自治体ホームページの現状と改善についての考察

市民に伝わるホームページに改善するポイントとは?

日本のほぼすべての地方自治体は「ホームページ」を使って、住民に向けた情報発信に取り組んでいます。弊社は「デジタルマーケティングの駆け込み寺」として様々な代理店さんのデジタルマーケティングを陰ながら支援してきましたが、ここ数年地方自治体さんからの問い合わせもあり「自治体ホームページ」の改善についてもコンサルティングや研修を実施することが多くなりました。

今回はその研修やコンサルティング経験を踏まえて「自治体ホームページ」の現状と課題、そして改善方法について皆さんにお伝えしようと思います。

目次

自治体ホームページの現状

まずは「弊社が見てきた自治体ホームページの現状」についてご紹介しましょう。弊社は今まで、宇都宮市や真岡市様以外でも、北は東北から南は九州まで、様々な自治体様のGoogle Analyticsを見てきました。その中でみてきたおおよその傾向として言えるのが以下の三点です。

  1. 自治体市役所・町役場のホームページはおおよそその住民の1/3程度が毎月閲覧している(地方差がある)
    • 新型コロナウイルスの蔓延期には9割に至ることもあった
  2. 検索からの来訪がほとんど、広報誌のQRコードからの来訪も無視ができないレベルで存在
  3. 職員の人の力量次第でよくみられるページとほぼ見られないページが存在している

まず最初のポイントでもわかる通り、実は市役所や町役場の公式ホームページはかなり頻繁にみられています。これはコロナウイルスもそうですが、社会のデジタル化の進展に伴い、住民の方が何かしら行政サービスを利用するときに、まず最初に見るのが「市役所ホームページ」になっているということが言えるでしょう。もちろんこれは推計値でしかありませんので厳密な人口ではありませんが、それでも以前よりも多くの住民が市役所公式ホームページを閲覧しているのが現状だとみています。

次に「検索からの来訪がほとんど」というところについて。もう少し詳しく解説すると「市役所公式ホームページのトップページ」からの来訪は思ったほど多くないのです。もちろんトップページから入ってくる人が一番多いことは事実です。しかしながらそれぞれの個別ページ、例えば住民票の取得であったり税の納付期限についてなどの一つ一つのページに検索エンジンから直接来訪している総数はトップページをはるかに凌駕します。

そして最後のポイントです。これがおそらくもっとも厄介な問題なのですが、ページを作る職員さん一人一人の能力や意識の違いで「見つけやすい」ページと「見つけにくい」ページが混在しているのが現状です。これは「ページを作るスキル」が職員ごとに大きく異なり、市民に対して適切に情報を発信できる部署とそうでない部署がデータで明らかになってしまう、ということにもつながります。

上記の傾向はどんな自治体さんでもだいたい同様の傾向ではあり、そこから研修であったりコンサルティングであったりということを弊社としてはご提供をさせていただいているわけです。

自治体ホームページの課題

以前のBlog「自治体サイトのアクセス解析・最初に抑えたい三つのポイント」でも書きましたが、実は自治体のホームページにおけるアクセス解析はそこまで簡単ではありません。

これは、一般企業のように「問い合わせ」や「販売」という「ゴールが明確なホームページ」であれば「どの来訪経路が問い合わせが多いのか」などから分析して改善することはそんなに難しくないのですが、自治体ホームページはそのほとんどが「ゴール」が設定しずらいため、現状の数値を見ても「どの数字が上がればよいのか」という判断が極めて難しいからなのです。

したがって実際に改善するとなるといわゆるGoogle Analyticsのような「アクセス解析ツール」だけを使った分析ではあまり役に立ちません。Google Search ConsoleやTwitter Analyticsなど、他に使っている情報発信ツール群のデータを集約しながらの分析、つまり「ホームページそのもの」のデータと「ホームページに来訪してきた媒体」のデータの両方を駆使する必要があります。

つまり「自治体ホームページ」の改善は一般の企業の「ホームページ改善」とは異なるアプローチが必要になるのです。そして、残念ながら「自治体ホームページの現状」としては弊社が知る限り、住民に対して情報発信をする中核であるホームページについて、市民の方の活用度合いを数値でモニタリングしながら改善に取り組むことが出来ている自治体は、弊社クライアントでもある栃木県宇都宮市と真岡市以外ではごく少数に限られているのではないかと思います。

自治体ホームページの改善とは?

