“わかりやすい”市公式ホームページへの道|新人広報担当が挑んだ取り組み事例インタビュー

真岡市橋本さんの市公式ホームページ改善のインタビュー

2023年、広報広聴係に配属された栃木県真岡市秘書広報課の橋本さん。ミッションは「市民にとってわかりやすいホームページの実現」。一体何をすると市民にとってわかりやすいのか?具体的に何に取り組めば良いのか?職員ひとりひとりの意識を変えていくには・・・?
実際の取り組み・試行錯誤についてお話を伺い、とても現場感溢れるインタビューとなりました。


橋本 佳さん

KEI HASHIMOTO

栃木県真岡市 秘書広報課。市役所勤務7年目になり、生涯学習課・水道課・学校教育課にそれぞれ2年ずつ配属された後、学校教育課で広報誌に携わったことをきっかけに秘書広報課を希望し現在はホームページなど市広報に関わっている。


ホームページラボの発足とホームページ改善アドバイザリーの実施

秘書広報課としては、「市民の方に情報を正確に発信する」というテーマがあり、ちょうど前年に市公式ホームページのリニューアルが完了していました。私が配属された今年度は、リニューアルして終わりではなく「市民にとってわかりやすい」ホームページの運用に取り組むことになっていました。

私自身は、ホームページ運用の担当になったばかりの頃、ページ作成者側の視点(CMS1を操作する裏側)を意識し「ページを作成する人がアクセスしやすい」また「引き継ぎもしやすい」などに重きを置き、整理整頓ができればいいかな、それに向けてどうやって改善を進めていくのが良いか、と考える日々でした。

一番最初は市公式ホームページ内で各課が実際に作成しているページを、外部のアドバイザーを交えて改善していく「アドバイザリーセッション」という研修を行いました。

前年にホームページ運用に関するガイドラインを作っていたので、そのガイドラインの内容に沿い、皆で「見やすいタイトルの変更」や「画像の追加」など直していきました。どのページも毎回同じようなところを指摘していたことが印象に残っています。

アドバイザリーセッションをやってみて、「市民にとって分かりやすい言葉になってますか?」とか、「そもそもX(twitter)などソーシャルメディアでプッシュをしていますか?」などそういったところが色々と見えてきたのが最初です。

5月くらいから7月まで、アドバイザリーセッションを行ってみたときに、職員にとって最初からガイドラインの項目をすべて網羅していくというのは正直難しいかも…どうすればいいんだろうと悩んだ部分も 実はありました。

はい。よく「市民目線で」とか「市民に伝わるように」と言いますが、ここまでの流れを振り返り、じゃあ具体的にそれはどういうことなのか?と議論を重ねました。その中で改めて、Google Analytics2やGoogle Search Console3でホームページのデータを活用して、方針を見直すことにしました。

今振り返ってみても、みんな正解を見たことがない状態で、あのまま「市民目線のホームページとは?」を言語化せずに進めていたらうまく回らなかっただろうなと思います。

課題を浮き彫りにし、色々なデータを見て言語化を進めることで、今までは全然思い当たらなかったことにも気付いた大切な期間でした。

やはり一番は、「市民が真岡市のホームページを見る時に各ページへ直接たどりつくのが8割、トップページから見ているのが2割というデータ」です。

このデータが示すように、市民は、真岡市のホームページのトップを検索し、そこからクリックして情報を探すのではなく、はじめからGoogle検索などで直接各ページへアクセスするのが主体だということです。この考えは、今までCMSでページ編集することだけを考えてきた側としては、全く意識してこない部分でとても驚きました。

このデータの話をされたときは、ホームページ改修の際もトップページ視点での話が多く出ていたなとドキッとしてしまいました。土台となるデータが頂けたのは良かったなと思ってます。

はい、そうですね。考えたことは3つあります。

ホームページ改善の方針変更も全庁的に理解してもらうことが必要だったので、全課長に集まってもらい「ホームページの重要性 研修」と、それを受けて真岡市ではどのように取り組んでいくかについて説明をしました。ホームページを作成するメンバーレイヤーだけでなく、上長レイヤーもしっかり巻き込むことが重要だったんだなと改めて感じます。

