Marketing Technologyマーケティング担当者向け

Tim Cookの発言から考える「プライバシー保護」の本質

まずはニュースレビューから

さて「Cookie利用制限のその先 part2」も終わって一息つく間もなく別のウェビナーに登壇したり事業開発したりとまたBlogの投稿が滞りがちになっていましたが、非常に興味深いニュースが出ていましたので、本日はそちらのご紹介です。

Tim Cook May Have Just Ended Facebook

https://www.inc.com/justin-bariso/tim-cook-may-have-just-ended-facebook.html

こちらは2021年1月28日(偶然にも自分のWebinarと同日)にベルギーはブリュッセルで行われた「International Data Privacy Day」のイベントでAppleのCEOであるTim Cookが発言した内容が抜粋して書かれているニュースになります。タイトルからして「Tim Cookはfacebookを終わらせたのかもしれない」という煽り感満載の記事です。さて、まずはこちらの記事に書かれているTim Cookの発言をちょっと子細に見てみましょう。

まずTim Cookは

“Technology does not need vast troves of personal data stitched together across dozens of websites and apps in order to succeed. Advertising existed and thrived for decades without it, and we’re here today because the path of least resistance is rarely the path of wisdom.

まずこの文章。のっけからTim Cookのドストレートな思想が見て取れます。簡単に訳すと

テクノロジーが成功するにはいくつものウェブサイトやアプリをまたいだ(ユーザーの行動)データのつなぎ合わせは必要ありません。広告はそんなものがなくたって数十年繁栄をして生き残っていたのです。そして、最も知性ある選択が最も簡単な道であることはほとんどありません。

つまり、Tim Cook(つまりAppleのプライバシーへの取り組み)はここで明確に「サイトやアプリをまたいだユーザーの行動の追跡はダメだ」と発言しています。これは弊社のITP研修などでもしばしば解説するのですが、Appleの方針は終始一貫していて、基本的には「自社で使うべきデータは自社が収集したもの」であって「自社外でのユーザー行動の追跡を元にマーケティングをしないよう」な規制をかけ続けています。

「最も知性のある選択が抵抗の少ない道」というのはやや直訳ですが、つまり「今より先に進むためには争いを避けて通れない」(fromミスチルの「Tomorrow never knows」)的な考え方でしょう。若干茶化しましたが、これは非常に重たい文だなあと個人的には思います。Appleの覚悟が垣間見えるというかなんというか。

なんにせよ、Appleの規制の方針を極めて端的に表現していると個人的には思いますね。

そしてさらにTim Cookはこういいました

If a business is built on misleading users on data exploitation, on choices that are no choices at all, then it does not deserve our praise. It deserves reform.

これも本当にストレートな発言ですね。つまりユーザーの認識の甘さに付け込んだデータ収集や、そもそもオプトアウトの選択肢がないようなデータ収集によるビジネスは守られる対象ではなく、変革の対象だ、ということです。

ここから先の数文は名指しこそしていないものの、facebookのAppleに対する反論とアメリカの大統領選挙から始まった社会の分断についてのコメントかと思うので割愛しますが、これまで見てきた文章でも十分にTim Cookの決意が読み取れるコメントだと思います。

記事執筆者のコメント

Tim Cookのコメントはここまでにして、この記事を書いた方の見解が述べられているパートに目を移してみましょう。

As Cook aptly points out, “advertising existed and thrived for decades” without using data that was collected in less than transparent ways. And as customers are offered more choice when it comes to how apps and websites track their data, experts predict that more and more people will opt out of said tracking. 

If you’re an advertiser, you’ll need to adapt. Or die.

簡単に訳すと

「Tim Cookが指摘したように透明性に欠ける方法によって集められたデータを使うことがなくても『広告は存在し、そして繁栄してきた』のです。そして専門家は消費者がウェブサイトやアプリからデータ収集されるかどうかの選択をできる機会が増えるほど、オプトアウト率が上がると考えている。もしあなたが広告主なら、これに合わせていくか、死ぬかしかない」

という感じでしょうか。まあ、これは現状ではやや煽り感はあるものの、あながち間違いではないかと思います。ATTなんてのはそういうものですしね。

さらに記者は以下のように続けます。

But there’s also a bigger lesson at stake. 

Now is the time to ask yourself: Which philosophy do I want to pursue? Do I want a business that serves my customers? Or one that takes advantage of customers to serve my business?

(意訳)しかし、もっと大きな課題があります。今こそ自分に問うべきなのです。消費者に利用をしてもらうビジネスをやりたいのか、それとも消費者を利用して自社のサービスを提供するのか、どちらの哲学をあなたは選ぶのでしょうか?

手前味噌も甚だしいですが、これこそ自分が「Cookie利用制限のその先 part2」で訴えたIntegrityの話だと思います。「法的にOK」も「技術的に可能」マーケターとしてのモラルについての免罪符にはならないのです。

では最後の段落を一気に読んでみましょう。

Because in the end, only one of these philosophies is sustainable for the long-term. The other will lead you to crash and burn.

And while the long-term solution may initially prove more challenging, remember:

“The path of least resistance is rarely the path of wisdom.”

(意訳)最終的には長期的に持続可能である哲学は一つしかありません。もう一つの選択肢はあなたを崩壊と炎上へと導くでしょう。そして長期的な解決策は最初のうちは難しく見えるものです、しかし覚えておきましょう「最も知性ある選択が最も簡単な道であることはほとんどありません。

という締めくくりでこの記事は終わっています。

今何をするべきか?

私はどちらかというとテクノロジー推進派ですし、そういう意味でAppleのプライバシー保護規制については正直「激しい」と思いつつも、それが「おかしい」とも思いません。

ただ、特にコロナ禍をきっかけにデジタルマーケティングはより社会での重要性を増しています。そういった時代背景において、私自身「マーケターとしてのモラル」については自社の経営を担う立場として、今まで以上に気を遣うようになりました。

具体的に言えば、実際の戦術面としてこれからファーストパーティーデータが重要であることは皆さんも同意いただけるでしょう。しかしながら、それはユーザーからファーストパーティーデータを提供してもらっている、という観点が絶対的に必要です。

ユーザー登録してくれる消費者にとって自社は何の価値を提供できるのか?ニュースレターを登録してくれる消費者に自社はどれくらい有益な情報提供ができるのか?究極的に言えば「自社が社会に果たせる価値提供は何か?」を明確にしないまま、とりあえずデータを集めるだけのファーストパーティーデータ取得になってはいけないのです。

やはり「ユーザーから愛される」この本質に立ち戻るべき時代だな、と強く思いますね。