以上を踏まえて「自治体ホームページの改善」についての考察をしてみましょう。

まず前提として「改善」をする以上は「数値」で確認ができなければなりません。そしてその「数値」は「住民にとっての使いやすさ」を定量的に表したものである必要があります。ただ、ここで自治体ホームページ特有の問題である「アクセス解析ツールだけではよくわからない」問題が発生するわけです。もちろん最終的な数値の確認はGoogle Analyticsのようなアクセス解析ツールが必要ではあるのですが、それだけで「改善」をすることは現実的には不可能だと言ってよいでしょう。

そういった点から、弊社として以下の二つのツールが必須であると考えています。

  1. Google Search Console
  2. Google Analytics(またはそれに準ずるアクセス解析ツール)

自治体公式ホームページにおけるGoogle Search Consoleの活用方法

まず、Google Search Consoleについて説明をしましょう。

冒頭に書いた「自治体ホームページの現状」にもある通り、自治体ホームページへの来訪はそのほとんどが検索エンジンからになります。したがって自治体ホームページが検索エンジンにどのように認識され「検索に表示されたのか」「表示されてどの程度クリックされたのか」がわかることで「市民の情報需要にどれだけ応えられているのか」がまずわかります。

さらに言えば2022年の夏に起こった「自治体偽サイト問題」などを踏まえれば自治体公式ホームページがしっかりと検索に表示されているかを数値として把握しておくことが市民の生命と財産を守ることに直結するともいえるわけなので、やはりGoogle Search Consoleの導入は自治体ホームページ改善を実現する上では必要不可欠であるといえるでしょう。

自治体公式ホームページにおけるGoogle Analyticsの活用方法

次にGoogle Analyticsについて。

Google Search Consoleは市公式ホームページが検索にどれぐらい表示され、そしてどれくらいクリックされたかはわかりますが、当然検索以外ではわかりません。そして市公式ホームページへの来訪後、どういったページを閲覧していたのかも詳細まで確認するにはやはりアクセス解析ツールが必要な領域になります。

これは論より証拠、というわけではありませんが、弊社事例でもある栃木県宇都宮市様の取り組みがわかりやすいかと思います。

宇都宮市トップページ改修

こちらは、市公式ホームページの「トップページ」から「新型コロナウイルス関連情報」への遷移率を上げる取り組みなのですが、その際にトップページが見られた回数を分母に、そこから「コロナウイルス関連情報」のページに移ったクリックの回数を分母にして「遷移率」を計算しています。

このように「改善で狙うべき数値」をしっかり定義することで自治体ホームページの利便性をさらに向上させられる、ということがお分かりいただけるかと。

最終的には職員さんの意識

以上のように「自治体ホームページ」の現状と課題、そして具体的な改善方法を見てきましたが、最終的に自治体のホームページを使いやすくするのは、それぞれの職員さん、一人一人のスキルになります。

冒頭の「自治体ホームページの現状」でも書いた通り、職員さんそれぞれのスキル・リテラシーに大きな差がある現状では、特定の情報が市民に届きづらい、という課題が解決されません。通常自治体のホームページには少なくとも5000ページ、多ければ3万を超える大量のページが存在しており、それらすべてを一人の担当者が改善すること自体無理なのです。そういう意味でCMSの使い方以上に「市民にどのように情報を届けるか」というノウハウを学ぶ職員研修は重要になったと言えるでしょう。

住民の情報需要は新型コロナウイルスを引き金に爆発的に伸びました。同時に社会のデジタル化が進んでいる現代では、自治体のホームページが社会に取り残されてしまうことすら起こっています。

デジタル化が進んだ社会では、様々な情報がリアルタイムに処理され、情報需要者に届けられています。検索エンジンやSNSなどで玉石混交な情報が流通する中で、自治体としての適切な情報発信が届かないことが実際に発生しているわけです。こうなると情報発信が多岐にわたる自治体ホームページの改善について、最後はやはり職員さん一人一人の意識改革が重要になるわけですね。

ぜひ「市役所ホームページ」について住民の方々に情報が届けられるよう、本記事の情報を活用していただければと思う次第です。