自治体CMSで重視したい三つのポイント

自治体CMSで重視したい三つのポイント

目次

実は難しい地方自治体のウェブサイト作成CMS選び

最近とある仕事で日本の地方自治体のウェブサイト制作におけるCMSを諸々調べる機会があったのですが、調べてみると自治体のウェブサイト作成CMSって意外にたくさんバリエーションがあってなかなか悩ましいところなのですよね。

自治体CMSシェア
出典:日本広報協会(グラフは弊社にて作成)

特に地方自治体のウェブサイト構築は「住民の方に見つけてもらう」ためにもソーシャルメディアとの親和性であったり検索エンジン対応との兼ね合いであったりも非常に重要ですし、同時に住民の方にとっての使いやすさも当然求めなければならない、とここまでは民間企業のサイト制作とそこまで極端に変わるわけではありません。民間企業のウェブサイトも将来の顧客たる生活者に見つけてもらわなければ意味がありませんし、サイトの使い勝手が重要なのは言うまでもありません。

ただ、民間企業でも使えるCMS(WordPressとか)と自治体CMSでまるで違う点が二つあります。一つ目は「自治体ウェブサイトのCMSはページ制作や更新する人がめっちゃ多い」という点、そしてもう一つが「情報のカテゴライズが非常に難しい」という点です。

弊社が今まで見てきた自治体ウェブサイト(ホームページ)の現状

弊社としては今までいくつかの地方自治体さんのウェブサイトを実際に分析し、改善施策に取り組んできました。そこで気付いた点としては、ほとんどすべての自治体さんのウェブサイトは実は「検索」からの来訪が非常に高い割合を示しているという点です。これは民間企業ではあまりないレベルで自然検索からの来訪が多いと言ってよいと思います。

これはコロナウィルスの蔓延ともおそらく無関係ではありません。ワクチン接種や自分の自治体での感染状況など、生命・生活に密着した情報を調べるとき、やはり住民の方にとって自治体のホームページはなくてはならない情報源ですし、もはやライフラインになっているといってもよいでしょう。となると、やはり自治体のウェブサイトにとって「検索エンジン」にきちんと認識され、住民の方に見つけてもらえるような努力がどうしても必要になります。

と同時に即時性のあるプッシュ型メディアでもあるソーシャルの活用も無視ができません。来訪の絶対数は検索にはかなわないものの、ライフラインとしての情報発信を考えると、やはり即時性ある住民の方への情報発信ではソーシャルメディアは必要不可欠ですし、ウェブサイト(CMS)とソーシャルメディアの連携もまた不可欠であると言えるでしょう。

そもそもCMSとは?

さて、そういった事情がある自治体のCMS選びですが、選ぶポイントを解説する前にまず「そもそもCMSとは何か」を理解しておきましょう。

まずCMSとは皆さんご存じのように「コンテンツマネジメントシステム」の略称です。もう少しかみ砕いて言うのであれば「インターネット上に公開するコンテンツ(≒ウェブサイト)を管理するシステム」ということができます。多くの人の理解ではCMS=ウェブサイト作成ツール、とみられていると思いますが、おおむねその理解で間違いありません。

ただ、もう少し本質的に考えるのであればCMSは「データベース」であるともいえます。これは自治体の職員の皆さんが「CMSでページを作る」という点から考えるとお分かりいただけるかと思いますが、CMSでページを作るときにどのようなURLで公開するかを選択することが多くのCMSでは可能のはずです。これは「自らが作ったページのデータを保存する置き場」を指定していることを意味しています。

したがってCMSを変える、となるとほとんどのケースでURLが変わってしまいますし、その結果「お探しのページは見つかりませんでした」という現象が頻繁に起こります。そしてこれは使っている住民の方にとっては非常にストレスが大きいものになってしまうのです。

自治体CMSを選ぶときに重視したい三つのポイント

以上に書いた特徴から、自治体さんがウェブサイトリニューアルなどでCMSを選ぶときに考えておくべき点があります。本当はもっといろいろあるのですが、今回は最重要ともいえる三つのポイントに絞って解説しましょう。

1. 組織ごとの投稿と発信情報のカテゴリをどこまで一致させられるか

これは民間企業のCMSではほぼ出てこない、自治体CMSならではの課題です。

上で書いたように、自治体のホームページではページの作成・更新をする人が非常に多くなります。これは自治体の各課がそれぞれページをCMS作成するからなのですが、そうなると「各課ごと」に発信された情報が蓄積されます。

