デジタルマーケティングの人材育成会社として、弊社が関わったデジタルマーケティングを楽しんでいる人の、デジマケが楽しくなるまでのストーリーを紐解くインタビューシリーズです。第一弾となる今回は、弊社がアドバイザーを務める栃木県様から農村振興課グリーン・ツーリズム情報発信事業を推進する齊藤さんにお越しいただきました。自治体職員さんのリアルな取り組みは、デジタルマーケティングに取り組んでいる方、今後取り組みたい方必見です!
栃木県農村振興課:齊藤さん
栃木県農村振興課のグリーン・ツーリズム情報発信事業を担当。「とちぎの農村めぐり」というキャッチフレーズで、WebサイトやSNSを使った魅力発信や、フォトコンテスト、デジタルスタンプラリーといったイベントの開催、それに伴う広告配信などにより、本県農村地域への誘客促進デジタルプロモーションを実施している。
「若い人だからできるでしょ」で始まったデジタルマーケティング
―――齊藤さんがデジタルマーケティングに取り組んだきっかけについて教えてください。
齊藤:「農業職」として入庁し、当時はバリバリ現場の農業系業務(生産者への栽培指導など)を担当していたので、デジタルマーケティングは考えたことがなかったですね。そういう業務があるとしても広報関係の部署(又はプロモーションを担う部署?)などが取り組んでいるような、自分とは縁のないものだなというふうに思っていました。
きっかけは農村振興課に異動になったことです。当時は「農村振興課では(文字どおり)農村振興をやっているんだよな」という程度のイメージでした。
「サイトやSNSを担当するんだよ、若いから親和性が高いだろう」という感じで言われても、自分自身、そんなにSNS等を活発に使っているタイプではなかったので、戸惑いました。
とにかくInstagramとFacebookが既にあるからそれを運用したり、Webサイトもあるから閲覧者を増やせるように工夫したり、そういうことを担当する、ということで引き継ぎを受けました。
「デジタルに強い訳ではないのに…」と思いながらも、自治体は全く別の分野に異動するということはよくあることなので、任された業務を受け入れてやるしかない、という感じでした。
―――「デジタルマーケティング」を始めたのは、異動がきっかけだったんですね。今や事業をけん引している感じがします!
齊藤:いやいや、そんなことはないと思います。アドバイザーさんやデジタル戦略課はすごい褒めてくださいますけど、やっぱり農村誘客という課全体の事業の一部分でしかないので。
どれだけ情報発信を頑張っても、施設側の受け入れ体制も整っていないといけないので、そういったところの支援も重要で、私1人頑張るだけでは難しいところがあります。
研修で感じたデジタルマーケティングの面白さ
―――お話を伺って齊藤さんはデジタルマーケティングをとても楽しんでらっしゃるなと感じています。実際楽しいと思いますか?
齊藤:楽しいです。おかげさまで。でも最初は本当にわからなくて、まず勉強から始めました。まず用語がわからないじゃないですか、ページビューとか言われても。そもそも「ぐ、ぐーぐるあなりてぃくす…?」みたいな感じだったので、最初はそれを自分で勉強して。
そんな中で、sembearさんの研修があって、ゴールをちゃんと設定するとか、顧客の像をしっかり考えて、何のためにやるかの明確さみたいなことの重要性を知って、「PDCAサイクルを回すことの繰り返しなんだ!」と思ったのが、面白くなってきたきっかけですね。
―――弊社の研修をご活用していただきありがとうございます!でも研修を受けていきなり事業に繋げるって結構難しくなかったですか?
