に起きるもんなんでしょうか?
人が“動く”って、結構ハードル高いんですよ。発信者は「申し込んでもらう」「来てもらう」をゴールにしがちだけど、受け手にとっては「知る」「ちょっと気になる」「調べる」「忘れる」「思い出す」「検討する」…っていう、めちゃくちゃ段階の長い道のりなんです。
なのに、「出したのに」「反応がないのはおかしい」となるのは、正直“こっちの都合だけでゴールを決めてる”感があります。
そりゃ動かないよ。階段を用意せずにジャンプしてくれって言ってるようなもんだから。
3-2.人が動くって、小さな奇跡の積み重ね
例えば、「ちょっと気になるイベント」の投稿を見かけた人がいたとして。
・そのときたまたま休みで
・申し込みページが簡単で
・会場が自宅から近くて
・誰か一緒に行けそうな人がいて
・なんか今週末ヒマで
そんな条件が全部そろって、やっと「行こうかな」になる。
つまり、“行動”ってすごい偶然と意思と余裕がかみ合ったタイミングの産物なんですよね。
その一連のプロセスを何も設計せずに、「なんで来ないの?」って言ってるのは、こっちの仕事がまだ途中、ってことなのかもしれません。
4.「動いてもらう」ためには、やっぱり設計がいる
4-1.願っても、押しても、人は動かない
ここまで読んで、「じゃあもう何しても意味ないじゃん」と思われたらそれは誤解です。
逆です。
人は勝手には動かない。だからこそ、“ちゃんと設計すること”がめちゃくちゃ大事なんです。
なんとなく作った発信に、なんとなく反応がある世界なんて、もう存在しません。ボタンを押したら動くような人なんて、ほとんどいない。
動いてもらうには、それなりの道のりと配慮が要る。そしてその道のりは、「届く」「伝わる」だけでは足りない。“動きやすくする”という設計視点が必要なんです。
4-2.設計とは、「相手の気持ちにたって考える」こと
発信の前に、こう問いかけてみてほしい。
これ、自分だったら申し込む?
リンククリックしたくなる導線になってる?
そもそも、この内容って“自分ごと”に見える?
そうやって、自分の発信を相手の立場に立って考えてみることが設計の第一歩です。(具体的に言うと、ターゲットと訴求価値を考えること)
雑に投げたら、雑にスルーされる。
でも、ちゃんと設計された発信は、たとえすぐ動かれなくても、どこかに残る。
5. おわりに:「届かない」のは、たぶん設計のせい
「行動してくれないなあ」と思ったとき、つい「見てないからだ」「興味がないのか」と“相手側”に理由を探しがちです。でも、本当はそれって自分たちがまだ、「動けるように設計していないだけ」かもしれません。
情報を出すだけでは人は動かない。きっかけ、順番、タイミング、言葉の選び方──ぜんぶを丁寧に設計して、ようやく「届く」段階に立てる。
それでも動かないときは、動かないなりの理由がある。だから、「なんで来ないの?」じゃなくて、「どうすれば“来られる”状態をつくれるか」を考える。
発信するって、たぶんそういう想像力のトレーニングなんだと思います!皆さんもぜひ、本当の意味での情報発信に取り組んでみてください!
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