地方自治体マーケティングの重要性と面白さ

地方自治体マーケティングの重要性と面白さ

目次

地方自治体におけるマーケティングとは?

先日発表させていただいた栃木県真岡市様の事例宇都宮市様の事例などにもあるように、弊社は県レベルから市町村レベルまで、コンサルティングから職員研修まで様々な地方自治体様の「デジタルマーケティング」に関わっています。

弊社の中にもかなり「自治体のマーケティング」に関する知見、ノウハウが蓄積されてきたなとも思っているのですが、その中で「地方自治体におけるマーケティングとはそもそもなんなのか?」ということについてだんだんと一つの答えが出てきたように思います。

それは真岡市シティプロモーション係の小池さんもインタビューでおっしゃっている通り、「自治体におけるマーケティングとは『選ばれる街になる』ための営み」なんですよね。実は真岡市さんとは全く関係のない自治体さんのとある方も、弊社の研修のアンケートで「選ばれる街になるために今後とも頑張ります!」とコメントをいただいており、この「選ばれる街」になるというのは非常に重要な着眼点だと思います。

「選ばれる街になる」のは別に移住だけの話ではありません。「観光地」としても「選ばれる」ことがありますし「ふるさと納税先」としても「選ばれる」必要があるわけです。現在の消費者・生活者にとっては移住先にせよ観光地にせよふるさと納税先にせよ「選ぶことが出来る候補」がたくさん存在します。その中で「自分の街」が選ばれるために実行できるあらゆる手段が「自治体におけるマーケティング」といってもよいでしょう。

自治体におけるマーケティングの重要性について

はっきり言ってしまえば、人口が増加している時代において自治体の税収は右肩上がりでした。基本的に自治体の財源は税収であって、税収は人口規模と経済規模に比例して大きくなります。

ただ、現在の日本では人口減少が始まっているのは皆さんご存じの通りで、人口が減少する自治体においては原則として税収が減ってしまうことになります。それでも道を維持したり水道をちゃんと動かすためには当然財源が必要です。税収が減ることの財源不足を補う制度が「地方交付税」と言われるものです。

日経新聞の記事からの引用ですが

2022年度の地方交付税の総額を自治体に配る出口ベースで18.1兆円とすることで合意した。04年度以降で最高額となった。新型コロナウイルス対策費の膨張や税収減で財政難に直面する自治体を支える。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2197V0R21C21A2000000/

つまり税収が減った地方自治体には国の財政からお金が配布されるわけですね。これは実はここ五年ほどずっと伸び続けており、日本の国家財政支出としてもかなりの割合を占めています。この地方交付税は都市部と地方の格差を埋め、地方自治体において適切な行政サービス実施を保証するもので、日本国内においては多くの自治体が地方交付税の交付対象となっています。

その地方交付税に加え、近年ではふるさと納税(正式名称:地方創生応援税制)も地方にとって重要な財源確保の手段になっています。ふるさと納税もここ数年右肩上がりの成長を続け、2023年度に日本全体で一兆円を超えるほどの規模まで拡大し、地方にとっては貴重な財源になっていることは皆さんご存じかと思います。

総務省によりますと、ふるさと納税で全国の自治体に寄付された総額は昨年度1兆1175億円で初めて1兆円を超えました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240802/k10014533781000.html

ふるさと納税寄付額日本一の宮崎県都城市では単年度の寄付額が200億円近くに迫り、これは10万人程度の人口の自治体の財政規模を上回ります。つまりそれだけ財政状況を改善し、住民サービスを充実させ、人口流出を抑えたり、地場の産業を発展させる余力が大きくなるわけです。

人口流出、という観点でいえば「移住事業」も多くの自治体で実施されています。やや古いデータで恐縮ですが令和二年度の内閣官房の資料によると

その結果、東京圏在住者(20~59歳)の49.8%が「地方暮らし」に関心を持っていること、地方圏出身者の方が東京圏出身者よりも関心が高いこと、全体的に若者の方が関心を持っていることなどがわかりました。

https://www.chisou.go.jp/sousei/pdf/ijuu_chousa_houkokusho_0515.pdf

このように、より「自分らしい暮らし」を求めるトレンドは特に都市圏で顕著であり、その受け皿となる各自治体の「移住争奪戦」も始まっています。

もちろんふるさと納税自体は日本全体の財政からすれば単なる富の移転でしかありませんし、日本全体の人口が減少する中で移住者の「争奪戦」は必要以上に加熱している感は否めませんが、ここまで見てきた資料が示しているのは

  • 地方自治体に対して地方交付税総額は増え続けている→地元の税収だけでは十分ではない
  • ふるさと納税市場は拡大し続けている→寄付額獲得に成功することで地域の活性化につながる
  • 移住希望者の拡大している→人口減少の中で移住者の「取り合い」が始まっている

ただ、特に地方に目を向けた場合、税収の減少があまりに行き過ぎると、経営破綻を引き起こすわけです。実際に夕張市の財政破綻は記憶に新しいところですし、昨今では京都市も話題になりました。

ここで必要な考え方が「選ばれる自治体」です。ふるさと納税の寄付先として「選ばれる」こと、移住先として「選ばれる」こと、定住先として他の自治体を「選んだ結果」としての人口流出と捉えれば「自治体が存続する」ためには「選ばれる」ための魅力を磨き、発信することが必要な時代になりました。

つまり「自治体自身のマーケティング」が必要な時代になっているわけですね。

自治体のマーケティングはとっても面白い!