齊藤:そうですね。でもワークシートに落とし込みましょう、という実践的な研修も含まれていたので、自分が担当している事業で考えたら、運用しているオウンドメディアなどをいろいろ段階を踏まえてどういうふうに働きかけたらいいんだろうというのは、研修の中で何となく自分で落とし込みができて。でもすぐに動くことはなかなかできなくて。
委託事業なので、委託事業者さんに「こういうことを研修で学んだが、この事業の中で取り組めるかな」という相談のきっかけになったかなという感じです。委託でやっていると、分析レポートが出てくるのですが、分析レポートを読む、理解するので結構精一杯で、「こういうのをやったらいいんじゃないか」っていう提案にまで踏み出せない。向こうが提案してくれるのを待っていたところがありました。
例えばSNSの投稿文などは、もっとこうしたら読みやすくなるなとか、そういう目に見えているものってすごく取り組みやすいんですが、Webサイトに訪問している人のより詳細な経路とか、そういうところまで行くと、自分がGoogleアナリティクスを使いこなせていないとわからない。その辺はまず自分が触ってみるまではなかなかできないところだったので、最初はやきもきもしましたね。いろいろ見るところがあるんだろうけど、どこから手を出したら良いのか…という感じでした。
自治体職員でも「提案していい」で躍進
―――その他の業務がある中で、報告資料の内容を理解しながら事業の改善策等を考えていくのは難しそうです。
齊藤:そうですね。でも研修に参加をして、少しずつではありますがこれならすぐ取り組めるなって思ったことから取り組むようになりました。
元々は「委託事業は委託事業者にやらせないと」と周りに言われ、提案を待つスタンスでいました。だから研修で学んで数字の見方がわかるようになってきて、この数字をもっと良くするために、こういうことが有効なんじゃないか…?と自分で考えても、委託事業者さんから提案を待たないといけないと思って。
ただ、小林CMO(栃木県)の研修に参加したとき、「提案を待たなくていい。どんどんこっちからもアイディアを出していいんだ(→正式には、「課の役割は、事業会社からの提案を【判断】するのではなく事業会社とアイデアをぶつけ合い、【作業】をお願いするべきものである。」というお言葉でした)」ということを学び、待っていたら一向に進まないので、こっちから提案して良いんだ、と思いました。
今までは「この数字を良くするためには、どうしたらいいですかね?」というところまでしか投げられていなかったですが、もっと具体的に、「InstagramやFacebook、Twitterで、それぞれ投稿を工夫した方がいい」とか、「新しくこの広告配信にチャレンジしてみませんか」というところまで言えるようになったのが結構躍進というか、大きいきっかけになりました。そこからいろいろ取り組むようになり、研修で学んだアイディアはすぐやってみようと思い、ツイッターカードを導入したり、utmパラメータを導入したり、それの繰り返しでしたね。
―――自分で提案するようになって、事業の進み方は変わりましたか?
齊藤:変わりましたね。おそらく、今まではこちらの意図を思うようには伝えられていなくて、お互いの(事業に対する)共通認識が取れていなかったと思います。提出される報告書も数値的な結果の報告がほとんどで、昨年度からの変更点・改善点があまりない状況でした。
委託業者も複数業務を抱える中で、1つ1つにどれだけ注力するかというのも当然違うと思います。こっちが取り組みたいことは1回提案してみないと、こちらの提案に対して、そのまま取り組むのか、それを踏まえて他に良い手法があるのかという話になっていかない。
県の委託事業は予算が決まっていて、基本的には仕様書に書かれたことを実施すれば良い訳ですが、県からの提案に答えないわけにもいかないので、本気度が増したというか、私のわがままに付き合ってくれたというのが、結果としては良い関係に繋がったと思います。
デジタルマーケティングは一人じゃできない
―――他自治体さんでは、デジタルマーケティングは職員ではなく専門人材のもの、みたいな空気感ってあると思います。
齊藤:そうですよね。(デジタルマーケティングは)数字をよく見るものじゃないですか。数字だけだとあまり実感が湧きにくい、という感じがちょっとあるかなと思うんです。でも、数字を見れば効果が明らかなので、ちゃんと数字で効果を伝えられるっていうのは、私的には取り組んだだけ反映されて、やりがいだけじゃない事業だなと思いますね。ゴールも見えているので。
―――どうしても専門的な用語等が出てくるので諦めてしまう方が多いのかなと感じますが、実際そのあたりはどう思いますか?
齊藤:非常にもったいないと思います。ある程度向き不向きはあるのかもしれないですが、取り組んだら凄く面白いと思います。でも事業を専任で担当していると、共感できる人が周りにいないといけないとも思います。
私はたまたま、自分が勉強したベースの上に、研修の内容がストンと落ちて面白さを発掘できましたけど、わからないまま、もういいやってなってしまう人もいると思います。わからなかったときに誰かに聞けるとか、「これってどうなんだろう」と思うことを(視野を)広げてくれる人が周りにいると違うのかな~と思います。
―――デジタルマーケティングを進めるうえで仲間って大事ですよね。
齊藤:そう思います。同じ部局内でもそれぞれがSNSに取り組むなど、各課個別でデジタルに取り組んでいる現状がある。日頃から情報交換して、相乗効果を図れたら良いと思いつつ、時間が確保できないのも正直なところで。でもそういう機会があるといいのかなと思うことがあります。
また、1人で業務を進めてきたからこそ即行動に移して取り組めていたという利点はあると思いますが、周囲に相談できる環境が少なく、数字でいろいろ成果が見えても、効果や重要性が伝わらずなかなか思ったように理解が進まないという点でつらい部分もありました。
―――お話を伺うとド正面デジタルマーケ人材ですね!
