「選ばれるまち」になるために。ふるさと住民登録制度時代のシティプロモーション戦略【第三回】

自治体向けのふるさと住民登録制度を考える 第3回の案内バナー。テーマは“選ばれるまち”になるためには?

こんにちは!sembearのありーです。

第1回・第2回と、ふるさと住民登録制度の全体像と「登録してもらうだけでは意味がない」という話をしてきました。

今回はいよいよ本題。では、どうすれば「選ばれるまち」になれるのか? シティプロモーションの支援をしている立場から、具体的に考えていきたいと思います!

制度への期待が高まる一方で、こんな声も出ています。

島根県の丸山達也知事は「本筋をやってほしい。われわれが解決したいこととかけ離れたおとぎ話をされても困る」と発言しています。また研究者からも「登録数が目的化する危うさ」が指摘されています。

この発言、わたしはすごく正直な声だと思っています。そして同時に、制度を「使いこなせる自治体」と「使いこなせない自治体」の差が、すでに始まっていることを示唆しているとも感じています。

知事が指摘する「本筋」とは何か。それは、登録者数を増やすことでも、アプリに情報を載せることでもなく、地域が抱える課題を実際に解決できるかどうかです。制度はあくまで手段であって、目的ではない。

でも現実問題、「制度ができた、さあやろう」と動き始める自治体は出てきます。そのとき、戦略なき見切り発車は「登録者ゼロ」「登録後に音沙汰なし」という残念な結果を生みかねません。

だからこそ、「制度があるから登録者が来る」という受け身の発想では絶対にうまくいかない。では何が必要か――それがシティプロモーション戦略です。

全国1,700以上の自治体が、同じアプリ・同じプラットフォームを使って登録者を募る時代がやってきます。

舞台が同じだからこそ、差がつくのは「中身」だけです。

マーケティングの世界でよく使われる言葉に「コモディティ化」があります。同じような商品・サービスが並んだとき、価格や見た目以外で差別化できなくなる現象です。ふるさと住民登録制度でも、まさにこれが起きるリスクがあります。

「自然豊か」「食が美味しい」「人があたたかい」――どのまちも同じようなことを言っていたら、登録者には選んでもらえません。

「このまちじゃなきゃダメ」という理由を作れるかどうかが、シティプロモーション戦略の核心になります。

すでに国の制度化を待たず、独自に動き出している自治体があります。いくつか見ていきましょう。

鳥取県日野町のふるさと住民票制度

は2017年から独自のふるさと住民票制度を創設。ポイントは、広報紙を送るだけにとどまらず、「町の計画策定へのパブリックコメント参加」や「特産品開発のモニター」など、登録者が意思決定に関われる機会を設けたことです。単なるファンではなく「当事者」としての意識を醸成することで、質の高い関係を築いています。

長野県飯綱町の有料ふるさと住民制度

2025年5月に有料プラン制(5,000円・6,500円)でふるさと住民制度を開始。施設利用券や飲食券などの特典をセットにした「地域ファンコミュニティ」として設計し、地元経済への波及と登録者の関与度を両立させています。

この2つの事例に共通しているのは、「登録してもらう」ではなく「関わり続けてもらう」を設計している点です。

ここで、sembearがシティプロモーション支援で実際に使っている「態度変容フロー」という考え方を使って整理してみましょう。

態度変容フローとは、ターゲットがまちを「知らない状態」から「深く関わる状態」へと変化していく一連のプロセスを設計する考え方です。ふるさと住民登録制度でも活用することができます。

  • 認知:まちの存在・魅力を知ってもらう
  • 興味:「ここ、なんか好きかも」と思ってもらう
  • 登録(ベーシック):とりあえず登録してみる
  • 体験:実際に訪れたり、情報を受け取ったりする
  • 深化(プレミアム):担い手として関わるようになる
  • 伝道:周りの人にまちの魅力を話してくれる

多くの自治体がやりがちなのは、「認知」のための情報発信だけして、その後の流れを設計していないことです。

登録してもらったあと、何を届けるか。どんな体験を提供するか。どうやってプレミアム登録に移行してもらうか。ここまで一気通貫で設計することが、制度を活かすカギです。

もうひとつ、シティプロモーション支援の現場でよく感じることをお伝えします。

作るのは「多くの人に来てほしい」は戦略ではありません。

ターゲットを絞ることを怖がる自治体は多いですが、「誰でもいいから登録してほしい」という姿勢では、結果的に誰にも刺さりません。

  • 自然体験が好きなファミリー層に来てほしいのか
  • リモートワークができる環境を求めているビジネスパーソンなのか
  • 地域の伝統工芸や文化に関心のある人なのか
  • 将来的に移住を検討している若い世代なのか

「このまちが好きそうな人」を具体的にイメージして、その人に刺さるベネフィットを設計する。これがシティプロモーション戦略の出発点です。

先行事例を見ていると、うまくいっている自治体には共通点があります。それは「登録制度を単独で考えていない」こと。

観光・ふるさと納税・移住促進・地域イベント……これまでやってきたシティプロモーション施策との連携の中に、ふるさと住民登録制度を位置づけています。

制度だけ単体で走らせようとすると、担当部署が孤立して続かなくなる。

制度はあくまでインフラです。その上に「うちのまちらしい関わり方のストーリー」を乗せることが、シティプロモーションの本当の仕事だと思います。

  • ✅ 同じプラットフォームを使う以上、差がつくのは「中身」だけ
  • ✅ 「登録後の体験」までを設計することが重要
  • ✅ 「誰に来てほしいか」を決めることが戦略の出発点
  • ✅ 制度は単独で走らせず、既存のシティプロモーション施策と連携させる

次回は最終回!「では、sembearはどう支援できるのか」という話も含めて、自治体が今すぐ動くべきアクションをお伝えします!お楽しみに。

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ありー
sembear合同会社COO。広告代理店でデジタル広告のコンサル・化粧品会社でマーケティング・IMCなどを担当。マーケティング活動がおもしろくなればいいなと思っており、事業側と協力会社のちゃんとしたパートナーシップを目指している。寒いのと朝は苦手人間。

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