Topics API延期から考えるネット広告のこれから

TopicsAPIの延期から考える
今取り組むべきデジマ施策

まずはしっかり現状を把握しよう

まずはニュースソースから。私も普段からよく見ているadexchanger.comの記事をご紹介しましょう。

みなさんご存じの通り、元々は2022年に予定されていたGoogle Chromeの3rd party cookie規制ですが、3rd party cookieに代わる広告配信手法の開発が遅れ、まず2023年の夏に延期され、そして今回再延期され2024年の年末までに段階的に廃止する、という流れとなりました。そしてその3rd party cookieに代わる広告配信手法が「Topics API」と呼ばれるものです。

この記事にも以下のように書いてある通り

No doubt some people are wiping their brow in relief, but putting off the end of third-party cookies might cause the industry to dillydally even more.

訳:一部の人が安心していることは疑いようがないものの、サードパーティークッキーの終了が延期されることは業界にとっては単なる時間の浪費以上のものです

adexchanger.com

dillydallyというのは「ぐずぐずする」という意味で意訳的に「時間の浪費」と訳しました。

この記事の後半にも書いてある通り、前回の延期発表以降、TopicsAPIは進捗が鈍化していることは誰の目にも明らかでした。これは私が2022年五月のProgrammatic IO で米国の識者と話していた時にも言われていたことで、その場では正式発表こそなかったものの、この展開は(私も含む)かなり多くの業界人が予想していた展開でもあります。

Programmatic IO のセッションの中でも紹介されていましたが「Cookieを使わないソリューションとして適用したいもの」という問いについて実はTopicsAPIは一位どころかTop3にも入っていません。これは業界として上記にある進捗の遅さから、TopicsAPIに対しての期待がやや下がっていたこともそうですが、TopicsAPIでは最終的に根本解決にはならない、という意識があったことも否定できません。

TopicsAPIは万能薬ではない

確かにGoogle Chromeで3rd party cookieが使えなくなることは業界にとって大きなインパクトがありますし、Google Chromeで現状と同等に近い広告配信を実現するであろうTopicsAPIは将来的に必要不可欠なものではあるでしょう。しかしながら、TopicsAPIはご存じの通り「Chromeにおける」3rd party cookieの代替手段であって、ITP影響下にあるSafari(現実的にはiOS・MacOSデバイスに搭載されたすべてのブラウザ)やETPが存在するFirefoxなど、他のブラウザが搭載しているCookie規制には何ら影響をもたらさらないのです。

かつ、Google Chromeの3rd party cookieサポート停止の発表以降、米国においては広告主の1st party dataの活用が進み、その結果としてテクノロジーが進化したことで効果計測領域とCRM領域はかつてないほど密接に連携するようになりました。これはCookieをベースにした「獲得」の効率を示すCPAやROASという指標ではなく「人」をベースにした「LTV」を重視した広告・マーケティングの拡大という潮流になっています。

つまり、TopicsAPIがあろうとなかろうと、1st party dataの拡充とそれによるマーケティングの「人ベース化」は進化し続けますし、それはむしろTopicsAPIが延期されたことで「TopicsAPIへの依存度」が下がることにもつながりかねないのです。

やるべきことは変わらない

結論、Topics APIが延期されたとしても、1st party dataの拡充がまず最重要で必要な努力であることは間違いありません。ITPもATTも存在している現状を踏まえれば、iPhoneユーザーという日本で最も普及しているデバイスの保有者をマーケティング上無視はできない以上、3rd party cookieに依存せずにユーザーにリーチするIDを取得することが重要であることは疑いようのない事実です。

さらに言うとアドテクベンダー各社の「Cookieを使わない広告配信」の精度は従来のCookieを活用したターゲティング精度とそん色ないレベルまで進化が進んでいます。

そう考えるとTopicsAPIの話はのんびり眺めつつも、今やるべきことは1st party dataの拡充とCookieを使わない広告配信(Contextual Targetingとかね)の経験値を蓄積すること、そして1st party dataを中心に広告のパーソナライズが進むことを考えれば、やはりクリエイティブの経験値が重要であることも疑いありません。結局は今やるべきことはそんなに変わらないのです。

今回の記事のタイトルを「Topics APIの延期」と記述したのも、この「やるべきことは変わらない」ことを意識したからなんですね。「Chromeの3rd party cookie規制延期」という表現ではタイトルとして長すぎた、という編集上の都合ももちろんあるのですが、なによりタイトルで「3rd party cookieが今後も使える」というニュアンスを伝えたくはなかったのです。現実的にはもう3rd party cookieからの卒業を進めないといけないわけですから。

一次情報を見に行く重要性

先日投稿したProgrammatic IOレポートの研修でも話をしたのですが、ネット広告はやはり「アメリカ主導」であることが否定できません。Google ChromeのTopics APIのリリース延期はアメリカのみならず日本においても影響があることは紛れもない事実です。であればこそ、アメリカで起こった事件が日本においてどのような影響があるのかを考えることは、この業界において非常に重要なスキルであることも間違いありません。

Programmatic IOの参加レポートはこちらからご覧ください

実際にGoogleやfacebookの本拠地であるアメリカでどのような会話がなされており、それについてどのように考えられているのかを知っていればこそ、今回のTopics APIの延期についてもある程度予測はできたわけですし、その上で次に自分が(会社が)どうするべきかを考える精度と粒度がまるで変ります。

Netflixが広告配信パートナーとしてMicrosoftを選んだ、というのもかなり弊社としては注目しているニュースですが、これについても実はProgrammatic IOでかなり突っ込んだ議論がなされていたトピックの一つです。こういった市場の変化にいち早くキャッチアップし、対応していくためにも、アメリカのデジタルマーケティングの現状について「一次情報」をしっかりと収集する必要があることをまざまざと見せつけられたように思います。

Programmatic IO 2022 Las Vegasレポート:好評ご提供中です

というわけで上記にもあるProgrammatic IO2022レポートですが、すでに先日実施をさせていただき大変好評でした。手前みそではありますが、弊社の得意分野でもある「アメリカの最新情報を識者から直接収集する」という分野の研修ではありますので、かなりハードルが高い内容ではあるものの、デジタルマーケティングのこれからを考えるための「一次情報」が詰め込まれた90分の研修となっております。

ご興味のある方は以下のフォームよりぜひお問い合わせくださいませ!