事例紹介:宇都宮市役所様「デジタルを活用した情報発信への取組について」

sembear合同会社では、2022年1月〜3月の3か月間にわたり、宇都宮市広報広聴課のデジタルを活用した「攻めの情報発信」の実現にむけたアドバイザー業務を実施致しました。

宇都宮市様

■宇都宮市広報広聴課の想い:市民の皆様へ情報を伝えたい「攻めの情報発信」を目指して

宇都宮市広報広聴課の皆様から、私達が最初に頂いたご相談は「攻めの情報発信」を行うためにはどの様に取り組めば良いのかという内容でした。

その背景には、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う情報需要の高まりや、宇都宮市の目指すスーパースマートシティの実現に向け、市民の方と一緒にまちづくりを盛り上げていきたいという意図がありました。市民の方に興味を持ってもらいたい、行動を起こしてもらいたい、今まで以上に積極的に情報を伝達する重要性がより一層、高まっていたのです。

そこで従来活用してきた広報紙や公式ウェブサイトの運用に加え、新たに「デジタル」を軸とした広報活動を強化することで「攻めの情報発信」を目指すことになったのです。

■情報特性に応じた発信方法の選択

さて、皆さんは「攻めの情報発信」と聞くと、どのような状態をイメージするでしょうか?

情報発信の手法には主に2通りのパターンがあります。

ひとつ目はユーザーの目に付く場所に情報を配置することで情報を届けるPUSH型情報発信です。情報の緊急性に応じてリアルタイムで情報を発信し、ユーザーに意図的に情報を発信する事が出来ます。

もうひとつは、ユーザー自らの意思で情報を探し取得するPULL型情報発信です。ユーザーが興味を持ちそうなコンテンツを事前に準備しておくことで、「情報が欲しい」と思ったタイミングでタイムリーに情報を受け取ることが出来ます。

これまでの広報広聴課ではPULL型の情報発信の強化に取組んでいました。ウェブサイト情報の充実により、生活・生命に関わる情報を確実に取得出来る環境の構築に重点を置いていたからです。「守りの情報発信」と表現できるかもしれません。

一方で、情報そのものを認知していない市民の方にどの様にアプローチするか、特に市の政策をより多くの人に知って欲しいという点が課題となっていました。PULL型メディアの強化では、情報への感度が高い市民の方が容易に情報を取得できる環境を構築することができます。しかし、情報への興味関心が低いユーザーへは情報源が意図的に情報を発信し、気づいて貰う必要があるのです。つまりは「攻めの情報発信」です。

■情報をユーザーに見つけてもらうには

私たちは広報広聴課が情報発信に活用しているTwitterの運用方法の見直しからスタートしました。

Twitterなどに代表されるPUSH型メディアの特徴として、情報の流れやすさが上げられます。情報に興味がないユーザーに対し、いかに情報を視界に入れ「自分ごと化」してもらうかがポイントとなってきます。

そこで、情報がユーザーの目に留まるように投稿内容に合わせた画像の挿入や、文言の修正等を実施しました。実際の改善事例を見てみましょう。

画像挿入による可視領域の拡大や、絵文字表現でターゲットとしていた親子層が親近感を抱きやすくなったことで、ユーザーの反応が高まり、エンゲージメント率が上昇したことが伺えます。一方で、自動投稿についてはあまり反応が得られていません。ユーザーに合わせた投稿作成を行うことで、目に留まりやすく訴求率が向上していることが分かります。

※ SNSにおけるエンゲージメントとは、「いいね」「RT」「コメント」など、ユーザーからのリアクションのことを指しています。

また、広報広聴課で運用しているTwitterの特徴として、公式WEBサイトの更新に合わせ、Twitterが自動投稿されているという点にありました。そこで重要になるのがOGP設定の見直しです。OGPとは「Open Graph Protcol」の略です。URLをソーシャルメディアでシェアした際に、設定したウェブサイトのタイトルやイメージ画像、詳細などを正しく伝えるために使用されます。

OGP設定をしておくことで、SNS上でURLが共有されたとき、その投稿で何を伝えたいかを明確にすることができます。また、ユーザーに合わせた投稿内容を設定することで訴求率の向上を見込むことができるのです。

広報広聴課のTwitterでのOGP設定では、デフォルトで設定されている「Summary Card(サマリーカード)」を使用していました。これを「Summary Card with Large Image(大型画像付きサマリーカード)」に変更することで、可視領域を広げることができます。

今後、CMSで個々のページに合わせた情報を設定することで可視性を高め、よりユーザーに情報を見つけてもらいやすい環境を構築することができるでしょう。

■市民の方が求めている情報ニーズを探る

次に取り組んだことは情報が取得しやすい環境を整備するということでした。

私達が目的の情報を検索してもたどり着かない場合、どのような要因が考えられるでしょうか?ユーザーが情報にたどり着かない要因として、3つの状態を挙げることができます。

  • 看板がない
  • ページはあるが欲しい情報がない
  • 情報が複数ページに分散している

初めて行くスーパーでの買物をイメージすると分かりやすいかもしれません。お目当ての商品が置いてある棚が分からず迷子になってしまったことはないでしょうか?また、棚を見つけても商品が置いてなかったら?おススメ商品や割引商品が別の場所に置いてあったら…?

