地方自治体のEBPMを実現するデジタル活用とは?

デジタルを使って住民ニーズを調べる方法

そもそもEBPMとは?

EBPMとは”Evidence-Based Policy Making”の頭文字をとった略語で、日本語に訳すと「証拠に基づいた政策立案」という意味になります。つまり行政組織において事業の策定を行う際に客観的な証拠に基づいて意思決定を行う、という意味です。

EBPMの推進において、住民の意向を定量的に把握することは非常に重要でありながら難易度が高いものになります。というのも「住民の意向」を把握するとなると従来的な取り組みではアンケートによる調査や実際の対面での意見の聴取など、一言で言えば時間がかかる割に十分なサンプルが集まりにくく、特定のカテゴリの意見が大きく反映されてしまったり、住民の本当の需要を把握することが難しいという現実があるからです。

しかしながら、デジタル技術の進展と社会のDX化はEBPMの取り組みを大幅に容易にしました。今回は弊社が実際に取り組んでいる「EBPM支援」について、その概要をご紹介します。

EBPM支援その1:サイト内検索動向分析

まず最初に、もっとも手っ取り早くEBPMに取り掛かることが出来る切り口があります。それが「公式サイトのサイト内検索を分析すること」です。

市役所や町役場の公式サイトであれば、かなりの割合で「サイト内検索」が設置されています。しかしながら、サイト内検索で使われた住民の方の「キーワード」を分析できるように「サイト内検索分析設定」をしっかりとできている自治体は残念ながらほとんどありません。

弊社が取り組んでいる自治体様の支援では、まず自治体公式サイトにおける「サイト内検索行動」の可視化を行います。これはGoogle Analyticsが導入されていればほんの数分で終わる(場合によっては導入できないこともありますが、通常のサイトであれば数分です)非常に簡易な作業ではあるので、もし未導入の方は是非ご検討ください。

自治体公式サイトのサイト内検索では思いもよらぬキーワードが検索されていることがわかります。これにより住民の方が市役所や町役場の公式サイトでどのような情報を求めているかが明確にわかりますし、もう少し掘り下げると「行政組織に対して何を求めているのか」の推論を立てることが可能です。

例えば弊社が取り組ませていただいているとある市役所のサイト内検索を見てみると、しばしば「DX」であったり「デジタル化」という言葉が出てきます。市役所のサイト内検索でこのような言葉が出てくるということは、おそらく市の事業者として「DX」に関する関心が高く、行政に対して何かしらの期待をしているのではないか、という仮説が見えてくるわけです。

EBPM支援その2:Google上での検索動向分析

次にEBPMで使えるデータが、やはり「Google Search Console」です。

デジタルマーケティング業界の中では、Google Search Consoleとは一般的に「SEOの実施で活用」されるツールであるという認識がありますし、それはそれで間違いではないのですが、実はGoogle Search Consoleこそ「住民の声なき声」を雄弁に語ってくれる代弁者なのです。

Google Search Consoleが導入されたサイトであれば、どのような検索キーワードで自らの自治体サイトが検索エンジンに表示され、そしてどれくらいの割合で検索結果がクリックされたのかを数値で確認することが出来ます。検索キーワードを可能な範囲で分類し、傾向を見てみると、実は渋滞情報についての検索動向が高いという傾向であったりコロナウィルス感染についても住民の方がどのような悩みを持っているかを把握することが可能です。

実際の例でいえば「コロナ 洗濯物」という検索が実は多い、というのがとある市役所での傾向でした。これは「コロナに感染した人が洗濯物を外に干してもよいのか」ということを知りたがっている、という仮説が成り立ちます。そうなのであれば情報発信としてもそういった住民の声にこたえることで不安感の解消につながりますし、ワクチンの接種会場で配布するチラシなどでも注意喚起を促すことも可能でしょう。

EBPM支援その3:広報誌+ウェブサイトの相乗効果

ほとんどの自治体であれば「広報誌(または広報紙)」を制作して市内・町内に配布していることと思います。そしてそのほとんどのケースで自治体サイトへの誘導を促すリンクやQRコードが印刷されているはずです。

これは弊社も驚いたのですが、広報誌に印刷されたQRコードにGoogle Analyticsの計測に用いられるUTMパラメータを付与して「広報誌を読んで自治体ウェブサイトに来訪したユーザー」の数値を可視化すると、実は四桁を超える来訪が発生していることもしばしばです。100万人以上の都市であればもっと多いかもしれませんね。

広報誌のQRコードからの来訪数と自治体サイトの飛び先ページの内容を掛け合わせることで、住民の方が最もよく見たページがまず把握できます。これはGoogleの検索やTwitterでの投稿ではなく、広報誌という紙の媒体がどのように住民の方に活用されているのか、そしてQRコードや記事の配置、書き方などからどう見せることで、広報誌というオフラインでの情報発信と公式ウェブサイト(ホームページ)というオンラインでの情報発信の相乗効果を高めることが可能です。

「数値に基づいた意思決定」ができるデジタルだからこそ

地方自治体向けマーケティングダッシュボード

先日アップデートさせていただいた「地方自治体向けマーケティングダッシュボード」においても上記にあるデータは集約され、職員の皆さんが「証拠(エビデンス)」となる各種データを閲覧できるようご提供させていただいております。

ただ、そういったデータの集約をするだけでEBPMの推進ができるわけではありません。データを蓄積すると同時に、データからどのように改善するかという具体的な施策についての「ノウハウ」が必要になります。

そういったノウハウ面についても、弊社は「デジタルマーケティングの人材育成」として、職員様向けの研修や伴走型のコンサルティング支援を通してご提供をさせていただいております。

実際に弊社がダッシュボードから研修までパッケージで支援させていただいている自治体様においては、上記のデータを活用し公式ホームページのトップページのレイアウトを改修することにより、新型コロナウイルス情報に到達するユーザー数(≒市民の数)を10倍以上に押し上げるなどの効果が出ています。

今まで自治体が行っている施策において明確な「証拠(エビデンス)」を基に改善を繰り返すことは難しい側面がありましたが、デジタルの情報発信であれば確実に「証拠(エビデンス)」を把握することが出来ますし、そのエビデンスを基に改善を繰り返すことが可能です。さらに言えば、それは自治体職員それぞれの業務で推進することが出来るわけです。

sembearとしては「証拠(エビデンス)」を把握するための分析プラットフォームのご提供だけではなく、その「証拠(エビデンス)」を解釈し、改善施策に落とし込むための知識や考え方をカバーする研修も含めて、地方自治体様のEBPM推進をサポートしてまいります。