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運用型広告は運用だけで結果は出せない
ちょっと煽り気味な一言ではありますが、実は割と多くの代理店さんや運用担当の方が「運用型広告で結果が出ない」時に「自分たちの運用の仕方がまずかった」ことだけを理由として考えてしまいがちです。
もちろん運用で結果が伴わなかった時に、どこがまずかったのかを反省することは絶対必要ですし、安易に外に要因を求めることはどうかとも思います。しかしながら、やはり大事なこととしては「そもそも結果を出せる環境で運用をしていたか」ということを考えることも非常に重要ですし、昨今のトレンドから言うとむしろその「結果を出せる環境」を作ることが出来たか否かでそもそも広告配信の結果が決まってしまうことも多いのです。
もちろんアカウント構成や日々の調整、予算の配分など、いわゆる日々の運用で改善できる部分は大いにありますし、そこは大事にしたいところではあるものの、今回は「結果を出せる環境」とは何かを考えてみたいと思います。
運用型広告で結果を出せる環境その1:クライアントの協力を引き出せる力
またもかなり煽り気味な一言ではありますが、この「クライアントの協力」は実は非常に大きくなっています。まず考えたいのがいわゆるCookie利用制限に伴う1st party dataの活用です。facebookのConversion APIなどを連想してもらえるとわかりやすいかと思います。
クライアントの1st party dataには多くの場合秘匿性の高い情報が含まれており、改正個人情報保護法との兼ね合いもあるため、そうやすやすと使えるものではありません。しかしながら暗号化されたメールアドレスなどを使った計測や配信は、Cookieの利用制限下においては非常に有効な手段であることは間違いありません。特に計測においては媒体側の自動最適化が洗練されている現在において、最適化を機能させるシグナルとして1st party dataの活用が望ましいケースがあることは事実です。
しかしこの「1st party data」の領域はクライアントの理解と協力がなければ取り組むことはできません。かつ、未だに「何となく怖いから」という理由でデータ活用に及び腰なクライアントも非常に多く、結果として「結果を出せる環境」を作ることが出来ていないことがあります。データ以外でもLPの製作やクリエイティブのバリエーションなども同様ですね。「LPの修正ができない」であったり「クリエイティブのバリエーションが少ない」ことが前提となると「運用型広告で結果が出ない環境」となりかねません。
言い換えれば広告代理店の担当者は「クライアントの協力」を引き出せる「コンサルタント」としての能力が必要になったともいえるでしょう。代理店として頑張りつつも、クライアントの協力を引き出せる説明能力・提案能力は間違いなくここ数年で重要性を増してきています。
運用型広告で結果を出せる環境その2:クリエイティブ制作能力
まあクリエイティブ制作能力も運用能力の一部ではあるのですが、実は結構クリエイティブの内製化ができていない代理店さんが多いのも事実です。「管理画面で調整すること」を「運用」というのであれば、クリエイティブを作る機能を代理店として保有することは「環境」ということは言えるかとも思います。
このBlogを読んでいただいている皆さんはすでにご存じの通り、昨今の媒体の最適化は基本的には非常に優秀です。基本的には、と書いたのには理由があります。それは媒体の最適化は「与えられた条件での最適化」であって「条件そのものを最適化するわけではない」ということです。
与えられた条件、とは当然広告に表示されたクリエイティブ(画像)がなんであるか、というところも含まれます。つまり配信されているクリエイティブが媒体最適化の前提になっている以上、現状の運用効果を改善するための「代理店が行える改善」においてクリエイティブの製作はやはり非常に重要なのです。
もっと言うと、上に書いている通りクリエイティブは媒体最適化の「前提」になります。つまり与えられた「前提」「環境」の中で改善するのではなく、より成果を出せる「前提」や「環境」を作るにはクリエイティブの製作能力を代理店内に内製化しておくことも非常に重要なっているといえるでしょう。
運用型広告で結果を出せる環境その3:マーケティング戦略領域の知識
そして最後のポイントです。やはり重要になるのが「マーケティング戦略領域」における知見です。研修をやっていて思うのは3C、4P、そしてペルソナと態度変容という、いわゆる上流工程の理解があることが運用型広告で結果を出す上では重要になっていると言わざるを得ません。
これは上記にある「クライアントの協力を引き出す」ことと「クリエイティブの製作能力」を下支えする力と言い換えてもよいのですが、運用フェーズに至るまでの様々な意思決定の理由、その背景を理解していることにより計測環境であったりクリエイティブの訴求であったり、もっと言えばゴールの設計であったりという「運用の前提となる戦術」での精度・練度が確実に向上します。
言い換えれば「クライアントの意向」に従って「運用」すること自体は確かに必要ではありつつも、その「クライアントの意向」をしっかりくみ取って理解をしていること、そして場合によってはその意向に対してしっかりと意見をぶつけることが出来ることが、運用型広告において結果を出す上で必要になっていると言ってもよいでしょう。
むろんいい加減な意見や見解ではなく、しっかりとクライアントの市場環境や競合などを理解したうえで、ロジックを組み立てた結果のディスカッションでなければ意味がありませんし、そういう意味でも「マーケティング戦略領域」の理解は今まで以上に重要になっていると言えます。
最終的には「提案」の力
これはやや老害的な発言かもしれませんが「運用型広告の改善」において、必ずしも「提案」は必要ありません。クライアントから予算を預かり、そしてそれを最大限有効に活用することがミッションであれば、クライアントに対して何かしらを「提案」することは必要な業務ではないんですね。
その反面「提案」をしないことに慣れすぎると上記にある「クライアントの協力を引き出す力」や「マーケティング戦略」領域の経験値が高まっていかないことは現実的にはありますし、最終的にクライアントとの信頼関係をしっかりと構築できているほうが広告運用において実施できる改善策が増え、結果もついてくるのは間違いありません。そういう意味ではやっぱり「クライアントの前に出て自分が考えた意見をぶつける」という提案はやっぱり重要なんだとも思います。
もちろん前提となる「運用力」は絶対に大事ではあるものの、同時に運用の前提となる環境を作る力を意識することで、より付加価値の高い仕事ができることは間違いないですね。