情報取得の際にも同じことが言えます。PUSH型メディアで情報に興味を持ったユーザーがウェブサイトに訪問しても、そもそも情報が充実していなかったら…?また、情報が煩雑に置かれていたら…?誰もが直ぐにウェブサイトを離脱することは想像に難くないでしょう。PULL型PUSH型メディアの相関性を高めることも「攻めの情報発信」の重要な要素なのです。

今回の取組みではどのような情報がおいてあるのかを明確にユーザーに伝えるために「看板を立てる」作業を行いました。

「看板」=「情報の見出し」を整理するには、ユーザーが求めているイメージを把握することが重要です。私達はユーザーが求めている情報を把握するために、Googleサーチコンソールを活用した情報ニーズの分析を実施しました。Googleサーチコンソールでは様々な分析が可能ですが、以下のような項目についてユーザー行動を分析することができます。

  • どのような検索クエリからサイトに訪問したか
  • 検索エンジンに登録されているページごとの検索クエリ
  • 検索クエリごとの表示回数とクリック数・率

   ※「検索クエリ」とは、ユーザーが打ち込む検索キーワードのことを指して使います。

それぞれの項目を把握・分析することで、ユーザーの情報ニーズをいち早くキャッチし、それに合わせた情報発信を行うことができます。

■改善と実績

特に改善が見られたのは、「コロナワクチン接種3回目」の情報発信に関してです。

コロナワクチン3回目接種の周知が始まった時、Googleサーチコンソール上では「ワクチン 接種 3回目」関連のキーワードの表示回数が急増し、情報需要の高まりが見受けられました。しかしながら、表示結果から公式ウェブサイトへの遷移率は0.47%と、あまり良い数字ではなかったのです。

そこで、3つの手順で発信情報を見直し。

1、ユーザーが検索しているキーワードの把握

Googleサーチコンソール上では「ワクチン 接種 3回目」関連のキーワードの表示回数が急増し、情報需要の高まりを把握。

2、キーワードに基づく見出しの作成ページタイトル

「ワクチン 接種 3回目」で検索すると、「1・2回目(初回接種)の新型コロナワクチン接種・3回目に関して」のページが検索結果に表示されていたが、Googleサーチコンソール上では1回目・2回目の検索は落ち着いている傾向にあった。ページタイトルを「3回目(追加接種)の新型コロナワクチン接種(5月16日現在)」に変更、また情報更新日を入れることで最新情報だと分かるよう修正した。

3、キーワードに基づくコンテンツの整理

1回目・2回目のワクチン接種と、3回目のワクチン接種の情報が同一ページ内に掲載されていたため、1回目・2回目と3回目では異なるページで情報を発信。

▼修正後の検索結果表示

これらの取組みにより表示結果から公式ウェブサイトへの遷移率は5.03%へと大きく改善しました。タイトルでページの内容をユーザーのニーズに合わせ的確に伝えたことで、クリック率が高まったといえます。しっかり「看板」を設置することで、迷子にならず最短ルートで情報に辿り着くことが出来るのです。

▼修正によるクリック率の動き

■分析に基づくデジタルマーケティング

デジタルと聞くと非常に機械的なイメージを抱きますが、実は違います。デジタルは人と人を繋ぐ手段のひとつだと言えます。面白いのはそのコミュニケーションの度合いを数値で計測できるという点です。

  • どの情報が必要とされているのか?
  • 誰が見てくれているのか?
  • 誰に情報が届いていないのか?(これは非常に難しいですが仮説を立てることは可能です。)

自分達が発信した情報に対し、分析し改善することができます。これは、良質なコミュニケーション手段を選択できることを意味しています。

デジタルでの情報発信と自治体の情報発信の相性が良い点はそこにあるのではないでしょうか?自治体の情報発信に関して、一般企業と大きく異なる点は明確な利益目標が存在しないという点です。生活・生命に関わる情報を司る市役所では、興味・関心に関わらず、幅広く、漏れなく、市民の方に正しい情報を伝達する必要があります。データに基づいた分析改善を繰り返すことでより速く正確に情報を伝達することができるのだと思います。

■sembearの想い:デジタルマーケティングで地域活性化を

今回の取組みについて、良い改善結果が得られた根本には、職員の皆様の積極的なデジタルマーケティングの推進姿勢にあると思います。知識や情報だけが先行しても改善は上手く行きません。宇都宮市広報広聴課職員の皆様の「市民の方に情報を届けるにはどうすればいいのか」という思いから、積極的に改善・分析を繰り返し実施したことが今回の報告内容に繋がっていると思います。

弊社では創業以来「デジタルマーケティング人材の育成」をビジョンに掲げて取り組んできました。デジタルマーケティングにおいて知識を踏まえ、結果を改善して行ける人材がいるということは大変貴重なことだと思います。sembear合同会社では、今後もデジタルマーケティングを活用して地域を盛り上げていこうという、自治体の方々向けの取り組みも積極的に行っていく所存です。