関係人口の拡大にデジタルマーケティングが必要不可欠な理由

関係人口とデジタルマーケティング

「関係人口の拡大」のために開催される「イベント」。しかしながら「イベント」ではすでに地域を知っている「関係人口化」されている人が多く来訪しますが、新規の関係人口(赤の他人)の獲得には繋がりません。関係人口の拡大になぜデジタルマーケティングが必要なのかを解説します。

目次

弊社のウェビナーや実際のご相談の中で「どうやってデジタルマーケティングで関係人口を増やすのか?」という質問は全く珍しくありません。過去の様々な自治体様の支援事例を踏まえても、弊社としては「デジタルマーケティングは関係人口を拡大する上で非常に重要である」と考えています。

もう少し踏み込んだ説明をすると「デジタルマーケティング以外で関係人口を『拡大』するのはほぼ不可能に近い」のです。

改めて、関係人口とは何かを表した以下の図を基に解説をしましょう。

関係人口模式図

この図を見てもらえれば分かる通り、関係人口とはざっくりといえば「定住人口(移住)」する前段階の、ある地域に対しての何かしらの心理的、金銭的、物理的関与がある状態の人々、と表現することができます。

つまり「関係人口を拡大(増やす)」ためには「現在全く関与がない人」「関与する」状態にしなければなりません。もっとストレートに言うのであれば「赤の他人」に「興味を持ってもらう」ことが必要です。
では現在の日本で「赤の他人」に「自分の自治体のことをを知ってもらう」ためには、何が必要でしょうか?

そう、答えはもちろん、デジタルマーケティングです。

ちょっと理屈としては強引に聞こえたかもしれません。ただ、これは弊社としても、弊社のクライアントの各自治体様をみても「仮説」ではなく「事実」です。

まず多くの自治体では「関係人口拡大のためにイベントを開催する」という事業が非常に多く存在します。しかし、ここで考えていただきたいのです。

「あなたの街にイベントで訪れる人は、もうすでに関係人口」なのではないでしょうか?

まず、日本中の多くの人々は、旅行で行くにせよ有名な観光地や、実際に旅行に行きやすいところから訪問先を選びます。わざわざ自分が知らない町のイベントを探し、そこに行く、という旅行の意思決定は通常の日本人には存在しません。

言い換えると「イベント」であなたの街を訪れる人は、すでに「〇〇市を知っている」「〇〇市に行ってみたい」という、何かしらの「心理的な関与」が最低限存在しているはずで、イベントを実施して来訪してくれるのは「すでに関係人口になっている人」であって「これから関係人口になる人」ではありません。
つまり、イベントは関係人口のレベルを上げる効果はあっても「拡大」には無力なのです。

ではイベント以外の告知方法を考えてみましょう。2025年現在、デジタル広告は日本の広告費用の半分以上を占めており、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の総合計すら上回る、情報発信のメインストリームになっています。

この状況下で、デジタル以外の情報発信に取り組んでも、その情報を目にする人は極僅かです。
さらに言えば、弊社のクライアント様自治体のほぼすべてが「自治体の公式ホームページ」「SNSアカウント」などをフルに活用して関係人口の拡大に成功している現状を踏まえれば、どう考えてもデジタルマーケティングが残されたほぼ唯一の解決策です。


さらに解説をしましょう。関係人口を拡大する「カテゴリ」を考えてみましょう。

  • 移住
  • 観光
  • ふるさと納税

これら三つのカテゴリのどれかの側面から、情報発信をすることで「関係人口」を拡大することになるはずです。

そして現在、移住も観光も、ふるさと納税も、人々の意思決定は「デジタル上」で行われます。

移住サイトを見ずに移住してくる人は、おそらくUターンか配偶者の関係という意味ですでに関係人口でしょう。移住サイトがない自治体に移住する人「赤の他人」はほぼいません。

ふるさと納税においても同様です。楽天やさとふるなど、数多ある「ふるさと納税サイト」で「ほかの自治体に目もくれずに」自分の自治体に寄付してくれる人はすでに関係人口です。まったくの「赤の他人」が自分の自治体に寄付をしてくれるようにしてもらうには、デジタル上でふるさと納税を検討する際に「赤の他人」に存在を知ってもらわなければなりません。

シティプロモーションアワードで金賞を受賞するなど、弊社が支援した自治体の中でも最も業界的に評価が高い「栃木県真岡市」様の関係人口拡大施策ですが、実際にデジタルマーケティング・デジタル広告を実施し、2022年から2025年までの3年弱で

  • 移住相談:9.5倍
  • 観光誘客:3倍
  • ふるさと納税:25倍

という伸長を実現しています。しばしば真岡市の事例にて「いちごが日本一の街だったから」という言葉をいただくことがありますし、それ自体を完全に否定はしません。

ただ、もしこれが「いちごイベント」に特化した関係人口拡大施策だったとしたら、どれだけ多くの人に「真岡市(もおかし)」という名前を正しく知ってもらえたのか、と考えてみてほしいのです。

「いちご日本一の街」だから「いちごのイベントだけ」をやったとしても、おそらく真岡市の名前を「新たに知る」人はほぼ増えていません。なぜならそのイベントに行く人は真岡市の近隣在住者、またはいちごに関心がある農家さんや飲食店など、ごく限られた人に限定され、さらにその中には「真岡市」をすでに知っている「すでに関係人口である人」が多く含まれるからです。

以上のように、関係人口の拡大についてデジタルマーケティングがほぼ唯一の解決策、という弊社の実例を交えてのご紹介でした。

かつ、この取り組みは「今その自治体に住んでいる人」の愛着・シビックプライド向上の効果があることも最後に述べたいと思います。

実際に弊社が宇都宮市で実施したアンケートでは「70代以上の高齢者」であったとしても「行政の情報」を取得するときに一番使っている媒体が「ホームページ」という回答でした。

自治体が実施する「公式」のアンケートでは、そもそも「広報誌の読者」がアンケートの母集団の大半を占めるため、回答に偏りが発生します。したがって「広報誌」が最も多く使われている情報取得の手段、というアンケート結果になることがほとんどです。

しかしながら、第三者パネルベースのアンケートでは、その傾向は全く出ません。つまり市が実施するアンケートでは「そもそも広報誌を読んでいる」ユーザー層、つまりすでに「その町に愛着がある人」が回答をすることがほとんどであり、現実的にそれは少数派です。

言い換えれば、今住んでいる「多くの日人々」にとっても「デジタルマーケティング」を使わなければ「関係人口」の後の定住、そして社会参画の土台となる「住みやすさ」や「愛着」「シビックプライド」などは醸成ができないのです。

「関係人口を拡大する」というその言葉の本質は「自分の街を知らない人からも、すでに住んでいる人からも愛される」ことにほかなりません。そして、そのためにはデジタルマーケティングが欠かせない取り組みなのです。

author avatar
sembear
sembear合同会社の代表・CEO。Overture、Yahoo! Japan、NTTレゾナント、Kenshoo、SIGNALなど、アドテクノロジー・マーケティングテクノロジー業界で要職を歴任。現在は広告代理店の人材育成事業をメインに担当。研修受講者の行動変容率が九割に迫るOne on One研修がライフワーク