「認知を獲得したい」は、ちょっと危うい──“名前を知られる”だけで満足していないか

「もっと認知を獲得したい」という言葉をよく聞きます。
でも、ここでいう“認知”とは、いったい何を指しているのでしょうか?

今回はそんな「認知」についてのお話です!

たとえば、「栃木県を知っていますか?」と聞かれて「聞いたことはある」と答える人も、「いちごが美味しい県ですよね」と言う人も、どちらも“認知している”といえます。
でもこの2つ、意味合いとしては大きく違います。

前者は“名前だけを知っている”状態。
後者は“特徴や価値とセットで理解している”状態。
どちらも「認知」の一種ではありますが、その中身がまったく異なるのです。

重要なのは、「認知にはいろんな“種類”や“あり方”がある」という視点。
名前を知っているだけなのか、魅力まで届いているのか。
それによって、次の行動に移す可能性もまるで違ってきます。

それなのに、「認知を取る」という言葉を使うとき、多くの場合この“中身の違い”を無視してしまっている。
それが、施策のズレや空回りの原因になることも少なくありません。

栃木県の認知

「なんか聞いたことある」
「名前は知っている」
一見すると選ばれるための“第一歩”のように思えますが、実はこの状態には注意が必要です。

たとえば、「栃木県」という名前を知っていても、それがどこにあって、何が魅力なのか知らなければ、思い出すきっかけにもなりません。
それどころか、他の似た地域と混同されたり、まったく印象に残らなかったりと、“あいまいなまま記憶の海に沈む”ことすらあります。

これは自治体だけでなく、商品やサービスにも言えることです。
名前は知られている。でも“なにかは知らない”。
そういう状態のままでは、次の行動にはつながりにくい。

「名前だけ知っている状態」は、確かに意味はある。
けれど、それだけで目指す“目的”を達成できるのか。
重要なのは、“どんな認知をしてもらうか”まで考えること。

名前を知ってもらうことが重要な場面もあります。
けれどその先に「どんな認知の中身を届けたいのか」を定めておかなければ、せっかくの認知が空振りに終わってしまいます。

「名前しか知られていない認知なんて意味がない」──
そう思ってしまいがちですが、実はそうとは限りません。

たとえば、日用品やコンビニ商品のような“手に取ってすぐ買えるもの”では、「なんか聞いたことある」という状態が、購入の後押しになることがあります。
いわゆるCPG(日用品などの消費財)では、「名前を聞いたことがあるから安心」と感じて選ばれる、ということが普通に起きます。

問題なのは、「名前だけ知ってもらえればOK」と、すべての施策で思考停止してしまうこと。
たとえば、移住や観光、ふるさと納税のように、“事前に情報収集や比較検討をしてから選ばれる”ジャンルでは、名前だけでは届きません。
むしろ「知ってるけど、なんかピンとこない」とスルーされることもあります。

大切なのは、「今回はどんなアクションを期待していて、そのためにはどんな認知が必要なのか?」という文脈ごとの設計です。

「名前を広めること」が正解のときもあるし、「名前と一緒に魅力の断片を届ける」必要があるときもある。
認知には文脈がある。だからこそ、目的との接続が必要なんです。

「認知を獲得したい」とよく言われるが、その“認知”とはいったいどのレベルを指しているのだろうか。
名前を聞いたことがある状態なのか。価値や特徴まで理解されている状態なのか。──実はこの違いが、施策の効果を大きく左右します。

重要なのは、「どの程度の認知が必要か」は目的によってまったく異なる、ということです。

たとえば、薬物乱用防止や交通安全などの公共啓発では、「見聞きしたことがある」状態に意味がある。
何かの拍子に思い出されることで、行動を未然に止める──そんな無意識への刷り込みが目的であるからです。

一方で、観光や移住、ふるさと納税のように「比較・検討のうえで選ばれる」ことが前提の領域では、「名前を知っている」だけでは不十分です。
その土地や商品にどんな特徴があるのか、自分にとってどんなメリットがあるのか、といった“意味のある認知”が必要になってきます。

このように、「名前が知られていれば十分」なケースもあれば、「名前+内容の理解」が欠かせないケースもあります。
そしてさらに、“内容の理解”とひとことで言っても、「どのくらい深く理解されているのか」にも段階があります。

たとえば「栃木県はいちごの生産が多いらしい」程度の理解と、「栃木県は“とちあいか”や“スカイベリー”といった品種を育てており、冬春の味覚のトップブランドとして全国にPRしている」という理解では、同じ“認知されている”でもまったく深度が違う。

つまり、ただ「認知を増やしたい」と言うだけでは、議論がかみ合わない。

どのような行動を目指しているのか

そのために、どの程度の理解が必要なのか

こうした視点が抜け落ちてしまうと、露出だけを増やして満足してしまい、効果につながらない“認知の空回り”になってしまいます。

だからこそ、「認知を取る」前に、「どんな認知が必要か」を考えること。
そして、その認知にどれくらいの“濃さ”を求めるのかまで意識すること。
それが、本当に届く発信をつくる第一歩になります。

「とにかく名前を広めたい」「もっと認知度を上げたい」といった言葉を、自治体の現場でもよく耳にします。
もちろん、それ自体が間違っているわけではありません。認知されなければ、興味も、比較も、行動も生まれないからです。

ただ、注意したいのは「認知」が目的化してしまうことです。

名前を“知ってもらう”ことは、あくまで何かの“はじまり”にすぎません。
にもかかわらず、「〇〇市の名前を広告で出した」「再生回数が〇万回を超えた」といった数字だけを見て、目的を達成したかのように感じてしまうことがあります。

でも、本当に重要なのは、その認知が“どのような認知なのか”という「質」の部分です。

  • ・名前だけ知ってもらえればいいのか
  • ・特徴まで理解してもらう必要があるのか
  • ・他と比較されたうえでどう思い出してもらう必要があるのか

こうした違いによって、「どんな認知を獲得すべきか」は大きく変わってきます。
つまり「認知」とは、すべて同じものではなく、目的に応じた“かたち”があるということです。

ここを見落としてしまうと、どれだけ露出を増やしても、「名前は見たことあるけど…」で終わってしまいます。
だからこそ、「認知を獲得したい」と言うときには、その先にどんな行動や変化を期待しているのか、丁寧に考えていくことが大切です。

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AdumaHiyuku