「3C分析」で陥りがちな二つの間違い

「3C分析」で陥りがちな二つの間違い

目次

まず改めて「3C分析」とは何かを説明しましょう。そもそも3C分析とは自社の事業に取り組む前に

  1. 顧客(Customer)
  2. 自社(Company)
  3. 競合(Competitor)

の三つの領域において、事実を客観的に拾い上げ、分析をするプロセスのことを指します。弊社の場合3C分析からSWOT分析までが実際に取り組む前の一連のプロセスにはなっているのですが、やはりなにはなくとも「3C分析」がちゃんとできていないと「強み」も「弱み」も「機会」も「脅威」も正確に分析はできないわけで、それだけ「3C」分析はマーケティングに限らず、事業開発においても重要であることは間違いありません。

ただ、実はこの3C分析、書いてしまえば上にあるように単純なものなのですが、実際に取り組もうとすると実はそこまで簡単ではありません。その大きな理由の一つが「思考力」に大きく依存するからです。

今まで様々デジタルマーケティングの取り組みに携わる中で、3C分析におけるいくつかのありがちな失敗のパターンを見てきました。おおよそ3C分析でのありがちな失敗としては

  1. 主観が入り、自分に都合のいい解釈が含まれている
  2. 視野が狭く、顧客・自社・競合について網羅するべき情報が含まれていない

まずおおよそこの二パターンに集約されるかと思います。それぞれ具体的に見てみましょう。

1.主観が入り自分に都合のいい解釈が含まれている

よくある比喩として「コップに半分入った水」の話ですね。「コップに水が半分しかない」とか「コップに水が半分もある」というのはあくまで「主観」です。客観的な事実としては「コップに水が半分入っている」ことなので、それ自体は3Cでは必要ありません。

具体的な例を出してみましょう。とある企業が自社の商品の売り上げについて「5000万円しかない」と考えて3Cに取り組んだとします。「5000万円しかない」という主観はつまり「現状の売上が小さいので大きくしたい」という3C分析担当者の主観、というよりも願望といってもいいでしょう。

ここでこの分析官は5000万円の売上において「小さい」という主観を持っていることで「大きくする」ことを念頭においてほかのデータを見ることになります。すると「市場シェアが50%」だとしてもそれを大きくすることを考えてしまいますし、現状の市場規模自体が縮小しているとしても「市場規模そのものを大きくする」という本人の願望に則った分析になってしまいがちです。ただ、現実的に考えれば市場シェアが50%もあるなかでさらにシェアを大きくすることは困難なことが多いですし、市場規模そのものが縮小しているときに、それを自社の努力だけで大きくすることはある種の夢物語になることがほとんどなわけです。

3C分析はあくまで自社・顧客・競合の三者に対して、客観的な現実から戦略を立てるためのプロセスになります。主観が入り自分に都合のいい解釈が最初から含まれていると「結論ありき」の分析になり、そもそもスタート地点からずれてしまいます。普通に考えて「売上5000万円で縮小市場の中でシェア50%」であれば無理やり売り上げを伸ばそうとするよりは、今のシェアを維持しつつ新しいビジネスを考えたほうが合理的ですからね。

2. 視野が狭く、顧客・自社・競合について網羅するべき情報が含まれていない

次にここです。これは特に競合をどこに定義するか、というところがわかりやすいでしょう。

競合をどこに定義するかは視野の広さに依存します。例えばあなたが某ハンバーガーチェーンで働いているとして、競合はどこになるでしょうか?もちろんハンバーガーチェーンという観点でいえばマクドナルドやモスバーガーが競合として存在することに異論がある人はいないでしょう。ただ、生活者の視点に立った時、ハンバーガーチェーン店を利用するのは必ずしもハンバーガーを食べるときだけではありません。ちょっとカフェラテを飲みたいときに利用をするとしたらスターバックスやタリーズも競合になるでしょうし、家族連れでご飯を食べるとしたらガストやスシローなんかも競合になりえます。

これは自社と直接的に競合する「カテゴリ競合」と、生活者の時間と財布を結果として奪い合う「ベネフィット競合」という考え方につながるわけですが、ここをどれだけ広くみられるかでSWOTにおいて拾える弱みや脅威が大きく変わります。つまり3C分析を実施する際に「局所」に意識を持つことは大事ではあるものの「大局観」を失ってしまうと3C分析としては意味をなさなくなってしまうのです。

上記のように3C分析はその手法そのものはわかりやすいものの、結果として「使える」ものになるためには「徹底的に客観視点」に自分を置くこと、そして「大きな視野で全体を把握」することが重要です。そしてその二つの視点が欠けてしまうと実は致命的な現象が起こります。ここで「間違った3C分析」による弊害を考えてみましょう。

1. 効果的な広告配信ができない

おそらくこれが最も数値的にわかりやすい結果になると思います。主観が混ざってしまうこと、そして局所的になりすぎることで、広告媒体の選定や広告表現(バナーや動画の内容、キーワードの選定など)でターゲットに対して著しくずれた内容になってしまいます。この結果としてクリック率やコンバージョン率が思うように向上せず、場当たり的な改善施策を繰り返すだけになってしまうわけです。

2. プロモーションする商材の選定がずれる

これは特に主観が混ざってしまうケースで頻繁に起こってしまう現象です。主観が混ざってしまうケースのほとんどは分析担当者の「願望」が無意識的に反映されがちです。つまり「市場が受け入れてくれる」商材ではなく「自分たちが売りたい」ものを商材として選定しまう結果につながります。かつ「自分が言いたいこと」をいうだけのマーケティングコミュニケーションになりがちになるため、やはり広告やウェブサイトなどの数値が低くなることがほとんどになります。

3. 社内・チーム内の足並みがそろわない

最後のポイントは「社内・チーム内の足並みがそろわない」ことです。「主観が混ざり」そして「局所的に見る」視点に立脚した分析は、他者の理解が得られないことだけではなく「理解したと思っていたけどずれている」ことにつながります。特に後者の「理解したと思っていたけどずれている」ことは、社内・チーム内の誰かにお願いした業務のアウトプットが意図したものとはずれていることを引き起こすため、社内の人員的・時間的リソースの過剰な消費を引き起こします。

このように、3C分析は「正しくやれば」戦略立案上で非常に重要であると同時に「間違ってしまう」とかなり致命的な影響を残してしまうものであることがお分かりいただけたかと思います。

実際弊社がデジタルマーケティングの支援を実施する際にも、3C分析は非常に重要視していますし、何度も何度も練り直しをする部分ではあります。実際に弊社事例でも出している真岡市様のマーケティング戦略立案では、非常に長い時間をこの3C分析にかけています。

3C分析の「正しい」やり方をぜひ身に着けて、マーケティング戦略の立案に生かしてください!