以上のことから、地方自治体における「マーケティング」が重要である理由はお分かりいただけたかと思います。ただ「自治体におけるマーケティング」って重要なだけではなく、すごく面白い仕事でもあるんですよね。

ただ、まずここで一つの現実を書かなければなりません。自治体マーケティングの面白さはもちろん間違いなくあるのですが、ここで踏まえておきたいのは「関係人口」という概念をどうとらえるか、です。

「関係人口」は確かに重要な概念ですし、弊社も「関係人口を拡大する」ことを自治体マーケティングの主眼に据えることは多くあります。ただ、同時に「関係するだけの人口」では意味がないとも考えています。前段の説明にもある通り、財政的・リソース的に厳しい状況である地方自治体が「移住や納税につながらない関係人口の拡大」をしたところで、中長期の自治体の存続について何らメリットはありません。つまり「自治体マーケティング」において「関係人口の拡大」は一つの手段でしかなく、その先の「自治体の存続」という目的を見失ってはいけないわけです。

そういう状況の中、弊社が考える地方自治体のマーケティング(特にデジタルマーケティング)の「面白さ」を三つあげたいと思います。

地方自治体のマーケティングが面白い理由1:地域の長所・弱点を明確化できる

まず「面白さのその1」ですが、やはりその土地、その町の「いいところ」だけではなく「悪いところ」を単なる知識や印象ではなく、リアリティをもって「言語化」することができる点でしょう。

日本のあらゆる自治体はどこも万人受けする理想郷ではありません。その町の魅力を伝え、悪いところがあっても気にならない、または許容できる人を引き付けるためには、様々な情報を収集し、それらを実体験もって言語化することが必要です。

移住について「田舎暮らし」をアピールしている自治体は本当にたくさんあります。その中で「自分の街の田舎暮らしは他とどう違うのか」を作り上げるプロセスは困難を伴うものの、脳内でアドレナリンの分泌が絶え間なく発生する、本当に「面白い」ポイントです。

地方自治体のマーケティングが面白い理由2:使える手段の幅が広い

実際に企業のマーケティングでは商材やターゲットによって使うべき選択肢が消去法的に決められてしまうことも珍しくありません。地方自治体のマーケティングは民間の大企業ほど大きな予算があるわけではありませんが、ターゲットになる層の決め方、打ち出す魅力の作り方次第で選択肢が無限大に広がります。

特に自治体が保有する「公式ホームページ」をどのように活用するか、というのはおおよそデジタルマーケティングに携わった人間であれば、その自由度の高さに驚くのではないか、と思います。

民間企業のデジタルマーケティングでは「申し込みや購買につながるLP」が正義、という風潮があります。私も当然一定それには同意するものではありますが、自治体の公式ホームページでどのように態度変容を狙うのか、という戦術的なアプローチはこれまた非常に頭を使いますが、アドレナリンが湧き出るポイントです。

もちろん公式ホームページ以外でも、広告であったりソーシャルアカウントの運用であったりという様々な手法の中で戦略的に有効であろう、という作戦を考えることも非常に民間企業のマーケティングと違った面白さがあります。

地方自治体のマーケティングが面白い理由3:求められる知識量が多い

おそらくこれが民間企業のマーケティングと最も異なる点だと思うのですが、それぞれの町ごとに「選ばれるため」の要素はまるで異なります。気候的な話や歴史・文化にまつわる話、交通アクセスやその町に住む人の気質など本当にいろいろなことを学びながら脳みそをフル稼働させる必要があるのです。

弊社では原則として支援することが決まった(またはかなりの確率で支援するであろう)自治体では、まず2万歩歩くことを推奨しています。

特に平成の大合併以降、実はその自治体の特徴を表す言葉が地図上から消えていることは珍しくありません。しかしながら、その町に実際に出向き、いろいろなところを歩くことでその町の生い立ち、歴史、風土、文化などを垣間見ることができ、そしてそれらは戦略立案において非常に重要なピースになることも珍しくありません。

そういった泥臭い手段で集められた情報から戦略を導き出すプロセスも、自治体マーケティングの面白さの一つだなと常々思います。

地方自治体のマーケティングの難易度

というわけで「重要」で「面白い」地方自治体のデジタルマーケティングですが、これがまた難易度が高いことも間違いありません。上に書いた「面白い理由」は裏を返せば「めっちゃ調べて勉強したうえで何をするかを広く考えてそこから作戦を立てる」ということではあるわけで、寸断する間もなく脳を稼働させ続けなければならない仕事です。そういう意味でやっぱり難易度は高いと言ってよいと思います。

だからこそ弊社にお任せください!という営業トークで締めてもよいですし、このBlogをもう少し読み進めると問い合わせフォームは登場するので是非ご相談いただけると幸いではあるのですが、今回言いたいことはそんなことよりも、やっぱりそれぞれの自治体でマーケティングに携わっている方々へのエールです。

上に書いた通り、日本の人口は減少しています。それは地方であればより直接的に「負の影響」を与えています。そんな中本当にいろいろなことを考えて、自らの街が「選ばれる」ために奮闘している職員の皆さんは、なんだかんだ言ってやっぱり大変だろうと思います。

さらに言えば「自治体のマーケティング」という考え方自体が浸透しているとは言い難い今の日本で、なかなか理解されないお仕事だとも思います。昨今のデジタル全盛のマーケティングの中では心無い中傷にさらされることもきっとあるでしょう。

でも、やっぱりあきらめずに頑張っていきましょう!地方自治体のデジタルマーケティング支援を提供している弊社としては、皆さんの努力が日本の未来を作っていると強く信じております!

と同時に、弊社としては皆さんのお役に立てるよう努力をしたいとも思いますのでご相談は是非以下のフォームよりご送信ください!

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