
2024年、「消滅可能性自治体」という言葉が再び話題になりました。
「なぜ若者が地元を離れるのか?」「なぜ東京ばかりに人が集まるのか?」
そんな素朴な疑問から、この社会課題の本質を掘り下げてみたいと思います。
目次
1. 消滅可能性自治体とは?
「消滅可能性自治体」とは、人口戦略会議(旧:日本創成会議)が2014年に初めて提示し、2024年にアップデートされた概念です。
これは2054年時点で「20〜30代女性の人口が50%以上減少すると推計される自治体」を指します。
つまり「子どもを産む可能性のある世代の女性が、今の半分以下になる自治体」を意味します。
この指標は当時から賛否両論を呼びましたが、数学的な側面から見れば、決して非現実的な話ではありません。
2. 簡単な数式で考える“自然減”
例えば、現在の日本の特殊出生率は約1.3です。
これは、出産可能な女性(x人)に対して、次世代が1.3x人しか生まれないということ。
理論的には、親2人から子が1.3人生まれるという前提では、世代交代のたびに人口は減少していきます。
さらに、出産可能な女性人口そのもの(x)が、年々減少していくと考えると、人口減少は加速します。これは例えば、1.3 × x × yⁿ(y < 1, n = 年数)という数式モデルで説明できるでしょう。この“指数関数的な減少”こそが、「消滅可能性自治体」という概念の土台です。
以下のグラフを見ていただければ「生まれる子供の数」が限りなくゼロに近づくことがお分かりいただけると思います。そしてこの低下が一定を超えると「町」を維持するコストが「税収」を上回り「自治体機能」が機能不全を起こす、つまり「消滅」するわけです。

3. 人口が減る理由:自然減と社会減
人口が減る要因は大きく2つに分けられます。
• 自然減:高齢化、病気、事故などによる死亡
• 社会減:住民が転出し、地域を離れること
自然減は避けがたい現象ですが、社会減はある程度“政策”や“環境”によって食い止めることができるのです。
では、社会減、特に“若年女性”が地方を離れる背景とは何でしょうか?
4. 若年女性は「都会に出たい」わけではない?
よく「東京の一極集中」が批判されますが、問題はそこだけではありません。
実際には、「東京に行きたい」ではなく、**「地元に戻りたくない」**という意識が根強いのです。
▼ データで見る「戻りたくない若者」
LIFULL HOME’S 総研の調査では、地方出身の30代女性の**40.5%が「地元に戻りたくない」**と回答。
また、男性よりも女性の方がUターン意向が低い傾向が見られます。
つまり、女性たちは自らの意思で「地元を離れたい」と考え、そのまま帰らないのです。
「寛容さ」が地方から若者を遠ざけている?
この現象には、地域社会の“寛容さ”が関係しているという指摘もあります。
LIFULL HOME’S総研のレポートによると「地元に戻る意向」と「その地域の寛容さ」には0.8を超える高い相関があるとのこと。つまり、「自分らしく生きられない地域」ほど、若者は帰らないのです。
5. なぜ東京は「寛容な街」と感じられるのか?
東京が特別な“PR”をしているわけではありません。実際に東京都自身の情報発信として「寛容さ」を地方にPRした事例は全くありません。ではなぜ東京は「寛容な街」としての磁場を持っているのでしょうか?
それは、民間企業による情報発信の力です。
大企業が行うCMや広告、SNSを通じて、“東京には多様な働き方・価値観がある”というメッセージが日本中に届いています。
つまり、寛容性のブランディングは民間企業の手で自然と構築されているのです。
6. 地方自治体の情報発信はどうなっているか?
さて、ここで一度、自分たちの自治体の情報発信を振り返ってみてください。
• いまだに紙媒体中心になっていませんか?
• SNSは運用しているが、目的が曖昧ではありませんか?
• Google検索で結婚支援や移住情報が、すぐに見つかりますか?
これでは、大企業の“東京ブランディング”に到底太刀打ちできません。
7.「デジタル」を使わずして、若者に情報は届かない
弊社にご相談いただく中で、「若者に情報が届かない」と悩む自治体の声をよく耳にします。
しかし、その背景には“情報の出し方”が若者の視点に届いていないという構造的な課題があります。
いま、大手企業はCDP(顧客データ基盤)やDCR(Data Clean Room)などを用いて、発信内容を緻密にチューニングしています。一方、自治体の情報発信は、残念ながら“感覚”や“手探り”のまま行われているケースも少なくありません。
この情報格差が、結果として若者の流出=社会減につながっているのです。
8. 結論:「やらない」はもう選べない
消滅可能性自治体を防ぐためには、次の3つが不可欠です。
- 本気で社会減に向き合う姿勢
- デジタルを学ぶ意志
- 発信を仕組み化する体制
sembearは、デジタルマーケティング人材育成の専門企業として、これまで多数の自治体と伴走してきました。
情報発信を学び、実践し、改善していくことで、すべての自治体で移住相談件数を右肩上がりに成長させてきました。
社会減は、止められます。
「難しそうだからやらない」という選択が、“消滅”を選ぶことになってしまう時代。
今こそ、行動するときです。