まずは、データから明らかになった“市民の8割はTOPページからではなく、個別のページにGoogleなどの検索からたどり着いている”ということで、検索したときの「発見しやすさ」を向上しよう!ということになりました。そこで、「ページのタイトル改善」にフォーカスして、ワークショップを実施することにしました。

全課を対象に、全課長と職員1人の2人1組で参加してもらうようにしました。ページ作成者と、ページの承認者が同じ考えで進められるといいなと思ったんです。また、ワークショップ自体は、別の課ともグループを組んで進めてもらい、事業理解やアドバイスも、お互いにできるといいなと思っていました。

実際には、真岡市で計測している検索状況のデータも使いながらですが、基本的に次の3ステップで考えてみようということで進めていきました。

はい、実際の数値にも成果として表れており、中でも特に印象に残ってるタイトルは、妊産婦さんの医療費についてのページです。

この「妊産婦」という単語がそもそも行政用語だからちょっと使わない方がいいんじゃないの?実際に市民の方が検索するときって「妊娠中 医療費」とか「産後 医療費」とか「医療費 補助」とかじゃないか?という議論がグループでなされ、「妊娠中から産後までの医療費を補助します」というタイトルに変更になりました。

実際に数値もこんな風に変化がありました。

やはり、上記の例のように、実際に市民の方の検索する場面をイメージして落とし込むと、見やすいページタイトルを付けることができるのかなと感じます。市民の方が実際に使っている言葉を考えてみる。ただ、実際そこが結構難しいところですよね。

私は、ワークショップ実施の前に「夏の1000本ノック!」として、市民目線でのタイトル変更の練習をたくさんしたことと、ワークショップでいろんなタイトルを見たことで、「これはちょっと市民が使う言葉じゃないかも」と感じるようになりました。

今回のワークショップでは、課長・メンバーと、別の課も一緒にグループを組んで行ったことで、ディスカッションも想定以上に盛り上がっていたのではないかと思います。

真岡市ホームページワークショップ

自分の担当している課とは違う、初めて見るページを取り上げていたということもあり、そもそもこの事業がどういうことをやっているかを聞き、情報共有をしながらワークショップができたことも盛り上がった理由の一つかなと思います。

今回の主眼はタイトルの変更でしたが、改めてその対象のページを読むことで、「この情報わかりにくくない?」などページの中身にまで意識が向いていたのも良かったなと思いました。

ホームページを更新する際の「チェックリスト」の作成です。方針でいうと③の情報品質の向上にあたる部分です。CMS上のいくつかの項目について入力しているかどうかで、ページを見たときの印象がばらついたり、わかりにくくなっていることがありました。

例えば、ページを補足する説明文(ページ概要文)があったりなかったりと、SNS出力した際にわかりやすさにばらつきがあったように思います。こういうところを「人によって」ではなく、仕組みによって揃えていきたいな、と。

そうなんですよね。毎年それなりの数の新人が入ってくる中で、情報発信のやり方をすべて揃えていくというのは難しいことだなと感じます。そこで思ったのが、私も以前からあるといいなと思っていた「チェックシート」の作成でした。

当時はCMSのマニュアルはありましたが取扱説明書のようなもので、できることは全て書いてありますが、どれを設定すれば間違いないのかみたいなのは載っていない状態でした。「必要最低限の設定項目がシンプルに分かるもの」があるといいなと常々思っていました。

また、どの職員もメインの担当業務があるため、広報に時間をかけるとなると難しくなってきます。時間がない担当者たちに、検索の大切さや市民目線でのページの重要性を、少ない時間でしっかり伝えるにはどういう手順がいいのかという点も課題の一つでした。

