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「ゴール」をちゃんと決められないことが最大の失敗理由
今回は早々に結論を書かせていただきます。自治体や行政組織のデジタルマーケティングが「失敗」する、または「上手くいかない」理由のほとんどは「ゴール」を明確に決めていないことだと言えるでしょう。
弊社の場合、自治体さんだけではなく広告代理店さんや一般の企業さんとも取引があるわけですが、そこでたまに質問をされるのが「自治体さんの場合、数値目標(目標コンバージョン数)を立てにくくないですか?」というやつです。
確かに民間企業であれば売上額や会員数など、比較的容易に目標数値を定めることが出来ますが、自治体や行政組織の場合、そういったゴールが明確でないことが多く、しばしばデジタルマーケティング(特にネット広告)の実施の時には具体的な目標数値を定められていないことが多いわけです。
ただ、実は自治体デジマケにおいては、それこそが大きな落とし穴になりがちです。
「ゴールを決められない」と思い込む罠
実際のところ弊社が取り組む自治体デジマケにおいては「ゴール」をかなり細かく設定しています。無論民間企業のような「問い合わせ」や「販売」的な要素であれば最もわかりやすいのですが、そうでなくともランディングページやウェブサイト上の何かしらの行動を細かくイベント設定し、最も最終的なゴールに近いイベントを定義したうえで実施をしています。
さて、ここが実は今回の最大の問題です。これは弊社が「計測」について一定水準以上の知識があるからこそ言える話、なんですね。
多くの行政・自治体デジマケの現場では「何の数字が計測できるのか」「どうやって計測できるのか」という技術知識・計測設定のノウハウが十分でないことがほとんどです。つまり「計測の方法を知らない」ために「ゴールを決められない」と思い込んでしまうわけです。
もう少しわかりやすい例を出しましょう。100m走をイメージしてもらえるとわかりやすいのですが、我々には時計やストップウォッチなど様々な「時間を計測する道具」があります。ほとんどの自治体デジマケの現場では「時間を計測することはできない」という思い込みにより「とりあえず走ってみて速そうかどうか」で成果を測っているようなものです。言い換えれば「時間を計測する道具」をしっかり準備できる、そしてスタート地点とゴール地点を精密に計測するセンサーがあり、そのセンサーと計測の道具が連動するので厳密な順位を決められる、という「計測の仕組み」がわかっていれば、100mを走った時に誰が一番早いかがわかります。
しかしながらその計測の仕組みがわからない場合「とりあえず走ってみる」以上の結果はわからないわけです。そしてそれは「とりあえず広告をやることが目的」という「手段の目的化」につながります。
「広告をやることが目的」にしないために
実際弊社と栃木県デジタル戦略課さんとの仕事の中では「計測」と「最適化」についての議論が非常に高頻度に行われます。というのも、昨今のデジタル広告は「適切なアカウント設計」と「適切なゴールの設計」を「適切な計測設定」で計測して最適化をかけられるか否か、が成否を分けるからです。
だからこそ栃木県デジタル戦略課の皆さんは自らがGAをさわり、GTMでのイベント設定能力を内製化するに行ったわけですね。
しばしば行政・自治体のデジタルマーケティングにおいては「広告がたくさん表示された」ことが成果であるように語られがちです。しかしながら「広告が表示される」ことはあくまで手段の一つであって目的ではありません。
例えば移住施策であれば「移住の広告を見た」後に「移住サイトを訪問」して「様々なページからその町の情報を集め」た後に「移住相談窓口」へ問い合わせをするはずですが、前出の「広告が表示された」というのはその後に登場する「移住サイトへの訪問」や「情報収集」や「問い合わせ」とは何ら関係がありません。
もっと言えば「移住の広告」は「移住者を増やす」ために行うものである以上「問い合わせ」が増えなければどれだけ「広告が表示」されても意味がないわけです。
このような「ゴールをどこにするか」という議論がしっかりなされない自治体デジマケの現場は非常に多いですし、そうなってしまうと「予算が溶ける」という現象につながってしまいます。
「やり方」を知っているからこそ「何をやるか」を決められる
Why-What-Howの順番で考えるべきである、という言葉があります。それ自体を私は否定しませんし、私自身「なぜやるのか(Why)」を考え「なにをやるのか(What)」を決めたうえで「どうやるか(How)」を決める思考の持ち主ではありますが、それは「どうやるか(How)」を疎かにしていい、というわけではないことも強く思っています。
というのも、上記にある「ゴールを決められない」問題は「どうやるか(How)」の知識が欠落していることにより、適切な「なにをやるのか(What)」が決められない問題であると置き換えられるからです。
Google Tag ManagerやGA4などの適切な使い方、タグの発火制御についての一定の知識、つまり「How」がわかっていない人は「どんな数字が取れるのか」がわかりません。その人にとっては「何が計測できるか知らない」以上、既に分かっている「広告が表示されればいい」であったり「クリックされればいい」という非常に表層的な判断しかできないわけです。
税金を使って実施する自治体デジマケだからこそ、是非この「ゴール」を定めるための「How」を大切にしてほしいと常々思っていますし、そういった自治体デジマケを弊社は今後も推進していこうと思っています。ゴールの決め方や計測の設定方法などのご相談は以下のフォームから承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。