ところが住民の方は市役所・町役場のどこの課(組織)がどのような情報を発信しているかなどは当然わかりません。あくまで「生活」の情報から「ゴミ出し」であったり「住民票」の情報を探そうとされるわけなので「ページのある場所」は「自分が思う情報カテゴリ」に存在してほしいと思うわけです。ところが、ウェブサイトを作る側である自治体さん側からすると、ページの作成や更新は担当しているそれぞれの課で実行することになるので「ページのある場所」が「組織ごと」になります。つまり「組織ごとの投稿」と「発信情報のカテゴリ」をうまく対応させなければ使い勝手が悪いサイトになってしまうのです

となると「組織」の在り方を(ある程度)無理やりにでも「情報カテゴリ」に合わせないといけなくなります。つまりCMS側で「組織」と「情報カテゴリ」についてのマッピング、または表示上の制御が入れられる機能が必要になるわけです。無論すべてを完璧にすることは難しいことは事実ですのである程度妥協も必要な部分ではありますが、ウェブサイトの構成は基本的にはカスタマイズすることが難しい領域でもありますし、やはり重視したいポイントではあります。

2. Google Search Consoleで送信するサイトマップを構築できる

これはほとんどの自治体CMSで実装可能ではあるかと思いますが、やはりサイトマップの送信は必要です。というのも、自治体さんの情報発信は上記のコロナウィルスの話なども含め、住民の方の生命・生活に直結するものが多く含まれます。

また、ほとんどの自治体サイトにおいて来訪のほとんどを占める検索エンジンでの表示やクリックについてのデータを収集し、より住民の方に向けたページ作りや改修などを行うためにもサイトマップを送信するGoogle Search Consoleの活用も重要になります。

となるとページを作った時や更新した時にできるだけ早く検索結果に反映させたいですし、さらに来訪のほとんどが検索であることを踏まえるとGoogleに正しくサイトを認識してもらうためにもサイトマップの送信がやはり必要だと言えるでしょう。

3. OGP/Twitter Cardが自由に設定できる

コロナウィルスのように刻々と状況が変わる情報を扱う際には、サイトの最新情報をできるだけ速やかに住民の方に届ける必要があります。

となるといわゆるプッシュ型メディアとしてTwitterなどで情報を発信したいところなのですが、住民の方は自治体アカウントだけをフォローしているわけではないので、どうしても緊急情報であっても「埋もれる」ことがあるわけです。

したがってできるだけソーシャルメディアにおける自治体サイトの「視認性」を高めるために、もっとはっきり言えば自治体としてのお知らせがタイムラインの中で埋もれてしまわないために、いわゆるOGPやTwitter Cardなどのソーシャルメディアでの表示を制御する要素が自治体CMS内部で設定可能であることが非常に重要になります。

自治体の情報発信は「改善」できる

先日事例として発表させていただいた通り、弊社は現在栃木県宇都宮市様と「デジタルでの情報発信の改善」に引き続き取り組ませていただいております。

宇都宮市様との取り組みについてはこちらのリンクをご覧ください

こちらの事例は「しっかりと数値を分析すれば情報発信は改善できる」という非常にわかりやすい事例です。弊社としてもGoogle Analytics、Twitter Analytics、Search Consoleなどのデータを集約し分析環境を整備することで確実性のある情報発信の改善を支援させていただいたと考えております。と同時に、宇都宮市様のCMSが上記にあるサイトマップ送信もOGP/Twitter Card設定も可能だったからこそこの改善施策を実行することができた、ということもまた事実です。

自治体の情報発信はCMSがすべてじゃない

さて、現実的に今のCMSの機能に課題がある方もいらっしゃるかとは思います。上に書いたことは自治体CMSを選ぶうえで重要な要素ではありますが、と同時にCMSがすべてではない、ということも併せてお伝えしておきます。

現実的にはサイトマップの送信であったりOGP/Twitter Cardの設定については工夫次第である程度カバーはできますし、なによりページ作成における言葉の選び方、文章の構成による読みやすさなどの「ページの内容」次第でサイトの使い勝手は大きく変わります。CMSそれ自体は非常に便利な道具ではありますが、やはりページを作成される職員の皆さん一人一人の「情報発信における創意工夫」に勝るものではありません。

弊社としては自治体における情報発信の効果改善を実現する分析やレポーティングはもちろん、実際に施策を実行する上で必要な技術要件などのコンサルティングも承っております。関心がある方はぜひ下記ボタンよりお問い合わせくださいませ!