「マーケティングのデジタル化」についての私論

2020年も年末になりました。今年も本当に色々ありました。今回は少し真面目に、デジタルマーケティングのこれからについて考察してみたいと思います。

Cookie利用制限のその先

今年の4月に登壇したWebinarの話ですが、これから先Cookieの利用が厳しくなっていく中で、ファンから愛されるマーケティングを進めていかなければならないし、いわゆるファーストパーティデータが重要になる、というお話をさせていただきました。

今年10月のiOS14.2のリリース、そして来年1月のATT、更には2022年1月には実施されるであろうChromeの3rd party cookie規制を踏まえても、このとき話した内容は実はそんなに的外れでもなかったように思います。

Cookie規制の影響

このWebinarとは別に「Cookie Based Marketingの終焉」というセミナーを何度か実施したのですが、今のWeb広告とかネット広告と言われているものは、かなりの割合「Cookie Based Marketing」です。このCookieというやつは非常にありふれた基礎技術であり、そして非常に便利な道具でした。

なぜCookieは「プライバシー保護」という文脈で「規制」の対象になるのか、改めて考えてみましょう。

Cookieとは特にアドテク界隈において「ブラウザを識別するためのID」としてフル活用されています。ポイントになるのは「ブラウザ」を識別しているのであって「ユーザー」を識別しているのではありません(ログインとかの話はちょっと置いとく)。

はっきり言ってしまえば、Cookieは「ユーザーが気づかないところでブラウザを識別し、ユーザーの閲覧行動を追跡する」という点において非常に便利な基礎技術だったんですね。もっと単刀直入に言えばリターゲティングとCookieはまさしく上に書いた通りの関係性です。

ユーザーがあるサイトに来訪しているときに、自分のブラウザにCookieが付与され、広告プラットフォームから閲覧行動を追跡されてる、なんてことに気づいているわけがありません。

そしてCookieは様々なサイトで発行され、連携され、集約されることで「○○に興味があるユーザー」というセグメント作成の元になっていたり、あるユーザーが保有している異なるデバイスをつなげる(これはあくまでProbabilisticの話)などでも使われるようになりました。つまり今ネット広告代理店が普通に実施している「興味関心ターゲティング」や「クロスデバイスターゲティング」というのはCookieを活用すればこそ可能だった話だ、ということです。

Post/After Cookieとユーザーの許諾

誤解のないように明記しておきますが、私は別にアドテクがだめだとかリタゲはだめだ、とは思っていません。広告主のマーケティング上の成果を向上するための技術活用としては間違いではなかったと思っています。その反面、テクノロジーに依存しきったマーケティングになっているケースや節度がないFQのリターゲティングについては辟易していたのも事実です。

いずれにせよ、これからのデジタルマーケティングにおいて「ユーザーの気づかないところで行動を追跡して広告配信をする」という行為からは卒業しなければならないでしょう。はっきり言えば「Cookieという技術がブーストしてくれていたマーケティングは終わりにしましょう」ということです。

ひょっとしたらCookieに変わる何かしらの識別子(巷では統合ID、とも言われているやつですね)やS2Sのソリューションで従来のCookie Based Marketingと同等のマーケティングができるようになるかもしれません。しかしながら、技術的に可能になったとしても今までとは明確に違う点があります。それは「ユーザーから明示的な許諾を得ないといけない」という点です。

マーケティングは「人」を動かすこと

いわゆる3rd party cookieはユーザーが気づかないところで閲覧情報をサイトをまたいで記録する、という使い方がされていたのは否定ができません。だからこそITPの1.0では「インタラクションがないドメイン」というユーザー追跡目的のCookieが排除されていたわけです。もっというとITP2.2のLink Decorationも同じ文脈ですね。

先程書いたとおり、今までのネット広告・デジタルマーケティングはユーザーが気づかないところで取得されていた各種データをもとに配信し、最適化し、そして成果を上げてきました。これは他のマーケティングには存在しないデジタルだけの特長でした。だからこそ「デジタルマーケティング」というある独立した扱いには一定の意味があったのかな、とも考えています。

しかしこれからはユーザーの明示的な同意が必要になります。これはファーストパーティデータでも同様に扱うべきですし、いわゆる「ゼロパーティーデータ」という言葉で説明がなされている概念でもあります。となるとこれからはよりユーザーに寄り添い、ファンになってもらい、明示的な許諾を得てデータを提供してもらわなければデータの活用はできません。

つまり「マーケティングに使うデータを使う許諾を得る」ということが「ファンになってもらうマーケティング」抜きには実現しなくなるわけです。正直に言えば、広告主であれ広告代理店であれ、今そこまでできている会社は非常に少数でしょう。

Back to the BASIC

さて、これからのデジタルマーケティングはどうなるのか。未来を断言することはできませんし預言者でもないわけですが、一つ絶対に間違いないことを言えば「Back to the BASIC」です。基本に返りましょう。

ユーザー像を徹底的に考え、ペルソナを作り、態度変容フローを想定し、顧客接点を見直しましょう。ユーザーの行動を追跡することで得られていたブーストは一旦存在しないと考えておいたほうが良いでしょう。仮に新しいテクノロジーが登場して、従来のCookie利用を補う事ができたのであれば、またそれはそれで適切に使えばいい話です。今は自分の頭を使って消費者像を想像し、ペルソナを作り込んでプランを作る、はっきり言えば基本に立ち返ったマーケティングを実践しましょう。つまり今までのCookieをベースにした「デジタルマーケティング」ということではなく、この投稿の記事のタイトル通り「マーケティングのデジタル化」に真剣に取り組むことが重要だということです。

将来がどんな形になろうと、特訓の成果身についた筋肉は知性は裏切りませんから。


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