マーケティング戦略立案と3C分析
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「戦略」と「戦術」を改めて考えよう
広告代理店さん向けの研修でも事業会社さん向け伴走型マーケティング支援でも、自治体さん向けデジタル支援でも、これはあらゆる業種・業態で共通の話だとは思いますが、やはり「戦略」がないまま「戦術」を決めてしまうことが、最も多い失敗の理由でしょう。
銀河英雄伝説のヤンウェンリーの言葉を借りれば「戦術レベルでの勝利が戦略レベルでの敗北をつぐなえないというのは軍事上の常識だ」という表現になるのでしょうが、はっきり言えば「戦略上の失敗」を「戦術上の成功」で補うことはほぼ不可能です。さらに言えば「戦略がない」ことはほぼ100%失敗を意味します。
この「失敗」というのもまた厄介です。せめて「戦略」があったうえで失敗したのであれば、その失敗を次に生かすことはできるでしょう。しかしながら「戦略がない」状態での失敗は反省してもほとんど学ぶものがありません。もっと言えば「失敗した理由がわからない」ことが起こりうるのです。
マーケティング戦略とは?
さて、銀河英雄伝説の話はこれくらいにして、改めて「マーケティング戦略」とは何かを考えてみましょう。しばしば戦略とは「目的地を提示すること」などと言われます。マーケティング戦略とは「マーケティングの進む先」もっと言えば「マーケティングで何をなしえたいか」を定義することだと言ってもよいでしょう。
ここで重要になるのがいわゆる3C分析、と言われるものです。詳細はまた後で述べるとして、もう少し戦略と戦術の話をしましょう。戦略が目的地を示すのであれば戦術は行き方を示すもの、とも言われます。つまり戦術とは戦略を実現するための手段にしかなりません。
デジタルマーケティングでは非常に多くの「手段」が存在します。SEOであったりSNSの活用であったり、もっと言えば広告であればリスティング広告や動画広告など、非常に多くの手段が存在しています。そして弊社が今まで見てきた失敗例において最も顕著なのが「手段だけ決めてデジタルマーケティングを実践した」というものです。
「SEOをやればいい!」であったり「リタゲやればいい!」という手法ありきで進んだデジタルマーケティング施策はほぼ失敗を迎えます。確かにSEOでもリスティングでもリタゲでも、きちんと実施できれば成果は出るものではありますが「きちんと実施する」ためには「目的地」が決まっていなければなりません。ここでいう「目的地」とはゴールという数的なものも含まれますが「自社がどのような状況になっていたいのか」という定性的な目標も含まれます。
戦略を導く3C分析
この「自社がどのような状況になっていたいのか」という定性的な目標は、独りよがりでいいわけがありません。社員数4名(執筆時)の弊社が「年商一兆円」という目標を立てたところで愚の骨頂であるのと同様「自社がどのような状況になっていたいのか」という定性的な目標は「市場の規模感」であったり「自社のリソース」であったり「競合他社の動向」といった要素を踏まえて決定をする必要があるわけです。そしてここで出てくるのが「3C分析」と言われるものです。
3C分析とは上記にある
- 市場の規模感:Customer(顧客)
- 自社のリソース:Company(自社)
- 競合他社の動向:Competitor(競合)
という三つのCを包括的に分析することで、自社が目指すべき場所をさだめ、マーケティング戦略を立案する根本となる非常に重要な分析になります。この3C分析をおろそかにした結果しばしば引き起るのが「手段が先行してしまったデジタルマーケティング施策」です。
一つ例を挙げて考えてみましょう。あなたはとある企業の商品開発を担当しています。あなたは非常に新規性が高く、革命的な商品を開発することに成功しました。まだあなたの商品を知っている人は誰もいませんし、似たような商品もありません。いわば「ブルーオーシャン」とも解釈できる状態にあります。
さて、ここであなたはどのようなデジタルマーケティング施策を展開するでしょうか?
- 「新規性が高く革命的な商品」
- 「知っている人は誰もいない」
- 「似たような商品もない」
こういった商材で「顕在層向け」の施策であるSEOやリスティング広告を実施してしまうのはおそらく失敗です。このような商品の場合「顕在層」はまずいませんし、似たような商品もないということは求めているような検索自体が存在しません。つまり今回は検索などを活用した施策は全くゼロとは言いませんが、優先度は決して高くないはずです。
「やってみなければわからない」の怖さ
今まで書いてきたようなことは実は常識的に考えればわかることですが、それでもこういったことは日常茶飯事的に行われています。その一つの理由が「やってみなければわからない」という魔法の言葉です。確かにどんなに作戦を考えても「やってみなければわからない」のは事実です。ただ「やるまえから(失敗することが)わかりきっていること」はやるべきではないのです。
そういう観点から言えば3C分析とは「戦略を決める」ものであるのと同時に「やらないことを決める」プロセスであるともいえます。もっと言えば「やっても無駄なことを見つけるプロセス」と言い換えてもよいでしょう。どんなに大きな会社でもリソースは限られています。その中で「やらないことを決める」ことは非常に重要なことです。
弊社が伴走型マーケティング支援を提供させていただく際、ほとんどのケースでまず「戦略面」のお話から入らせていただくのは今までに書いたようなことが原因です。デジタルマーケティングはかなり手軽に実施できることで「とりあえずやってみよう」というケースが多いのが現実です。しかしその反面「戦略がなく進めている」という事態に陥り、うまく進まないことが多いのもやはり現実です。
まずは今実施しているデジタルマーケティング施策が「本当にやるべきことなのか」を整理し、改めて3C分析から「やるべきこと」と「やらないこと」を考えてみてはいかがでしょうか?