自治体デジマケの本質課題:失われた四半世紀 Part2(デジタル広告編)- 25年前の意識がもたらす「広告ごっこ」

失われた25年:デジタル広告編

目次

前回のBlogでは自治体のデジタル情報発信・デジタルマーケティングが、おおよそ2000年のころの水準でとどまっている、つまり「この25年間の進化から取り残されている」ことを、主に「みんなの公共サイト運用ガイドライン」の観点から解説してきました。

今回はその「失われた25年」について、特に「デジタル広告の進化」の観点から解説をしたいと思います。

まずこの25年間における広告業界の最大の変化といえば「広告費用が最も投下されているのがデジタル広告になった」ということでしょう。すべて掲載するとあまりに長くなるので2020年以降のデータとなりますが、2023年現在でデジタル広告に投下されている広告予算は3兆3330億円となり、テレビとラジオ、雑誌、新聞の総合計を上回っています。

 媒体2020年2021年2022年2023年
 新聞3,6883,8153,6973,512
 雑誌1,2231,2241,1401,163
 ラジオ1,0661,1061,1291,139
 テレビ16,55918,39318,01917,347
 マス四媒体合計22,53624,53823,98523,161
 インターネット広告費23,61127,05230,91233,330

出典:電通「日本の広告費」 / 単位:億円

つまり、情報発信のメインストリームはすでにデジタルに置き換わっており、極論かもしれませんが、2025年現在において「情報発信をしよう」と考えるときにまず最初に選択するべきはデジタルになり切っている、といってもいいでしょう。

しかしながら、肌感覚で恐縮ですが、この「デジタル広告が最も使われている」という実感は、地方に行けば行くほど現実感が薄れます。というのは、デジタル広告市場はそのプレイヤーのほとんどが東京を中心とする「都市圏」での産業だからです。

正確なリサーチではありませんが、大手人材サイトであるエン・ジャパンで「Webマーケティング」の求人を検索すると、全206件中、一都三県で180件となります。つまりデジタル広告市場自体が異常なほど東京一極集中の産業であるといえるでしょう。その結果「デジタル広告」のトレンドは東京を中心とした都市圏を中心に進化をしてきたわけです。

つまり、日本の広告市場が「デジタル隆盛」になっているのは、あくまで「東京」から見たときの観点であり、地方では今まで通りの「オフライン主体」の広告施策が優先されている、ということに繋がります。それゆえに特に地方においてデジタル広告は「これから」という認識で見られている、というのが私の推論です。

しかし、それはあくまで「情報を発信する側」の論理であり、「情報を受信する側」から見るとどうなるでしょうか?

今から25年前、2000年といえば、まだ日韓ワールドカップが開催される前で、ホームページは確かに存在していましたが、ブロードバンド時代ではありませんでした。ADSLを発端とする「ブロードバンド・常時接続」は2000年以降急激に広がります。

これは人々の行動様式を変えるには十分なインパクトでした。インターネットでニュースを読み、お店を探し、そして買い物をするという現代にもつながるインターネットの行動様式と「ブロードバンド・常時接続」は無関係ではありません。

その一方でNTT docomoが「i-mode」を始めたのが1999年になります。そこから携帯電話の通信網は3G、4GLTE、そして5Gへと進化を遂げ、日本中どこにいても「常に高速にインターネットが使える」環境が整備されました。さらに追い打ちをかけたのが2008年のAppleによるiPhone3G発売です。このiPhone発売により「スマートフォン」は一気に広がりました。これによりパソコンがなくともより複雑な情報収集が可能になり、その結果として現在では、パソコンの世帯普及率は63.5%、スマートフォンの普及率は個人ベースで8割、世帯ベースで9割を超える状況になっています。

つまり、情報の「受信側」はすでにデジタルシフトが「完了」している状況なのです。

この「情報発信側」と「情報受信側」の齟齬が最も大きく発露するのが「行政が実施するデジタル広告」になります。

現状の行政のデジタル広告実施では「広告の表示回数」や「クリック数」をゴールにすることがほぼ100%でしょう。それ自体は「目的に合致」していれば何ら問題はないのですが、それらをゴールにデジタル広告を「運用」することは、プロの世界ではむしろ少数派になっています。

先述の通り「デジタル広告」はもはやメインストリームになっていますが、そのプロセスの中で「正しい使い方」が普及・定着をしています。いくつか例を挙げると

  • ・コンバージョン(サイト内における成果地点)を計測すること
  • ・その計測を広告媒体にフィードバックし自動最適化を活用すること
  • ・それに必要なタグ設置などはタグマネジメントを活用すること

など、東京を中心とした「一般的なデジタル広告」では「常識」とされている知識が、地方の、特に行政には普及をしないまま、しかし地方社会のデジタルシフトは完了してしまったわけです。

ここで問題になるのは、行政がデジタル広告を実施する場合、ライバルになるのは他自治体や地元企業だけではなく、東京に本社を構える企業でもある、ということです。

デジタル広告はユーザーの画面に広告を表示させなければ話になりません。東京を中心とした民間企業は、上述のデジタル広告のノウハウをすでに習得、あるいは習得していないにせよ、ノウハウを習得した広告代理店に委託をしたうえで広告を配信しています。そしてその広告配信は基本的には日本全国まで広がります。したがってその広告は地方で生活している一般的な人々の画面にも表示されることになるわけです。

しかし、行政のデジタル広告の理解は残念ながら「25年前」の水準にとどまっています。現在のデジタル広告が「入札制」で表示を決定する以上、25年前の知識水準でデジタル広告を活用しても、住民の画面に表示されるのは、ノウハウが習熟している東京を中心とした企業がメインになります。

2025年現在のデジタル広告のスタンダードを理解しないまま広告に取り組むのは「効果が出ない」ばかりか「税金の無駄遣い」にしかならないわけです。

以上のことから、弊社としては「行政のデジタル広告活用」については通常以上にコンサルティングのハードルが高くなることがほとんどです。

非常に厳しい言葉にはなるのですが「わが市はデジタル広告をやってる」というのは、業界に長くいるプロから見たら「先端的」でもなんでもなく「25年前の時代遅れ」なアプローチであることがほとんどだからです。実際にウェブサイトでの効果計測がないまま「デジタル広告を実施」するような仕様書は入札情報を見れはあふれかえってますし、そもそも現代的な「デジマケの前提」に到達していない環境で広告を実施しようとしているのがほぼすべての現状でしょう。

弊社ではデジタル広告の仕様書チェックや、プロポーザルのゲスト審査員など、行政がデジタル広告を実施する準備段階での支援のほか、アドバイザリーとして第三者視点から現状のデジタル広告改善などもお手伝いしております。

ぜひこの機会に「失われた25年」を弊社と取り返しませんか?

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sembear
sembear合同会社の代表・CEO。アドテクノロジー、マーケティングテクノロジーについての精密で正確な理解と、元来の理屈っぽい性分も相まってデジタルマーケティング業界に長年在籍。得意領域はマーケティング戦略設計と戦術実行までをしっかり落とし込むことと、その結果をデータとして明確に補足すること。暇があったら音楽制作に勤しむアドテクおじさん。