齊藤:そう言っていただけると、誇らしいです(笑)
でもデジタルマーケティングは、これに取り組めば正解というものがなく、どういうふうにどこを伸ばしたらいいんだろうとか、このサイトの強みは何だろうとか、結構やっていって積み重なってこないと、正解に近いものが出せないというか。
例えば、広告を配信するとしても、全く興味がないものを出してもスルーされていたかもしれないし。リスティング広告をするにしても、そもそも検索ワードを適切に設定できなかったら、サイトに誘導できず無駄打ちになってしまう。手法がいっぱいある中で、目的と手法をどのように組み合わせるかというところが、もっと私の知らない正解があるんだろうなって思うと、まだまだ知識が足りていないなと感じます。
自治体職員が感じるデジタルマーケティングの面白さとは
―――全然知識足りないと言いながらもめちゃくちゃ楽しそうです(笑)
齊藤:楽しそうにしていますが、全然知らない人からしたら、理解できないと思います(笑)
知っていることはどんどんやりたいタイプなので、良いと思って取り組んだものが上手くいかなかったら笑いものになっていたんだろうな、と。結果として数字が良い感じで伸びてきたのでよかったと思っています。
もちろん伸び悩んでいるコンテンツもありますけど、特にいちご狩り関係の広告はすごくうまくいったので、次に生かしていきたい。そういったことが目に見えてわかるデジタルマーケティングはすごいです、本当に。他の業務にはない面白さなんじゃないですかね。
―――やったことの成果が目に見えてわかるのがデジタルマーケティングの魅力ですか?
齊藤:そうですね。やったらやっただけ効果が出るってところが一番大きいかもしれないですね。わかってもらえない人には褒めてもらえないけど、数字が私を称えてくれるみたいな(笑)
もちろん、農村振興課でグリーン・ツーリズムの情報発信といっても誘客促進が目的なので、最終的にはいくらサイトに来ていても、実際に現場に来てくれていないと目的を達成したとはいえないです。それは今後、新しくLINEを導入したりして実際に現地に行っているかどうかをつかめるように改善されていくとは思いますが…。
ただこれまではそういうのがなくて、単にWebサイト内を回遊している架空の人たちの数字で一喜一憂するしかなかったというのがあり、でもそれが現地に来てくれる「入口」になると思うと、単純に母数として増えるだけで次に繋がるとポジティブに考えられるようになりました。
業務によっては、一度立ち上げてしまうと、現場からより良い意見が上がったとしてもなかなか変えられないことがあります。
でもデジタルマーケティングは変えられるんです。「これはちょっと現場から求められてなかったな」って思ったら、デジマケならいつでもやめられる(方向転換できる)。だからデジマケはやめることが難しい行政の中でも、すごくすっきり事業について考えられるし、取り組みやすいっていうのは面白いかなと思います。自治体っぽくないところが面白い。
―――なるほど。確かにリアルタイムに成果を確認して判断できるところは面白いですね。
齊藤:結局使われずに残ってしまう事業がある中で、費用対効果が見込めるのが良い点ですね。
そこが面白さでもあると思います。広告予算をいかに美しく使うかじゃないですけど、どっちが安いんだろうって考えるのが面白いです。予算が限られていますから。追加投資できないので、どこが正解なんだろうっていうのを、アドバイザーさんからいろいろご意見いただいて直していくのもすごく面白い。そういう広告の仕方があったのか!と驚くことも多くて。
―――貴重なお話をたくさんいただけてありがたいです。最後になりますが、sembearがいてよかったですか?
齊藤:愚問ですよね(笑)もう、本当に感謝しています。
私は農業職なので、異動をしたら、もうあまりデジマケ事業に関わることも、もしかしたらないのかなとか。でもTheデジタルマーケティングとかプロモーション業務でなくても、仕事においてPDCAサイクルを回すということについては同じことで。トライアンドエラーを繰り返すっていうのは農業の分野でも重要なことだし、何かそういう意識をつけてもらったかなっていう気がして本当に感謝しています。
―――貴重なお時間をいただきありがとうございました!
終始、楽し気にお話された齊藤さん。異動で始まったデジマケで苦労されたとお話されつつ、デジマケを楽しみ事業をけん引するまでに至ったのは、持ち前の分析力と新しいことへのチャレンジ精神が原動力ではないかなと感じました。今後もますますご活躍されること間違いなしです!
sembear合同会社では、これからもデジマケに奮闘するデジマケを楽しんでいる人のストーリーをインタビューしていきます。