広告代理店における「運用型広告の司令塔」の重要性:その2

「運用型広告の司令塔」が今必要な理由

前編:「広告代理店における『運用型広告の司令塔』の重要性」についてはこちらをどうぞ

某代理店の育成担当者との会話から

弊社のOne on Oneを導入いただいている某大手広告代理店の育成担当の方と、なぜか割と夜中までチャットで雑談をしていたのですが、そこでの会話が非常に示唆に富んでいたのでちょっとご紹介です。

フロントというか営業というか、その役回りの人のスキルがほんと必要になったよね

確かに分業増えてるからディレクションの能力が必要になってる印象はある

何気ない一言ではありますが「分業が増えているのでディレクションの能力が必要になっている」という言葉は、実はかなりずっしりと来る一言ではないでしょうか?

分業体制についての考察

多くの広告代理店において、おそらく広告の運用体制は「分業」が定着していると思います。統計を取ったわけではありませんが、フロントと運用、という分業もさることながら、各プラットフォームごとに運用者をアサインする、いわゆる「プロダクトスペシャリスト」的な分業になっているケースも少なくないでしょう。

それ自体がいいとか悪いとか、という話ではありません。広告代理店というビジネスモデルを考えれば分業化を進めてスケーラビリティを出すことは経営として取るべき選択肢の一つでしょうし、その一方で上記にある「分業が増えている」ことにより「誰かが全体を統括して指示を出す」ことが必要になってしまうこともまた事実でしょう。

分業体制であればこそ、広告代理店はそのサービスを提供できているわけですが、同時にその分業を一つにまとめる、いわゆる「サイロ化を阻止する」人材がどうしても必要になるわけです。

ディレクションが重要であるもう一つの側面

さて、分業体制により「指示だし」が重要であることは上記にあるとおりですし、おそらく皆さん納得していただける領域であろうと思います。しかしながらここ数年はその分業体制もさることながら、インターネット広告業界の進化(あるいは変化)により、このディレクション能力の重要性がさらに増している、とも考えられます。その変化とは「Cookieの利用制限」と「広告フォーマットの多様化」です。

皆さんご存じの通り、Cookieの利用制限によりインターネット広告の効果計測は大幅に変貌しました。facebookのコンバージョンAPIやGoogleの拡張コンバージョン、ひいてはNSレコードによるCookie有効期限の延長など、効果計測の実装において「タグを貼れば終わり」というほど簡単ではないという現実があるわけです。特にコンバージョンAPIや拡張コンバージョンにおいては1st party dataの取得という意味でプライバシーポリシーとの兼ね合いなどもあり、やはり全体の進行をきちんとしきることが出来る人材が必要であることは間違いありません。

広告フォーマットの多様化によるディレクションの重要性

もはや広告フォーマットの多様化は留まることを知りません。テキスト、静止画、動画、さらに言えばカルーセルなどもありますし、効果を改善する中で広告クリエイティブの製作は決して無視ができない稼働量になっています。クリエイティブの製作現場において、クライアントのニーズや現状のレポートからどういったクリエイティブをいつまでに掲載するか、という段取りを調整する力も必要になっています。そういった観点から、やはり全体を上手に仕切る人材の必要性は高まり続けていると言えるでしょう。

2014年、ボストンでの話

話はちょっと変わりますが、実は私、2014年の夏に米国のボストンで開催されていたMarTech Conferenceに出席していました。ボストンということでMITの教授などもキーノートスピーチに登壇するようなカンファレンスだったのですが、その際に盛んに議論されていたトピックスがあります。それが「ユニコーンを育成せよ!」というテーマです。

ここでいう「ユニコーン」とはいわゆるスタートアップ界隈で言われている「ユニコーン」ではなく「複数の専門性を掛け合わせたデジタルマーケティング人材」の比喩です。その当時のメモを見てみると

  • SEOやCMSなどFundamentalなマーケティングの技術を理解している人材
  • ITの視点だけでなくマーケティングとして自社のデジタル資産を活用できる人材
  • マーケティングだけでなくITの理解をもって自社のマーケティング課題を把握できる人材
  • MarketingとITのオーバーラップ人材=ユニコーンの育成が急務

と書いています。8年前のメモ書きではありますし、上記にある「運用型広告の司令塔」とはニュアンスが異なることは事実ですが、それでもこの発言は非常に示唆に富んでいると今でも思います。この文脈で重要なことは「市場変化に対応できるだけのCapabilityを持った人材をいかに確保・育成するか」ということです。

2014年といえばソーシャルメディアが飛ぶ鳥を落とす勢いで成長し、動画メディアの爆発的な成長も続いていました。そうなってくると「今まで」有効だったスキルが陳腐化したり、「今まで」重要だったスキルよりもより重要なスキルが登場する、ということが起こります。そういった市場変化に対応することがデジタルマーケティング業界・ネット広告業界におけるキャリアパスの一つであることは間違いありませんし、それ故に「学び続けなければならない」という命題があることも事実でしょう。

学び続けるサポートを!

というわけでやはり最後は弊社のサービス紹介ではあるのですが、弊社の広告代理店様向け人材育成プログラムが多くの代理店様に支持され、One on One研修の受講者も累計150人を超えるほど長く続けられている最大の理由が、まさに上に書いた「市場変化に対応できるだけのCapabilityを持った人材の育成」にコミットしてきた結果であろうとは(僭越ながら)思っております。もう10年近く「広告代理店様向け人材育成」という事業を続けていますが、初期の教え子がだんだんとキャリアを重ね、そして活躍している姿を見ると非常に誇らしくなりますし、少しは彼ら・彼女らのキャリアに貢献できたかなと思う次第です。

変化をし続けているデジタルマーケティング業界で人材育成をし続けることもかなり大変な仕事ではありますが、弊社としては今後とも広告代理店の皆様が「学び続ける」ことを支援していく所存です!

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