
まず最初に「私はデザイナーではありません」。しかし、行政の情報発信に関わる仕事をしていると、デザインについて考えなければならない場面に頻繁に遭遇します。
自治体職員の皆さんも、チラシやウェブサイト、ソーシャルメディアのサムネイルなど、さまざまな場面で「デザインすること」を求められた経験があるのではないでしょうか?
「見やすく、分かりやすいデザインにしたい」「伝わる広報物を作りたい」と考えつつも、デザインの専門知識がない中で、どうすればよいのか悩む方も多いかと思います。
デザインに関する知識や経験を持たない「非デザイナー」である私達が、「デザインを考えること」に遭遇した際、どのように向き合えばよいのか?自治体の広報担当者の皆様からの相談が多い「デザインすること」について、デジタルマーケティングの視点から考えてみましょう。
目次
1.デザインの落とし穴が生み出す「誰にも見られないサイト」
以前の記事で、デザインの表面的な良し悪しに囚われすぎることの問題点についてお話しました。見た目のカッコ良さを優先した結果、本来の目的を見失い、結果として負の遺産となるケースが少なくないという内容です。
デザインの良し悪しばかりに囚われた結果、リニューアル後にサイトへの流入数が大幅に減少し、本来の目的を達成できなくなるケースは少なくありません。最終的には、維持費や管理費がかさむだけで「誰にも見られないサイト」という負の遺産を抱えてしまうのです。
https://sembear.biz/sembear-journal/2025/01/20/local_homepage_renewal/
しかしながら、これは 「デザイン(見た目)を無視しろ」 という話ではありません。
むしろ、デザインは情報を伝える上で極めて重要な要素だと言えます。問題は、デザインの本質を「単なる装飾」として捉えてしまうことにあります。デザインとは、単にカッコ良さや美しさを追求するものではなく、「何を伝えたいのか」「誰に届けるのか」「どのように行動を促したいのか」といった視点と密接に結びついているべきものです。
特に、デジタル上での情報発信においては、デザインの役割はさらに重要になります。

2. デジタルマーケティングとデザインの関係
デジタルマーケティングにおいても、デザインは単なる見た目の問題ではなく、ユーザーの行動を促す重要な要素の一つです。
そもそも、デジタルマーケティングとは、デジタル上での顧客(ユーザー)との接点を通じて、その関心や行動に変化を生み出す取り組みのことを示します。ただ情報を届けるだけでなく、その情報によって人々の意識や行動を促すことが求められます。
そのためには、デジタル技術を理解し活用することで情報伝達の確実性を高めるだけでなく、情報が届く過程からその後に至るまで、ターゲットの心理を捉え、共感を生み出す仕組みづくりを考えていく必要があります。
私は、この「共感を生み出す仕組みづくり」の一つとして、「デザインすること」もデジタルマーケティングの重要な要素の一つだと考えています。どれだけ優れた機能や最新の技術を取り入れても、機械的で無機質なアウトプットに集約されるのであれば、それが多くの人の心に響くことはありません。
しかしながら、自治体業務においては、必ずしもデザイナーに発注できるわけではなく、また、デザインに対する知見が豊富な人材も多くはないのではないでしょうか?その一方で、広報やマーケティングの部門を有する企業と異なり、職員一人ひとりが情報発信に携わる必要性が求められるため、デザインについて考えなければいけない機会も多くなるといえます。

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3. 自治体職員が考えるべき広報物デザインの要素とは?
では、「非デザイナー」である私達が、「デザインすること」に遭遇した際、まずは何を考えるべきなのでしょか?
デザインを考える際に重要なのは、「誰に」「何を伝え」「どう伝えるか」 という3つの視点です。この3つを整理することで、デザインの方向性が明確になり、より効果的な情報発信につながります。
① 誰に伝えるのか?|ターゲットの明確化
まず大切なのは、「この情報発信は誰に向けたものなのか?」をはっきりさせることです。自治体の広報物は、住民全体に向けたものもあれば、特定の年齢層や関心を持つ人に向けたものもあります。例えば、以下のようにターゲットを明確にすると、デザインの方向性が決まりやすくなります。ターゲットが明確になることで、フォントや色、レイアウトの選び方も変わってきます。「全員に伝わればいい」という考えではなく、具体的な対象をイメージすることが、効果的なデザインの第一歩です。
② 何を伝えるのか?|メッセージの整理
次に考えるべきは、「この情報発信を通じて、何を一番伝えたいのか?」です。情報量が多すぎると、重要なメッセージが埋もれてしまい、結局何が伝えたかったのか分からなくなってしまいます。情報を整理する際は、最も伝えたいことを一つに絞って考えると効果的です。「何を一番伝えたいのか?」を明確にすることで、情報を詰め込みすぎず、伝わりやすいデザインになります。
★最も伝えたいことを1つに絞る
例:「防災訓練の参加を促す」→参加方法や日時を目立たせる
例:「子育て支援サービスを知ってもらう」→ 利用メリットを強調する
③ どう伝えるか?
最後に、「この情報をどのように伝えるのが最も効果的か?」を考えます。自治体の情報発信は、単発のものではなく、住民と継続的な関係を築くための重要なツールです。そのため、伝え方に一貫性を持たせることで、「この自治体の情報は分かりやすい」「信頼できる」「親しみやすい」といった印象を与えやすくなります。
例えば、子育て支援の広報物なら「親しみやすく温かみのあるデザイン」、防災情報なら「信頼感と緊張感を伝えるデザイン」にするなど、内容に応じて適切なイメージを作っていくことが重要です。

4. 「苦手」という言葉で集約してはいけない
「デザイン」と聞くと、「センスがない」「苦手」と感じてしまう人は多いかもしれません。ですが、本当にデザインは特別な才能が必要なものでしょうか?
デザインとは、「情報を整理し、分かりやすく伝えること」 です。ウェブサイトの文章を分かりやすく構成するのと、適切なレイアウトを考えることは、本質的には同じ作業だといえます。どちらも「誰に」「何を」「どう伝えるか」を考えることが大切なのです。
「非デザイナー」であればこそ、「見た目」ではなく「伝えること」に重点を置く視点が重要です。「センスがない」と思考停止してしまうのではなく、「どうすれば伝わるか?」 を考えることが大切だといえます。情報を正しく届けるための工夫は、デザインに苦手意識がある人でも実践できるものばかりです。ちょっとした整理の仕方や見せ方を意識するだけで、伝わりやすさは大きく変わります。
優れたデザインは、特別な才能ではなく、「伝え方の工夫」 の積み重ねです。美しさよりも、「必要な情報が正しく伝わること」が大切だからこそ、見た目にこだわる前に、「この情報はどうすれば相手に伝わるか?」と考えることが、良いデザインへの第一歩なのではないでしょうか?

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