Cookie規制の本質と対策

Cookie規制イメージ

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アドテック東京を終えて

というわけで弊社も参加させていただいたアドテック東京が無事に閉幕いたしました。多くの方にブースに訪問していただき、弊社一同大変感謝しております!弊社が提供しているレポーティングツール、TapClicksのデモンストレーションにも多数ご参加いただき誠にありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます!!

今回のアドテック東京、例年以上の盛り上がりだったように思いますが、やはりその背景には弊社TapClicksにも搭載されたChatGPTなどの生成AI、そして来年の12月に差し迫ったGoogle Chromeの3rd party cookie規制についての関心の高まりは大きかったのではないでしょうか?

まず生成AIについてですが、弊社としてもTapClicksにChatGPTによる「レポート分析作成機能」が搭載されたことで、非常に大きな影響があることを直接的に感じております。ChatGPTがレポートを分析したからと言って、コンサルタントによる考察や提案をすべて置き換えるわけではありません。ただ「数字を見ればわかること」を「考察」という業務にしないためにも是非ご活用いただきたい機能ですし、きっと世の中は今後「AIと人間の知性」の相乗効果をいかに拡大していくのか、という方向に進んでいくでしょう。

さて、今回のBlogの本題はどちらかというと「Cookie規制」についてです。アドテック東京で様々な方が様々なお話をされていましたが、改めてここで弊社の考えをまとめておきます。

Topics APIが出てきても「Cookie規制」は止まらない

まず、改めて皆さんと理解を合わせておきたい点がここです。Google Chromeの3rd party cookie規制は、様々存在する「Cookie規制」の中の一部でしかありません。Topics APIが従来の広告配信で使われていた3rd party cookieの代替ソリューションとして活用されることは確定していますが、それはあくまでGoogle Chromeの3rd party cookie規制の話の中であって、AppleのITPのような他の多くのCookie規制とは無関係です。

そもそもSafariでなくとも、例えばFirefoxであればETP(Enhanced Tracking Protection)という規制をすでに導入していますし、Appleにおいても従来のITPがさらに進化し、iOS17でLink Tracking Protectionというさらなる規制を導入しています。そして忘れてはならないのはこれらの規制はCookie規制というよりは「ユーザーのプライバシー保護」機能であるということです。

今回のアドテック東京も、Cookieの規制に対応しましょう、という話は非常に多かったと思います。だからこそ1st party dataの活用やTopics APIに対応することの話が多く語られていたように個人的には思います。ただ、その反面、ユーザーのプライバシーを保護しながらデジタルマーケティングを推進しましょう、という文脈での話がやはり大事なんだと個人的には思っています。これは自分がみてきた範囲の話でしかありませんが、アドテック東京でもそういった話をしている方はいらっしゃいましたが、やはりちょっと影が薄かったように思います。

まずデジタル広告におけるCookieとは「配信」だけではなく「計測」でも活用されています。そしてこの「配信」と「計測」は媒体の自動最適化という観点で非常に密接な関係があるのです。

今回AppleがiOS17でリリースしたLink Tracking Protectionはプライベートブラウジングを使っているSafariについて、ほぼ媒体の効果計測を無力化するものです。これはGoogle ChromeのTopics APIだろうが何だろうが関係なく、プライベートブラウジングを使っているiPhoneユーザーに対して適用されます。

つまりTopics APIがあるからChromeが3rd party cookieの利用終了しても大丈夫、という話では全くなく、実はもっと大きな問題は他にもあるわけです。

ではなぜここまでCookieの利用は制限されるようになったのでしょうか?それはCookieというものが「ドメインを跨いでユーザーの行動を追跡することが出来る」基礎技術だったからです。AppleにせよFirefoxにせよ、すべてのCookieを規制しているわけではありません。規制の対象にしているのは「複数のサイトを跨いでユーザーの行動を追跡している」Cookieだけなんです。

もう少し踏み込んでみましょう。例えばYahoo! Japanに表示されるYDAの場合、実は他の媒体と比べると3rd party cookieの利用度は(相対的に)低くなります。というのもYahoo! Japanはyahoo.co.jpドメイン内でユーザーの行動を捕捉することがある程度可能です、つまり「サイトを跨いでユーザーの行動を追跡」する必要性が薄いんですね。実はこういう場合、そもそもTopics APIなどはそこまで関係がない、という話にもつながってきます。

