「登録してもらう」だけでは何も変わらない。ふるさと住民登録制度が機能するための条件とは【第二回】

自治体向けを示すオレンジの帯と、大きく『ふるさと住民登録制度を考える』と書かれたデザイン。下部には『第二回 制度が機能するための条件とは?』の青い帯がある。

こんにちは!sembearのありーです。

前回の第一回の記事では「ふるさと住民登録制度」の全体像と、わたし自身が感じる懸念をお伝えしました。

今回はその懸念をもう少し深掘りして、制度が本当に機能するために必要な条件について考えていきたいと思います。

実は2026年1月29日、「シティプロモーションサミット」(主催:一般社団法人日本経営協会)というイベントに登壇する機会をいただきました。

総務省・国土交通省・デジタル庁の担当者の方々が一堂に会し、ふるさと住民登録制度をはじめとした関係人口施策について解説するセッションもあり、200名を超える方が参加された非常に熱気のある場でした。

そこで感じたのは、国のこの制度への本気度は本物だということ。総務省の担当者の方の説明からも、制度を力強く推進していきたいという姿勢がひしひしと伝わってきました。

ただ同時に、こんな問いも頭に浮かんできました。

「制度が整ったとして、各自治体はちゃんと使いこなせるのだろうか?」

前回もお伝えしたとおり、この制度のプラットフォーム(アプリ・システム)は国が整備します。ただ、登録者に何を提供するか、どんな人に来てほしいか、登録後にどうコミュニケーションを取るか――そのすべては各自治体が自分たちで設計しなければなりません

これ、聞こえはシンプルですが、実はとても難しいことだとわたしは思っています。

なぜなら、「登録してほしい」と思うだけでは人は動かないからです。

登録者側の立場に立って考えてみましょう。

全国に1,700以上の自治体があり、同じアプリから複数のまちに登録できます(上限は3自治体)。その中で「このまちを選ぼう」と思ってもらうには、「ここに登録することで自分にどんな嬉しいことがあるのか」が明確に伝わる必要があります

マーケティングの言葉でいえば、これは「ベネフィットの設計と発信」そのものです。

「ふるさと住民登録制度はふるさと納税の次の一手」という文脈で語られることがあります。たしかに関係人口の拡大という目的は重なりますが、人が動くメカニズムがまったく違います

ふるさと納税が広く普及したのは、「お礼の品がもらえる」というわかりやすい即時ベネフィットがあったからです。手続きの煩雑さはありつつも、「寄付すれば返礼品が届く」という体験価値が明確でした。

一方、ふるさと住民登録には今のところ全国一律の「これをすれば得をする」という体験が存在しません。特典の内容は自治体ごとに異なり、しかも現段階では多くの自治体がまだ設計中です。

登録してみたけど何も届かない、何も変わらない――そんな体験が積み重なると、制度への信頼が失われてしまいます。

「登録してもらうこと」はゴールではなく、スタートに過ぎないんです。

もうひとつ、サミットの場でも話題に上がっていた重要な論点があります。それが「既存の住民による受け入れ体制」です。

関係人口を増やして地域の担い手になってもらうためには、外から来た人が活動しやすい環境が必要です。でも実際には、「よそ者」が地域活動に参加することへの心理的なハードルや、受け入れ側の体制が整っていないケースも少なくありません。

制度を始めることと、地域がその制度を受け入れる準備ができていることは別の話です。「ふるさと住民登録者が来ました、さあどうぞ」では機能しない。登録者と既存住民が一緒に何かを作れる場や仕組みを、自治体がちゃんとデザインする必要があります。

国の本気度は感じます。でも、「制度があること」と「制度が機能すること」は全然違います

シティプロモーションの支援をしていて思うのは、多くの自治体がまだ「情報を出せば人は動く」という発想から抜け出せていないということ。

ふるさと住民登録制度でも、「アプリに自治体情報を掲載しました」で終わってしまう自治体が出てくることを、正直懸念しています。

登録者が「このまちのふるさと住民でよかった」と思えるような体験をどう設計するか。これこそが、制度の成否を分ける最大のポイントであり、制度がうまくうまわっていくための条件です。

では、具体的に何をどう設計すればいいのか?次回はその「選ばれるまちになるための戦略」について深掘りしていきます!

  • ✅ 制度の「箱」は国が作るが、「中身」の設計は自治体次第
  • ✅ ふるさと納税と違い、一律のベネフィットが存在しない
  • ✅ 「登録してもらうこと」はゴールではなくスタート
  • ✅ 登録者を受け入れる地域側の体制づくりも不可欠
  • ✅ 登録者が「このまちのふるさと住民でよかった」と思えるような体験をどう設計するか、が最大のポイント

次回は「選ばれるまちになるために、自治体が今すぐやるべきこと」についてお話しします!お楽しみに。

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ありー
sembear合同会社COO。広告代理店でデジタル広告のコンサル・化粧品会社でマーケティング・IMCなどを担当。マーケティング活動がおもしろくなればいいなと思っており、事業側と協力会社のちゃんとしたパートナーシップを目指している。寒いのと朝は苦手人間。

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