ネット広告代理店の新人研修で考えてほしいこと

名将、アリー・セリンジャーの名言から

未来に発展も変革も無いと信じる理由は無いのである

アリー・セリンジャー「サバイバー」より

最近、ハイキュー!!見てすっかりハマっているので、ちょっとこんな書き出しにしてみました。でもこの言葉、今のネット広告業界の状態にぴったりだなと思ってるんです。

Toho Animation公式 : ハイキュー!!ベストエピソードより

ちなみにアリー・セリンジャー氏を知らない人のために解説しておくと、イスラエルのバレーボール選手・指導者であります。日本でも実業団チームの監督をされていた方で、非常に激動の人生を歩まれている方です。Wikipediaのリンクはこちら

そろそろネット広告代理店各社は来年4月入社予定の新卒採用の皆さん向けの研修内容を考えたり決定していたりすると思うんですが、今年から是非「マーケティング戦略面」のケアを厚めにしてほしいなあ、と実は思っております。

実際のところ、弊社も人材育成コンテンツを一部の代理店さんにご提供している関係でこういう話をすることは多いのですが、やっぱり2022年のChromeの3rd party cookieサポート停止を踏まえると、新卒の方々が直面する「ネット広告」って今とちょっと変わってる可能性もあるわけで、そのためにも「戦略面を厚くする」ことが結構大事だと思っています。

なぜ「戦略面」なのか?

結論から言いましょう。なんで戦略面が大事かって

今までは戦略面が多少ザルでも「Cookieをベースにしたユーザーセグメント」っていうのがあったおかげでなんとかなってたけど、それがこの先どうなるかわからないから

ってことです。この記事で言う「戦略面」っていうのはビジネスの理解力、そして顧客目線に立ったマーケティング戦略の構築です。いわゆる3cとか4Pとかペルソナとかを考えて、態度変容プロセスを設計することだとお考えください。

上に書いたとおり、今までって「○○セグメント」っていうのがありました。これって以前の記事でも書いたとおり「ユーザーが気づかないところで3rd party cookieによって収集されていた」行動データを元にしていることがありました。つまりある程度戦略がザルでペルソナの想定が甘くても「あ、この興味関心セグメントよさそう」という判断ができたんです。

まあ正直、2022年の1月にChromeが3rd party cookieのサポートを停止したあとは、今議論されているdovekeyをベースにした配信はできるでしょう。そういう意味では「○○関心セグメント」がまるごとなくなることはないんだと思います。ただ、現状でdovekeyの詳細はまだ不明ですし、それ自体がプライバシーの配慮的にどうなんだ、という不明瞭な点が多いのもまた事実なんですね。

となると、これから業界に入る方については「どんな状況になっても対応できる基礎体力」がより求められます。そして現状で最も明確にその基礎体力に貢献するのは「マーケティング戦略面」だと考えているのです。

基礎体力と戦略面

ではなんで基礎体力の向上にマーケティングの戦略面が求められるのかを、リターゲティングを例にご説明しましょう。

1.リタゲができなくなるネット広告市場になった場合

もしこれから「リタゲができなくなる」としましょう。となると一度サイトに訪れたユーザーに対して再来訪(CV)を促すための施策を打つことができなくなります。サイトに来訪してくれた見込み顧客にリーチする方法を考えると、できるだけ最初のうちにメルマガ登録などの「リーチできる同意を得られる顧客接点」を作っておいて、メールアドレスなどでユーザーを囲い込むような施策がなければ、再来訪を促すことができません。

ではどうやって「メールマガジンの登録」を達成すればよいのでしょうか?それは端的に言えば「ユーザーに自社を好きになってもらう」ことが必要になります。そのためのコンテンツ作成、訴求内容を考えるうえでは「誰にどのようなメッセージを伝えて、どのような態度変容を狙うのか」というマーケティング戦略が必要になるわけです。

2.リタゲができるネット広告市場になった場合

さて、次にこれからも「リタゲができる」と考えてみましょう。ここではさらに二つの分岐が起こります。

一つ目が「ユーザーの明示的な同意が必要なケース」です。これはリターゲティングを配信する際に、ユーザーから同意をもらうプロセスが必要になります。となると今までタグさえ貼っていれば基本的にはサイト来訪者の全数が配信母数になっていましたが、この母数が減る(だって同意しない人がいるから)ことは間違いありません。したがって、配信母数を増やすためにも、上に書いた「ユーザーに自社を好きになってもらう」というプロセスが非常に重要になります。

二つ目が「ユーザーの同意なしにリタゲができるケース」です。ここについては今まで通りのJavaScriptタグとCookieの世界で動くことはまずないでしょうが、しかしある程度簡易に現状のリタゲと同等の配信が可能だとしましょう。

この時、今まで通りの「戦略が薄弱」な状態でも現状と近い成果は出せるでしょう。ただ、マーケティング戦略を明確に作ることで、より効果を改善することができますし、何より「リスト枯れ」のような状態に陥らない全体施策を考えることができます。

つまり、3rd party cookieの制限がどのような展開になろうとも「マーケティング戦略」は必須ですし、今後重要になると思われる1st party dataの取得においては今まで以上に「戦略面」が重要視されると弊社は考えています。

未来に発展も変革も無いと信じる理由は無いのである

冒頭に書いたアリー・セリンジャー監督の名言ははっきり言えばネタですが、でも割と核心をついていると思います。ネット広告業界、デジタルマーケティング業界はその誕生以降常に変革を続けてきました。そしてもちろんこれからも変革していくでしょう。

「未来に発展も変革も無いと信じる理由は無い」以上、広告代理店としては変革に対応できるようにしていかなければなりません。そしてその対応自体がまた変革を推し進めることになります。

2020年のコロナは社会のデジタル化をより進展させました。これは2021年以降も続くでしょう。社会のデジタル化はより消費者のデジタル行動と消費におけるデジタル接点の利用を促進します。当然企業としてはその消費行動に答えなければなりません。ここでもし3rd party cookieがあれば、今の延長線で終わった話かもしれませんが、今主流の手法は2022年の1月には終わる可能性があります。

今回の投稿はあくまで一つの見解ですし、違う意見があるかもしれません。ただ、プライバシー保護に伴うCookieの利用規制は「分からないから無視していい」ものではないはずです。はっきり言いましょう「自分たちに都合の悪い変化」を無視していては「未来に発展も変革もない」のです。

市場の変化に対応し、市場の変革を推し進められるような「広告代理店」の付加価値をともに作っていければと考えています。

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