1st party dataは大事・・・だけどちょっと待ってほしい

そういう観点で言えば1st party dataを活用した計測やセグメント作成、具体的なソリューションで言えばCAPIやDCRなどは当然重要性を増しますし、それ以前に顧客データを蓄積するためのデータ基盤(CDP)を整えることも必要でしょう。やぱりCookie利用制限が進展する中では1st party dataは必要不可欠です。

ただ、問題はそこにあります。1st party dataは「ユーザーから提供されたデータ」になります。そのデータを使ううえで、しっかりユーザーから「愛される」ことが出来ているかを考えるべきじゃないか、と個人的には思うのです。

以前「Cookie利用制限のその先」というウェビナーでもお話させていただきましたが、ユーザーからしっかりと許諾を受けて得られた1st party dataを使う、ということをもう少し真剣に考えるべきだと思うんですね。上記のウェビナーでも言っていますが「テクノロジーではなくIntegrity」が何より大事なんですよね。

そもそもユーザーはなぜ広告主に「データ」を提供するのでしょうか?それは自分のメールアドレスなどの情報と引き換えにしても受け取りたい「価値」があるからのはずです。その価値が明確に存在しない状況で「1st party data」といったところで何も始められません。データ以前にユーザーから「データを渡してよい」という信頼を得るところができてないわけですから。

「追跡」じゃなくて「慮る」ことが大事

そもそも3rd party cookie全盛時代においては、ユーザーを追跡することで、デジタルマーケティングは非常に大きな成果を得ることが出来ました。ただ、現在のトレンドは「追跡」そのものに規制がかかっています。

今デジタルマーケティングで取り組むべきは「どうやったらうまく追跡できるか」を考えるのではなくデジタルデバイスの先にいる「ユーザー」のことをしっかり慮ることではないかと思うのです。上にも書いた通り、Cookieがすべて使えなくなるわけではなく、Topics APIも完璧なソリューションではない中、それでもGAでユーザーの行動を見たり、Google Search Consoleでキーワード動向を考えたり、自社SNSのフォロワー分析やエンゲージメントを見ることで、どうすれば自社がユーザーから「信頼」してもらえるかを考えることはできるはずですし、実際に弊社はそうやってマーケティングに取り組んでいます。

弊社のデジタルマーケティング基礎講座でも「ユーザーから愛される努力」が必要だ、というのは常々言っているのですが、愛されるためには相手のことを尊重し、できる限りの理解をしたうえでコミュニケーションすることが必要のはずです。まずその取り組みができない限りは1st party data云々を言ってもほとんど意味はありませんし、変な方法で集めた1st party dataによる「追跡」はおそらく早々に規制の対象になるでしょう。

必要なことは「マーケティングのデジタル化」

だからこそ以前のBlogでも書いていた「マーケティングのデジタル化」が必要だと思うわけです。Cookieによるユーザーの追跡とアルゴリズムによる最適化が可能だった「デジタルマーケティング」ではなく、もっと本質的にユーザーのことを考えた「マーケティング」をデジタルで実行することが必要だと思うわけです。

自分のBlogの引用で恐縮ですが

ユーザー像を徹底的に考え、ペルソナを作り、態度変容フローを想定し、顧客接点を見直しましょう。ユーザーの行動を追跡することで得られていたブーストは一旦存在しないと考えておいたほうが良いでしょう。仮に新しいテクノロジーが登場して、従来のCookie利用を補う事ができたのであれば、またそれはそれで適切に使えばいい話です。今は自分の頭を使って消費者像を想像し、ペルソナを作り込んでプランを作る、はっきり言えば基本に立ち返ったマーケティングを実践しましょう。つまり今までのCookieをベースにした「デジタルマーケティング」ということではなく、この投稿の記事のタイトル通り「マーケティングのデジタル化」に真剣に取り組むことが重要だということです。

https://sembear.biz/sembear-journal/2020/12/18/back_to_basic/

やはり「人の心を動かす」ことがマーケティングなわけですから、デジタルであったとしてもその先にいる人のことをしっかり考えた、配慮と愛情を持った取り組みをまずやるべきなんだと思うわけです。