しかも新人も入ってくるので、一回の研修だけで何とかなるものではなく、「形に残しておかないといけない」という思いから、チェックシートの作成に取り掛かりました。

自分自身も後輩に教えるとなった時に、「こう設定すればいいんだよ」というのを口頭で教える事もあったので、現在は「マニュアルを見てね」と言うことができるようになったのはとても良かったなと思っています。

本当に最初の頃は、各職員がホームページへの課題感や、改善する必要性を感じていなかったかもしれません。こちらとしても「より市民にわかりやすいように」と思っていても、どこが良くないところかを具体的に言語化できていなかったです。

作成されたページを見て、どこをどう改善すればいいのかも分かっていない状態で、その課題を見つけるための考え方・ツールといったところも整備されていなかったなと思います。

実務に落とすことを考えていく中で、ページタイトルに特化したワークショップをやろうとか、チェックシートで「サムネイル画像を入れよう、ページ概要を入れよう」とか、データの整備など、実務に即して具体的に進められたのは、良かったなと思います。

そうですね。課長さんも含めて意識が少しずつ変わってきたのかなと感じています。課長から差し戻しをされたり、タイトルが少し違うんじゃない?と言われたんだよ、という話は担当者から聞きました。

あと担当者からも「こういう設定しなくてはいけないという事を知らなかった」と声をかけてくれることもありました。一連の取り組みを通して、やるべきことの整理ができたかなと感じましたし、その最低限のラインに少しでもみんなを立てるようにできたのではないかなと思っています。

チェックリストって他の事業でも文字だけで見にくいことがほとんどだったのですが、どう反映されるのかを画像も入れて作っていけたことが、わかりやすさに繋がっているなと感じています。

意識向上の部分では、担当者から「ちょっと教えて」という声掛けがちょこちょこと起きましたね。そもそも触っていなかったから教えてくれとか、うちはどこ見ればいいのとか、そういう質問も増えてきたのは嬉しいところです。

ある課では、ページのタイトル全体を見直そうとしてくれたり、全体のページ概要を全部入力してみようとか、伝わりやすい言い回しに変えてみる、などの申請もいくつか来ました。今までの申請だったらタイトルだけ変更するというのは来たことがほぼないです。タイトルを変えてみましたとか、そういうのは今年になってからかな。

今年度やってきたことは、まず「自分たちの改善しなくちゃいけない課題点」を知ることだったと感じます。意識の醸成と改善方法の羅針盤を知ってもらえたのかなという感じなので、次はそれを続けていくことがやっぱり大事です。

全体を見直していくにはもう少し時間がかかると思いますので、今後も継続するための仕組み作りをしていきたいなと思います。

自治体あるあるかもしれないですけど、担当者が変わると結局元に戻るというのはよくある話なので、ツールやチェックシート、考え方などは引き継いでいけるようにしたいですね。引き続きTapClicks4(ダッシュボードツール)も活用していきたいと思っています。

ここからは完全に個人的な話なんですけど、ちょっと遊びの部分があるラボみたいなのも想定していて。若手でもやる気があるという人はいっぱいおり、そういう人がもっと質問しやすい環境にできたらいいなと思っています。私自身過去に聞きづらいなと思ったこともあるので、担当者にもっと気兼ねなく相談ができるような状態にしたいと思ってます。


今回は真岡市の広報で市民に「わかりやすいホームページの実現」に尽力されている橋本さんをゲストに、実際に行った取り組みについてお話を伺いました。自治体でのデジタル活用の最初の一歩を踏み出すきっかけとなりましたら幸いです。

  1. CMS:ホームページのページやコンテンツを作成できるシステム ↩︎
  2. Google Analytics:ホームページにどんな人が訪れているのか、サイト内でどんなページを見ているのかを分析して、ホームページ改善へと繋げることができるアクセス解析ツール ↩︎
  3. Google Search Console:Googleの検索結果上に自分のホームページがどんなキーワードで何回表示されたか、検索順位は何位か、何回クリックされたかなどを調査できるツール ↩︎
  4. TapClicks:sembearで提供している運用型広告・デジタルマーケティングの「レポーティングツール」 ↩︎