「進撃の巨人」に学ぶネット広告のこれから

その日、人類は思い出した。奴らに支配されていた恐怖を・・・

のっけから意味不明な見出しで恐縮ですが、今回のテーマは「進撃の巨人」に学ぶ「インターネット広告」のこれからです!

まず皆さん、少し思い出してほしいのですが進撃の巨人の世界では人類は三つの壁に囲まれていました。ウォールマリア、ウォールローゼ、ウォールシーナがそれです。これはまさしく今のインターネット広告における「Walled Garden」をあらわしているといってよいでしょう。つまり「ウォールGoogle」「ウォールfacebook」そして「ウォールYahoo! Japan」という壁で囲まれた世界です。

※「Walled Garden」とはいわゆる豊富なユーザーデータを「囲い込んだ」メガプラットフォーマーを指す言葉になります

壁に囲まれた人類は100年という平穏な時代を過ごしていました。それぞれの壁(Walled Garden)はそれぞれ囲い込んだインターネットユーザーのデータを分析し、自社の広告配信で使いやすい形にセグメント化し、そして最適化のアルゴリズムを洗練させることで100年という長い月日での人類の平穏な暮らしを実現してきたわけです。

しかし、100年という長い平穏な時代は終わりを告げました。南から巨人がやってきたのです。その名前は鋼の巨人、別名をAppleといいます。

壁が壊れた時:ID喪失へ

進撃の巨人において鋼の巨人が体当たりで壁を壊したように、AppleもITPとATTというパワープレーで壁を壊しにかかります。これはiPhoneという「端末」を作っている企業であればこその強烈なパワープレーでした。

元々iOSは特に3rd party Cookieについての利用に一定の制限をかけていたのですが、その制限を端末レベルで制御するだけではなく、ATTについてはIDFAについての「オプトイン」を強制させるUI変更、そしてSKAdNetworkという端末メーカー+アプリ販売事業者としての垂直統合のポジションをフルに活用し、人類を守っていた壁を壊してしまったわけです。

これは文字通り「衝撃」でした。インターネット広告において広告配信、効果計測、そして自動最適化を機能させるために絶対的に必須である「ID」の活用について各Walled Gardenから主導権を奪うかの如く規制をかけたわけです。さらに壁の中の人間にとって衝撃だったことはITPを含むプライバシー保護機能を迂回しようという調査兵団の様々な努力をあざ笑うかの如く、Appleはそのプライバシー保護機能をアップデートしていったわけです。

典型的だった事件はITP2.2で登場した「Link Decoration」における規制でしょう。これはまるでウォールマリアないで巨大化した女型の巨人の事件に匹敵する衝撃でした。このLink DecorationにまつわるCookie利用規制は各Walled Gardenが保有していた「ユーザーデータ」を活用した計測における一撃だったと言えるものでした。ここにきて我々人類はネット広告における「ID喪失問題」に直面したわけです。

Cookieに「依存していた」問題

いい加減ここから先は進撃の巨人をモチーフにするにはかなり無理がある話ではありますし、今まで書いた文章も相当に無理がある話ではあるのですが、まじめな話「ID喪失問題」は真剣にネット広告・デジタルマーケティングにかかわっている人にとっては比較的重たい課題であることは間違いないと思います。

実際問題として、AppleのITPに代表されるCookie利用制限やプライバシー保護機能は、各Walled Gardenを新たな進化の方向に進ませたといってもよいのかもしれません。それは「CookieというIDだけに依存しない」という方向性です。いわゆるConversion APIや拡張コンバージョンといわれている機能はCookieというIDだけに依存していた状態から、ハッシュ化されたメールアドレスなどを活用した「人ベース」へのIDの活用と解釈することもできますし、CDPの利活用やData Clean Roomもそういった文脈で考えるべきでしょう。

また、かなりそもそも論の話にはなりますが、スマートフォンの登場以降、一人の人物が複数台のデバイスを使うことは既に当たり前になっていました。そんな中で「デバイス単位で識別」するCookieだけを使った配信や計測というものがそもそもどの程度の意味があるのか、というのは2013年にはすでに指摘されていた問題でした。

そういう意味でいうとAppleが震源地となった「Cookie利用制限」はネット広告やデジタルマーケティングにおいて「Cookieではなくてユーザーをちゃんと見る」という当たり前のあるべき進化を促したといってもよいのかもしれません。

壁を越えて新たな地平へ

「Cookieではなくてユーザーをちゃんと見る」という当たり前のあるべき形は、実はマーケティングの本質ではあります。おそらくID喪失問題により今まで見られていたデータの活用が難しかったり、実際にレポート上問題があるケースは多くあるでしょう。しかしながら、消費者に向かって適切な情報発信をしたうえで、そのIDを適切に受領し、そしてそのデータを活用するという1st party data活用の現在のトレンドはマーケティングの本質だと言えるでしょう。

進撃の巨人の世界で「壁に守られていた」人類は、その安寧な日々の中で半ば思考停止に陥っていました。それは無条件に各媒体がデータを蓄積し広告配信出来ていた時代、言い換えれば「壁に守られていた」ともいえるわけです。そしてその時代はもはや終わりを告げようとしています。

やはり今大事なことは壁を越えた人類として、適切にユーザーの同意を得た自社データの拡充、そしてその利活用に取り組むべきでしょうし、そのためには広告代理店のコンサルタントが「進撃のコンサル」としてその推進を進めていけると、人材育成を推進している弊社としては本当にうれしい限りです。

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